【VTJ 6th】3年5ヶ月振りの勝利、マモル 「自分の居場所はまだここにあると思ってやってきた」
【写真】勝利が決定した直後、マモルはこのような表情を浮かべた(C)MMAPLANET
4日(土)東京都大田区の大田区総合体育館で開催されたVTJ6th。元プロ修斗フェザー&バンタム級王者マモルが、飛猿☆N0.2を破り、実に2011年5月以来3年5ヶ月振りの勝利を挙げた。試合後に感極まった表情を浮かべた彼に、白星をもたらしたのは信じ続けたムエタイのテクニック、ヒジ打ちだった。
<フライ級/5分3R>
マモル(日本)
Def.2R0分25秒by TKO
飛猿☆N0.2(日本)
かつて漆谷康宏、BJとともに日本のフライ級3強と言われ続けていたマモルだが、UFCが本格的にフライ級を開設する段階になり、TPFでジョズエー・フォルミガに敗北。その後、ケージ&ユニファイドルールで行われるようになったVTJではダレル・モンタギュー、山上幹臣に連敗を喫し厳しい時が続いた。
TRIBE Tokyo Fightで前田吉朗とドローの熱闘を演じ、首の皮一枚がつながった状態、生き長らえたマモルだったが、VTJ4thから始まったフライ級トーナメントに挑むも、シーザー・スクラヴォスに僅か98秒で一本負け。試合後には身の振る方を口にするようになっていた。そんなマモルに対して、飛猿は現在の修斗バンタム級(※56キロ)トップコンテンダーで、7月にはGrandslamで元UFCファイターの清水俊一を破り、勢いづいている。
試合はその飛猿の勢いそのまま、序盤からマモルに襲い掛かった。1R、打撃の応酬のあと飛猿はシングルレッグでテイクダウンを狙うや、スクランブルの攻防のなかでギロチンにマモルを捉える。かなりタイトに見えたギロチンから逃れたマモルだったが、今度はダブルレッグで倒されかかり、ここで背中を預けて立ち上がろうとする。飛猿はバックコントロールにいかず、後方からハイキックを放っていき、マモルは負けパターンから逃れることができたものの、続く局面でもダブルレッグでテイクダウンを許し、厳しい初回となった。
テイクダウンへの処理に課題が残ったまま、弱点を曝け出したように見えたベテランは、2Rに入ると左ミドルで圧を掛けると、飛猿の右フックに右ヒジ一閃。この一撃で左目尻をカットした飛猿にドクターストップという断が下り、TKO勝ち。10歳年下の飛猿の猛攻に試合のイニシアチブを握られながら、ついに長すぎるトンネルを抜けた37歳のマモルの話を大会終了後に訊いた。
──試合後、感極まる場面が見られました。
「ちょっと……キャラじゃなかったですね(苦笑)。ホッとしました。勝てないと迷ってしまって、どう自信を持てば良いのか分からなくなってしまうので。でも、自分がやってきたことしかできないし。そうやって前に進むしかないけど、それが正解かどうか自問自答しながら、ここ3年間やってきたので。もちろん、足りないところもたくさんあるのですが、やっぱり間違っていなかったと──一つ憑き物が落ちた気がしています」
──マモル選手のバックを許して負けるという、おかしな言い方ですが負け方も定着していました。
「今日も1回ありましたけど、ちょっと開き直っている部分も1Rはありました。周囲からもバックを取られた時の対応とか、色々とアドバイスはもらってはいたんですけどね……。バックに回られるぐらいなら、背中をつけても良いかという意識も持つようにしました。これまでは余りにもガードを取ることを嫌いすぎていたので。初回は背中をつけても、2Rと3Rで挽回できれば勝てますし。結果オーライですけどね」
──そうすると、飛猿選手のギロチンが序盤に入りました。
「注意していたんですけど、あの展開で仕掛けてくるとは思いませんでした。ただ、上手くずれて向こうも途中から力を緩めたので、そこまで危なくはなかったです。立ち上がりはパンチで前に出ようと思っていたのに、上手く合わなくて。2R目はセコンドの土屋(大喜)から『スイッチのフェイントをかけて、右回りから左ミドル』って指示があり、まずはそこからだと。それがあったから、相手が早く前に出てきてくれて、ヒジが流で当たりましたね。その前のプロセスも覚えていないです。蹴って、交錯した感じで、自分のなかで『ここだっ』って思ったんでしょうね。体に染みついていたモノが出た感じです。今日はムエタイ・テクニックがはまって勝てました」
──世界のトップを目指し、長年が戦ってきたマモル選手ですが、今回の勝利の意味は? 厳しい言い方ですが、飛猿選手はマモル選手がかつて三強と呼ばれ、長期間トップに君臨した国内トップレベルの相手で、初回にはピンチもありました。
「その通りだと思います。でも、彼は強い選手です。極めもありますし、勝てていない僕からして飛猿選手が格下なんて気持ちは全くなかったです。今の修斗世界王者の神酒(龍一)君と最初は減点絡みのドローだったわけだし。逆に『マモルぐらい』って気持ちで向こうはいるだろうなって、自分では思っていました。もう、かつて三強と呼ばれた我々の世代が飛躍的に強くなることは、もう望めない。それでも自分のできることを模索しながら、気持ちがあるうちは戦い続けたいと思っているはずなんです」
──くしくも今夜の大会は、そのような状況にある35歳以上の選手が意地を見せてくれました。
「ほんと、宇野さん、高谷君、弘中選手、まだまだ我々世代、宇野さんなんて2歳上でも頑張っている。だから僕もまだまだやりたいと思っています。ただ、この一つの勝ちで大きなことは言えないです。まず、一回勝ちたいと思ってきただけなので。引退するにしても、このままじゃ辞めたくないって。まぁ辞める気はそんなになかったですけどね。
自分の居場所はまだここにある……、ここにいたい。作っていきたいと思ってやってきました。この勝利で今後、どこを目指すのか。世界のトップにいきなり行きたいって言ってもしょうがないですしね。前回は負けて色々考えましたが、今回は勝ったことで、もっとしっかりと考えないといけないと思っています」