【THAI FIGHT】タイファイトで首相撲&ヒジ打ち初体験──中島弘貴 「なかなか踏み込むことが……」
【写真】一時期、CAVEでMMAの練習もしていたという中島。タイファイトでムエタイを初体験した(C)TAKUMI NAKAMURA
10月25日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるザ・モール・バンカピ特設会場にて「THAI FIGHT KING OF MUAY THAI 2014」が開催され、全8選手による72.5キロトーナメントに日本の中島弘貴が出場した。
このトーナメントはタイファイトで行われている賞金トーナメント(優勝賞金は120万バーツ)で、3分3Rのムエタイルールのもと、世界8カ国から8選手が参加し、準々決勝~決勝を3大会に分けて行うというもの。今年の72.5キロ・トーナメントにはK-1ルール(ヒジ・首相撲なし)を中心に戦い、Krushを主戦場にしている中島弘貴が参戦、キャリア初となるヒジ・首相撲ありのムエタイルールに挑んだ。
出場メンバーはプロムエタイ、WMC、ラジャダムナンスタジアムのベルトを巻き、海外での試合経験も豊富なサイヨーク・プームパンムワンをはじめ、在タイのフランス人ムエタイファイターのアントワン・ピント、アルカ・マテワ、ベン・ホッジ、セン・ブンセン、マイケル・コーレイ、ミラド・ファーザッド、そして中島の8人。
トーナメントの組み合わせは計量後に発表され、中島はカンボジアのブンセンと対戦した。18勝(13KO)と高いKO率を誇る中島だったが、ヒジと首相撲を駆使するブンセンのムエタイならではの試合運びに苦戦を強いられた。1R、パンチにヒジを合わされ、ロー主体の戦い方に切り換えた中島。しかし2Rに入るとブンセンが前蹴りとミドルで距離を取り、中島が前に出てくると首相撲という戦い方を徹底し、中島はこれを崩すことが出来ない。
そのまま判定負けでトーナメント初戦敗退に終わった。(またグローブなしで行うカッチューアルールの70キロ・トーナメントに出場した清水武も判定負けしている)
トーナメントから約2週間後、中島にムエタイルールに挑んだ理由、初のムエタイルールで感じたこと、そしてこれからのキックボクサーとしての展望を訊いた。
――これまでK-1ルールをメインに戦い、最近ではKrushを主戦場にしていた中島選手がタイファイトでムエタイルールに挑戦しようと思った理由を聞かせてもらえますか。
「4月にKrushのタイトルマッチで城戸(康裕)選手に負けてから、3カ月くらい練習してなかったんです。いつもは勝っても負けても3日休んだら練習には復帰するのですが、あの時はそういう気持ちになれなくて。それでこれからどうしようと悩んでいた時、9月頃にタイファイトの話をもらって。自分は海外遠征も未経験で、ヒジ・首相撲ありのムエタイルールをやったことがない。だったら一度、チャレンジしてみようと思い、タイファイト参戦を決めました」
――それだけ4月の城戸戦にかけるものが大きかったということですか。
「あの時はかなり集中して練習が出来て、むちゃくちゃ調子も良かったんです。でもいざ試合になったら、練習でやってきたことが全く出せませんでした。試合後はずっと目標にしていたKrushのベルトが獲れなかったことはもちろん『今まで練習してきたのは何だったんだ?』『あんなに頑張って練習しても試合で出ないならやっている意味ないんじゃないか?』と思っちゃって…ぶっちゃけ格闘技から気持ちがフェードアウトしかけていました」
――周りの人たちからは心配されなかったですか。
「かなり心配されました(苦笑)。ジムにも行かずに、毎日ダラダラ過ごしていたので」
――練習…ではなくても、身体を動かすことは?
「はい。実はちょっと総合の練習をやっていたんですよ」
──!!
「もともと総合が好きだったし、気分転換ではないですけど、CAVEに行かせてもらって、週3日くらい総合の練習をやっていました。いきなりプロ練習に参加しても、僕では相手にならないので、まずは一般のクラスに参加して、しばらくしてから林(太陽)選手やデビューしてすぐの選手のたちの練習に混ぜてもらっていました」
――少し話は脱線しますが、総合の練習をやってみていかがでしたか。
「むっちゃ楽しかったですね。ほとんど打撃の練習はやらずにレスリングと寝技中心で、ケージを使って倒されないとかケージを使って立ち上がるとか…そういう練習ばかりやっていました(笑)」
――まさか中島選手がケージレスリングを練習していたとは(笑)。ちなみに中島選手はヴァンダレイ・シウバのファンだと公言していますが、UFCを見ることもあるのですか。
「見ます、見ます。僕、今はアンソニー・ペティスのファンなんで。一度、CAVEでペティスがベンソン・ヘンダーソンにやった三角蹴りをやろうとしたら『練習ではやらないでください』と怒られました(笑)」
――さすがにそれは怒られますね(笑)。話を戻すと城戸戦が終わって、何か今までとは違うことにチャレンジしたいという気持ちになった。そこでタイファイトのオファーがあったんですね。
「そうですね。試合が決まったのが1カ月ちょっと前で、ムエタイ用にヒジと首相撲の練習をやったんですけど、さすがに1カ月では対応できなかったです(苦笑)。最初から首相撲では勝負せずにパンチで倒すつもりだったのですが、いざ試合になったら予想以上に首相撲に苦戦しました」
――ちょうど首相撲の話になったので、試合のことも聞かせてください。1回戦はカンボジアのムエタイファイター=ブンセンとの対戦でした。1R序盤は得意のパンチで試合を組み立てようとしたものの、そこをブンセンにヒジで狙われました。
「実際にもらったのは一発くらいなんですけど、ずっとブンセンが右ヒジを狙っているのが分かって、なかなか踏み込むことが出来ませんでした」
――ロー主体に切り換えたのはヒジを警戒したからですか。
「そうですね。それでローも結構効いてきたなと思ったら、今度は首相撲に捕まっちゃって。自分のやりたい試合が全然できなかったです」
――2Rに入るとブンセンが前蹴りとミドルで距離を取り、中島選手が前に出てくるところを首相撲という展開になり、中島選手が攻撃らしい攻撃を出来ないまま、試合終了のゴングを聞きました。
「あれだけ組まれるんだったら、もっと総合の練習をやっておけばよかったかな(苦笑)。ただ実際に試合で首相撲をやってみて、首相撲は首相撲で別物だと思いました。組んだ時に力やパワーは感じないのに、タイミングよく自分の重心を崩されましたからね。試合をしながら『これが首相撲か…』と思いました」