【Special】キックボクシング・ルネッサンス Glory vs K-1対談(02)
MMAPLANETがお送りするGlory World Series 2012 & K-1RISING 2012、両70キロトーナメント展望対談。26日(土・現地時間)と27日(日・同)に開かれる両大会では、16人のトーナメントの1回戦が行われる。
Gloryにはジョルジオ・ペトロシアンやファビオ・ピンカという、首相撲を許したルールに則したファイターが出場、一方のK-1 WORLD MAXでは中村拓己氏より、気になる選手としてハルート・グリゴリアンの名前が上がった。キックボクシング・ルネッサンス対談、第2弾をお届けします。
高島 ハルート・グリゴリアンのどこが、中村さんは気になるのでしょうか。
中村 打ち合うんだけど、本当に無駄打ちをしないスマートなボクシングスタイルで、現イッツショータイム世界70キロ級王者クリス・ンギンビを圧倒して勝った。彼がこのトーナメントのなかに入って、どれぐらいまでいくのか。初戦の相手マルセル・グローエンハートは一発のインパクトがある感じですよね。
高島 グローエンハートは、イッツショータイムの77キロ級世界王座に挑戦したことがありますし、85キロの世界王座に挑戦するという話もあるファイター、大きいですね。
中村 マイクス・ジム所属ですが、体重落ちるんですかね? 一発で試合を決めるグローエンハートと、ボクシングスタイルのテクニシャンのハルート、後者の方が興味深いです。
高島 アンディ・サワーが去年9月のイッツショータイム70キロトーナメントの準決勝でアルトゥール・キシェンコに敗れたのは、1回戦でハルートに手こずったからだと思うんです。延長でサワーに軍配が上がったのですが、本戦でハルート勝利でもおかしくない試合でした。
ところでK-1MAXでは、かなり日本にも馴染みのあるファイターが多いですが、そのなかで気になる選手はいますか?
中村 K-1以降の選手ですが、1月に日菜太選手を1分58秒で下したアンディ・リスティですね。黒人系で手が長い、スイッチができてステップが踏める……、魔裟斗選手が活躍していた時代にはいなかったタイプのファイターです。
【写真】1月28日、日菜太を相手に2分を切る試合タイムで、3度のダウンを奪ったアンディ・リスティ。キックボクシング界のニューウェイブがK-1 MAXに登場する(C)BEN PONTIER/EFN
そういう選手がMAXに出る――MMAに例えるとジョン・ジョーンズだとか、アンデウソン・シウバのような体形がファイトに適している選手で、こういうキックボクサーと日本人が戦うと、どうすれば勝てるんだろうという気にがします。それぐらいの運動能力があって、テクニックもある選手が、ポンっとトーナメントで出てきた。
初戦の相手はドラゴで、全盛期の勢いはないですし、リスティ有利な一番になると思います。キックボクシングにも新世代に当たるリスティが、サワーやキシェンコという従来のトップ選手とぶつかるとどうなるのか。そこも見所です。
高島 アブラハム・ロクエニって、どう思いますか?
中村 正直なところ、微妙なファイターじゃないでしょうか。僕はあまり強くないと思います。一応はクラウス、サワー、そしてドラゴに勝っているのですが、クラウスにはヒザでダウンを喫しているのに完全に地元判定で勝っていますし。
高島 スペインのキックボクシング界って、ムエタイに関係がないヒザや首相撲がなかったかつてのWKAキックボクシング・ルールや、ローでさえ禁止されているフルコンタクト・キックが盛んに行われてきた歴史があります。そういう背景もあり、ロクエニもそうですが、イッツショータイムでムエタイ・スタイルでは絶対に上回るはずのカリーム・ベノイに勝って61キロ級のチャンピオンになったハビエル・エルナンデスなど、磨けばK-1ルールで手強くなるような選手たちが、埋もれているのではないかという気がしているんです。やたらとフィジカルは強いですし。
【写真】スペインを代表するキックボクサーのアブラハム・ロクエニ。競合相手に結果は残しているが、内容は及第点という微妙な部分もある。ボクシングと蹴り主体、地元で開催が味方となるか(C) BEN PONTIER/EFN
中村 そういう見方もできるかもしれないですね。今大会に限っていうと、地元で戦う地の利もあります。
高島 と同時に、サワーは試合数が多すぎるのではないかと。6月30日にもクリス・ンギンビのイッツショータイム世界70キロ王座に挑戦します。まぁ、Gloryに出るロビン・ファン・ロスマーレンとK-1MAXに出場する中村さんおススメのハルート・グリゴリアンが、その大会で対戦するなど、なんだかイッツショータイムが上手いことやっている感はありますが……。いずれにせよ、サワー×ロクエニでは波乱が起こる可能性が残っているのではないかと。
中村 前の試合では左ミドルに右ストレートがパカーンと入ってダウンを奪ったのですが、その後の展開はサワーがボコっている。ちょっと、意見の分かれるファイターではあると思います。だからこそ、スペインで大会が開かれるのはロクエニとってはプラスに働きますよね。
サワーが負ける試合は、ローとかミドルにパンチを合わされてダウンを喫するというパターン。ダメージはそれほどないダウンでポイントを取られる展開が多いので。
【写真】試合巧者、一発の強さも持つアンディ・サワー、実力&実績で優勝候補筆頭に挙げられる(C)BEN PONTIER/EFN
高島 最近のサワーは、良いのを一発もらうと動きが止ってしまうという印象があります。
中村 そうですね。ロープに詰めた時など凄く強い反面、相手の攻撃を受けているときには課題がありますね。
高島 オランダのキックは、攻防一体ではなく、打ち合いか、攻防を繰り返す展開がかなり多くなっていると思います。その攻守の入れ替わりを崩すことができるファイターに、サワーは脆さでることがあるような……。
中村 だからハルートのような選手と戦う場合はやって、やり返してという攻防のなかでは、まだ戦いやすいのでしょうが、ンギンビのような一発の飛びヒザを放ってくるような相手は戦い辛いかもしれないです。
そういう部分では、Gloryの方では去年のイッツショータイム70キロ・トーナメントで優勝しているロビン・ファン・ロスマーレンやジャバル・アスケロフが、どのように戦うのも興味深いです。ロスマーレンって、ザッツ・K-1っていうスタイルのキックボクサーじゃないですか? ムエタイ・スタイルではなくフック系とローのファイターで。
高島 ダッチムエタイとはまた一味違う、K-1ルールが確立してから育ったキックボクサーですよね。ロスマーレンは、若いだけあって、体が疲弊していない部分はアドバンテージになるのではないでしょうか。K-1 WORLD MAXにトップで活躍していた選手は、ある程度ダメージが蓄積している人が多いけど、彼は打たれ弱くもなっていないでしょうし。
まぁ、アスケロフとの戦いは、倒すか、倒されるかという試合になるとは思いますが……。
【写真】昨年9月のIt’s Showtime70キロトーナメントを制したロビン・ファン・ロスマーレンはGolden Glory所属だけに、出場先はGloryとなるが、完全にK-1向きなファイター。ジャバル・アスケロフとは、乱打戦となるのか。それとも新しい一面を見せるのか(C)BEN PONTIER/EFN
中村 アスケロフは09年に日菜太選手に勝っている試合の印象が、日本のファンには強く残っているかもしれないですが、その後もしっかりと勝利を重ねています。ロスマーレンとアスケロフとの試合は、間違いなく盛り上がると思います。こういう手合いの選手は、テクニカルなキックボクサーが多いGloryでは、しっかりとKO勝ちをして波に乗ることが大切になってくるでしょうね。
高島 Glory側ではビッグネームでも、アルバート・クラウスは厳しいかなというのが、自分の印象です。
中村 MAXの初代王者で、ずっと戦い続けているから、高島さんのいうところのダメージを蓄積している選手であることは間違いないです。ただ、世界のトップになれるかどうかということではなく、自分の持ち味を生かして戦うことはできると思います。
体も大きくなって、フィジカル的にも強化されていますし、以前のようなパンチのキレよりも、圧力で距離を詰めて打ち勝つ。そうやって、自分で考えてスタイルを変えてきた。頭を切り替えてきたと思います。それでも、このメンバーのなかで戦うと、ペトロシアンやケム、それにピンカを相手にして、どのように戦えるのか……。厳しいでしょうね。
高島 個人的にGloryのなかでは、米国人対決で登場するキー・ホーレンバックが気になる存在です。MMAで5勝1敗、しかもサブミッションで勝っているファイターですが、キックでもWBCムエタイ暫定世界ミドル級者であり、WCK世界75キロ級世界も獲得するなど、エルボー有りで結果を残しているんですよね。
首相撲の解釈の仕方で、上位進出もあるかもしれない。日本では既に何度が見られていますが、MMAファイターはフィジカル、コンディショニングで純粋立ち技ファイターを上回っていて、相手の土俵で勝つことができるぐらい打撃も進歩した。キックが本職とはいえ、MMAを経験しているホーレンバックも何気に面白いファイターだと思います。
<この項続く>
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■Glory World Series主な対戦カード
<ヘビー級/3分3R>
セーム・シュルト(オランダ)
エロール・ジマーマン(オランダ)
<ヘビー級/3分3R>
グーカン・サキ(オランダ)
カーター・ウィリアムス(米国)
<75キロ/3分3R>
ニキー・ホルツケン(オランダ)
アレックス・ハリス(スウェーデン)
<GWS70キロトーナメント 1回戦/3分3R>
ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)
ファビオ・ピンカ(フランス)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
アルバート・クラウス(オランダ)
モハメド・エルミール(デンマーク)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
マックス・ヴォロフスキー(エストニア)
サニー・ダルベック(スェーデン)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
キー・ホーレンバック(米国)
マイケル・コーリー(米国)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
ケム・シッソーピノーン(タイ)
ダビッド・キリア(グルジア)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
ロビン・ファン・ロスマーレン(オランダ)
ジャバル・アスケロフ(ロシア)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
デニス・シュナイドミラー(ドイツ)
ティム・トーマス(英国)
<GWS70キロトーナメント1回戦/3分3R>
佐藤嘉洋(日本)
シェムシ・ベキリ(スイス)
<MMAライトヘビー級/5分3R>
イリル・ラティフィ(スウェーデン)
トニー・ロペス(メキシコ)
<MMAライトヘビー級/3分3R>
ジェイソン・ジョーンズ(オランダ)
ドリタン・バルヤマイ(オースト
■K-1 Rising 2012主な対戦カード
<ヘビー級/3分3R>
バダ・ハリ(オランダ)
アンデーソン・シウバ(ブラジル)
<ヘビー級/3分3R>
ミルコ・クロコップ(クロアチア)
ローレン・ハビエル・ホルヘ(スペイン)
<ヘビー級/3分3R>
ダニエル・ギタ(ルーマニア)
ポール・スロウィンスキー(豪州)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
ロンガーン・スーパープロ・サムイ(タイ)
クリス・ンギンビ(オランダ)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
ハルート・グリゴリアン(ベルギー)
マルセル・グローエンハート(オランダ)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
名城裕司(日本)
リース・マカリスター(英国)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
ガーゴ・ドラゴ(オランダ)
アンディ・リスティ(オランダ)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
シュー・イェン(中国)
城戸康裕(ロシア)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
アルトゥール・キシェンコ(ウクライナ)
イ・スーファン(韓国)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
アンディ・サワー(オランダ)
アブラハム・ロクエニ(スペイン)
<K-1 World Max 1回戦/3分3R>
マイク・ザンビディス(ギリシャ)
シャヒッド・エルハジ(オランダ)
<63キロ/3分3R>
モサブ・アムラーニ(オランダ)
セベン・ディアス(スペイン)
<ヘビー級/3分3R>
リコ・ヴァーホーベン(オランダ)
セルゲイ・レシェンコ(ウクライナ)
見たことない筋トレ・アイテムが続々日本上陸!!