【Legend】 ゲーリー・グッドリッジ 「I’m not イタイ、アタマ!! サップから支援金はない」
【写真】1966年1月生まれのゲーリー・グッドリッジ。健在振りを日本のファンに伝えてくれと連絡をくれた。写真は12歳と14歳の娘さんと(C)Gary Goodridge
11月某日、とある格闘技関係者よりMMA Planetに一通のメールが届いた。何でもゲーリー・グッドリッジが日本の格闘技マスコミと連絡を取りたがっているという。体重無差別時代のUFCからPRIDE、そしてK-1で活躍したビッグダディことグッドリッジは、その歴戦で負った傷が原因でボクシング認知症/慢性外傷性脳症の初期状態という情報が北米のメディアから発信されたことがあった。
そして、ボブ・サップが自著で『ゲーリー・グッドリッジ等、引退後もダメージで苦しんでいるMMA選手たちを支援するための基金を作り、彼らに支援金を送る』と記したことで、ファンの間でも症状が心配されていた。
グッドリッジに連絡を取ると、『日本のファンは現在の自分の状況について間違った認識をしているらしいから、ぜひ誤解を解くためのインタビューをしてほしい』という返信があった。早速、グッドリッジに国際電話インタビューを試みた。
──ハロー。
「(日本語で)ハイ、モシモシ、ゲンキデスカ。ゲーリー・グッドリッジ・デスー」
──来日が途絶えても、それだけ日本語を覚えていらっしゃるんですね!!
「オフコース。ドウゾ、ヨロシク・オネガイシマス!」
──こちらこそ。今回のインタビューは、日本のファンに是非伝えたいことがあるというグッドリッジ選手の方から、コンタクトいただいて実現しました。
「そうなんだ。僕は日本からの情報ですごく残念に思っていることがあるんだ。僕は日本が大好きだ。14年間も日本で戦ってきて、自分のベストを捧げて来た国なんだ。故郷だと思っている。でも日本の人々は今、僕が……イタイ、アタマだと思っているんだろ? ワカッタ?」
──はい。長年の戦いのダメージで、グッドリッジ選手は脳に障害が残って苦しんでいると考えられている、ということですね。
「ああ。I’m not イタイ、アタマ! I’m ダイジョーブ! オフコース、チョットproblem…でもモンダイナイ!! OK!? 」
──頭脳が明晰なのは、これだけ日本語を使って下さっていることからもよく分かります。声もお元気そうです。今もカナダに住んでいらっしゃるのですか。
「ああ、前と同じ場所にいるよ。トロント北部にね」
──毎日どのように過ごされているのでしょうか。
「格闘技も教えているし、各地でセミナーをすることもある。家では掃除や洗濯もやっているよ。家族で楽しくやっているよ。だから、I’m not イタイ、アタマ!」
──ただ、実際にグートリッジ選手がボクシング認知症/慢性外傷性脳症の初期状態にあると診断されたというニュースは英語でも報道されています。記憶障害や鬱の症状もあり、いろいろな薬を処方されているとのことでした。
「分かるよ。でもそういうのを全部信じちゃいけないよ。記者の中には、僕の話を少し聞いただけで、勝手に話を大きくして報道してしまう連中もいるんだから。今君が聞いているものこそ、僕自身の言葉なんだよ。ワカッタ!?」
──はい。日本においてあなたが苦しんでいると思われているもう一つの理由は、ボブ・サップが日本で出版した自伝において『私はゲーリー・グッドリッジ等、引退後もダメージで苦しんでいるMMA選手たちを支援するための基金を作り、彼らに支援金を送るのだ』等と書いたことにあると思います。
「ノー。僕の知る限り、僕と同時代に日本で試合をしたファイターのなかで、MMAの試合のせいで今も深刻なダメージに苦しんでいる選手などいないよ。当時の僕らは、勝とうが負けようがただグッド・タイムを過ごしていたんだよ。やってきたことに後悔もない。ワカッタ!?」
──ではサップから支援金を受け取ったことなどもないのですか。
「まったくないよ。ボブは僕に一度だけ電話をかけてきたんだ。そういうことをやるつもりだってね。だから僕も『それはいいね』みたいなことを言った。で、それっきりだよ」
──なるほど。ということは、サップも別にウソを言うつもりだっただけではなく、本当に基金を設立しようと動いてはいたということですね。結局今のところはまだ実現していないというだけで。
「ああ、たぶんやろうとしてはいたんだと思うよ。でもとにかく僕はモンダイナイ! ダイジョーブ!!」