【SUPER RIZIN05】大晦日の試合中止から8カ月――YA-MANと戦う斎藤裕「皆と喜びを分かち合いたい」
【写真】斎藤ほどイベントを俯瞰で見て、ファンのことを考えるファイターも珍しいかもしれない(C)SHOJIRO KAMEIKE
9月10日(木)に大阪市西区の京セラドーム大阪で開催される超RIZIN05で、斎藤裕がYA-MANと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
当初、昨年の大晦日大会で対戦予定だった両者。斎藤にとっては2025年7月の久保優太戦以来の復帰戦となるはずだったが、大会5日前にYA-MANの負傷により試合中止が発表された。
大晦日前のインタビューでは、1年5カ月振りの試合に向けて、斎藤は熱い気持ちを語ってくれた。それだけに――というべきか記者会見で「今でも何が正しいのか、どうしたらいいのかをずっと考えていて、自分の中ですごく重いものを抱えてやっていってはいたので、ちょっと上手く言葉にできないんですけども……」と心情を口にしている。もちろん、何が正解だったのかは誰にも分かるはずがない。ファイターは、その答えを探してリングに上がる。自分が出した答えを正解へと導くには、戦うしかない。
試合中止決定から8カ月――改めてYA-MANと相対する斎藤が、「これまでの日々」と「これからの未来」について語ってくれた。
大晦日は代わりの選手と戦ったとして、自分の納得できる試合ができたのかどうか
――昨年大晦日の前に、復帰戦でYA-MAN選手と戦うことに対する想いを語っていただきました。その後、大会直前に試合がなくなることを聞いた時の、率直な気持ちを教えてください。
「……あの段階で試合がなくなることはないだろうと思っていたので、疑うことなく大晦日に戦うつもりでした。それで試合が中止になると聞いた時は、目の前が揺れましたね」
――負傷があり試合が中止になってしまうことは致し方ない。特にYA-MAN選手の状況を目の当たりにした時は、「しょうがない」という気持ちも大きくなるでしょう。しかし「しょうがない」からこそ、やるせない気持ちにもなるかと思います。
「まぁ『試合の3週間前に中止になっていたら、どうだったんだろう?』とは考えますよね。
中止と聞いた時、いろいろな選択肢が頭をよぎりました。でもあの状況で――今考えても、何が正しかったのか分からないですけど。相手あっての格闘技で、最後の最後で噛み合わなかった。難しいです」
――「いろんな選択肢」という部分でいえば、会見では榊原信行CEOから「別の相手と戦ってもらうことも考えたが……」という発言がありました。
「う~ん……、……中止が決まった時期が時期だけに、『YA-MAN戦が中止と聞いた当日に代わりの対戦相手が決まらないと大晦日に試合はできない』という気持ちはありました。でもそのためには主催者側も、いろんな手順を踏まなければいけないことも分かります。今思うと、僕も代わりの選手と戦ったほうがよかったのか……。ただ代わりの選手と戦ったとして、自分の納得できる試合ができたのかどうか。僕も今まで『そういう試合』は散々やってきたので、今回は我儘を言わせてもらおうと思いましたね」
――大晦日に予定されていたYA-MAN戦のテーマは、まさに「久々の試合で、どれだけ納得できる試合を見せられるか」と仰っていました。あくまで「たられば」でしかありませんが、これがハイペースで試合をしている時期なら、また考えも違っていたはずです。
「はい、自分も20代の頃であれば代わりの選手と試合していたでしょうね。過去にもいろんな経験をしてきていますし、少し良い条件になるなら戦うとか交渉もあったかもしれません。でも今回はそうじゃないよな、と冷静に考えた面もあって」
――試合中止を聞いた時に目の前は揺れた、とのことでしたが、その時点で気持ちは一度切れましたか。
「その時は……、そうですね。次というか先は見えなかったです。2026年はどうするか、というところもまでは考えていないし。この年齢になると――今はお店(ラーメン店)もやっていて、来年はお店の1周年も控えています。だから選手としての活動だけにフォーカスして動けるような状況ではなくなってきていて。いろんな物事を順番に解決していくなかで、2026年はいつ試合をするかという話をしなければいけない」
――「大晦日の試合がなくなった。じゃあ3月か4月に他の誰かとの試合を」と、すぐに考えられる状況ではないわけですね。
「はい、そうはいかないです」
――その状態で気持ち良く年を越すことはできましたか。
「まぁ、ここまでいろいろ経験してきていますから。コロナ禍で2日前に試合がなくなった時もありましたし、考えても仕方ないことはもう仕方ない。だからこの経験もプラスにしていけるように2026年を生きていきたいという気持ちになっていました」
――2026年に入り、次の試合について考えられるようになったのは?
「1月23日から10日間、お店の1周年イベントがあって。それが終わってからすぐ練習に戻りました」
――2月ごろから練習を再開したということは、もっと早い段階でYA-MAN選手ではなく別の相手と復帰戦を行うことも考えてはいなかったのですか。
「それは考えていました。2月中だったと思いますけど、RIZINの事務所で榊原さんと話をする機会があって。その時に『今年いつ頃に試合をするか』という話をしました。方向性が決まらないまま時間が経過していくのはどうか、という榊原さんの配慮もあったと思います。その時点では6月か7月か――自分も6月か7月だったら調整できるかな、という状態で。ただ、以降も何度か話をしていくうちに『9月に大阪ドームを押さえた。復活というテーマで、いろんな選手を集めたい』という話になっていきました」
平良選手のタイトルマッチを観に現地へ行っていました。RIZINの盛り上がりも負けていない
――結果、大晦日に行うはずだった復帰戦が今年の9月まで延びた。斎藤選手にとっては、それがメリットになるのか。あるいはデメリットになってしまうのか。
「両方ですね。プラスに考えれば、練習できる期間は増える。僕も駆け出しの選手ではないので、練習のやり方は何周もまわってきて、何通りもありますから。半年あるなら、どうやって過ごせばいいのかは頭には浮かびます。ただ試合間隔が空けば空くほど、実戦の感覚は失われていく面はありますよね」
――ファイターにとって実戦感覚が失われていくことは最も厳しいものであると言えます。この期間に、どのようにして実戦感覚を補ってきたのでしょうか。
「もともと大晦日に向けて練習していた時に、僕なりに感じていたことがありました。年齢のこともそうですし、試合間隔が空いてしまったことで、いきなり試合に向けた練習を始めるのもしんどい部分がある。そんななかで自分に足りない部分を埋めたり、試合に向けた練習を始めてからも『まだまだ自分は伸びる』と感じる時もあったんです。だから伸ばすところは伸ばしていって、落ちているところや『こうしたほうが良い』と思う部分を修正したり。その点では、復帰戦の時期が延びたことについてはプラスに働いたと考えています」
――今回、期間が空いている時に沖縄では練習していたのですか。
「いえ、沖縄には行っていないです。全く行っていないわけではないですけど、短期合宿のようなものはやっていません。ただ、平良(達郎)選手のタイトルマッチを観に現地へ行っていました」
――5月9日、ニュージャージー州ニューアークへ!?
「そうです。やっぱり日本人初のUFC世界チャンピオンを間近で見たいなと思って。僕は昔から平良達郎推しを公言していましたし」
――それはファン目線の割合が高いですね。
「はい(笑)。その時、松根良太さんをはじめチームの皆さんと同じところに泊まっていた時に、いろんな話をさせてもらいました」
――現地の盛り上がりはどうでしたか。
「米国のファンは凄くエキサイティングだな、と思いました。感情が激しいというか。僕はメインイベントまで観ましたけど、チマエフが負けるところを観戦できたのは良い経験です。それと観客席でも掴み合いの喧嘩が発生していて。UFCは国を背負って戦うファイターだけでなく、観客も感情が強くなるという魅力的な舞台だと思います」
――UFC、特に平良達郎選手の世界王座挑戦を観戦し、何か感じたものや得たものはありますか。
「たくさんありますね。演出も含めて、RIZINの盛り上がりも負けていないと思いましたよ。あとRIZINは客層が良いです(笑)」
――アハハハ。
「RIZINには純粋に格闘技が好きな人が来ている、という印象があります。UFCは国×国という面もあるから殺伐としていますよね。賭けもありますし、みんなお酒もガンガン飲んでいて」
自分を向上させていく、足りないものを埋める、長所を伸ばすという点にフォーカスして練習できた
――UFCを観に行くと同時に、米国で練習はしてこなかったのですか。
「していないです。少しニューヨークの街並みを見て帰国しました」
――今は沖縄以外、練習に行くことはないのでしょうか。
「ないですね。お店のことも含めて長期滞在は難しくなりました。お店も2号店を出す話も進んでいて、9月の試合が終わったら2号店の準備が……。自分もあまり自由には動けなくなっています」
――そう聞くと「大晦日出場はないのか!?」と思われてしまいますよ。
「アハハハ!! それは分からないです。スタッフも凄く増えていますし、自分が試合を控えている時はスタッフが踏ん張ってくれているので、ありがたいですね」
――スケジュールについては期待も込めて……。話を戻すと、練習を再開して試合に向けた気持ちが整うまでに時間は掛かりましたか。
「相手が決まればやるだけなので、そこはあまり気にしていないです。割と落ち着いて淡々と――自分を向上させていく、足りないものを埋める、長所を伸ばすという点にフォーカスして練習できたので、それほどストレスはなかったですし。今までやってきたことですから」
――対戦相手が決まれば、というのは4月18日の会見時点でも正式決定はしていなかったのですか。会見ではYA-MAN選手も登壇していましたが、他の選手も含めて「まだ対戦相手は決まっていない」という発表があって。
「こういう選手と対戦したい、と伝えていたぐらいで、あの時は決まっていなかったです」
――見ている側からすると、「それは斎藤×YA-MAN戦だろう」と思って然りだと思います。
「そのあたりは難しくて……。一度試合が流れていて、仕切り直しで対戦するというのもアリです。でも京セラドーム大会は20年に一度の興行で、もしかしたらこの先は開催されないかもしれない。であれば自分としては『もっとインパクトの強い対戦カードもあるのかな』とも考えていました」
――では改めてYA-MAN選手と対戦することが決まった時は?
「やるならやるで、恨みっこなし。じゃあ試合しましょう、という感じでしたね」
――大晦日の試合に向けて練習していた時と、仕切り直して9月の試合に向けて、やるべきことに変化はありましたか。
「変化というか、こういう風に自分を上げていったほうが良いと思う部分はあります。でも選手って1週間やそこらで変わるものではないので、やはり時間を掛けて創り上げていく。大晦日に向けて創り上げていたものを継続していました」
長引けば自然と根性勝負、総力戦になる。でも試合を長引かせるつもりはなく、チャンスが来ればすぐに終わらせる
――継続していたものとは……。
「ボクシングとフィジカルですね。年齢を重ねてきて昔の練習量、1日2回とか3回とか週6でハードなトレーニングをこなしている時期とは違うフェーズに入ってきています。昔できていた動きについて『なぜ当時はこれができたのか』と考えた時、やはりフィジカルが落ちてきていることは感じていました。特にフィジカルは、そうやって意識していないと、どんどん落ちていくもので。練習量が落ちても、それを補えるようなトレーニングができていれば話は別ですけど……プロの選手って技術や戦略はフィジカルという土台ありきのものなので、そこはつくり直さないとダメだなと思っていました。その点は昨年末の段階から継続しています」
――なるほど。ボクシングはどこかジムに通っているのですか。
「協栄ボクシングジムさんで、プロボクサーの皆さんとスパーリングをやらせてもらっています。去年の大晦日のために、ひとつ上のレベルの練習をするべきだと思いました。沖縄に行って松根さんに見てもらうこともそうですし、ボクシングも――もともとボクシングジムは3年ほど通っていましたけど、やはりプロの選手に混ざり、ヘッドギアを着けてスパーをするほどはやり込んでいなくて。協栄さんではプロ練と、1時間ほどのサーキット・フィジカルトレーニングにも参加しているんです。足りないものを埋める、もう1段階上の練習をするためには、若いボクサーたちに混じって、引っ張ってもらうことも重要だと思っていますね」
――若い、とは何歳ぐらいでしょうか。
「20代の選手がほとんどですね。20代前半も多いです。組み技が使えない状態で、専門家の人たちとパンチだけの練習をするというのは、本当に勉強になることが多くて。間違いなく自分のスキルアップになりますね。苦しい時に自分を助けてくれるスキルになる。そのために大切な練習だと毎回感じています」
――つまりキックボクシングがベースのYA-MAN選手と対戦するから、というわけではない。イチMMAファイターとして今後のためにプロボクサーたちと練習している、と。
「そうですね。立ち技の選手との対戦が増えていますから、自分のスキルアップもしていかないといけない、とはずっと考えていました」
――2年2カ月振りの復帰戦、スキルアップした斎藤選手を楽しみにしています。YA-MAN選手の印象については前回のインタビューでお聞きしました。約8カ月の時を経て、今回はどのような試合を見せたいですか。
「お互いに長引けば自然と根性勝負、総力戦になると思います。でも試合を長引かせるつもりはなく、チャンスが来ればすぐに終わらせる。そういう練習もしています」
――当日はシェイドゥラエフ×AJ・マッキーのWタイトル戦をはじめ、好カードが並んでいます。その中でも自身の試合を最も輝かせよう、という意識はあるのでしょうか。
「その気持ちはありますけど、蓋を開けてみないと分からないところもあって。絶対に良い試合になるだろうと思っても噛み合わないこともありますし、空回りするケースも多々見てきました。それでもこの出場メンバーの中ではインパクトのある勝ち方も求められるでしょうね。
自分が持っているもの、やってきたことを出し切れば良い試合になると思っています。MMAPLANETさんの読者は修斗時代から僕の試合を追いかけてくれているでしょうし、そういう人たちは今回の試合を感慨深く見てくれるだろうと思っています。いつも応援ありがとうございます。必ず勝って、皆と喜びを分かち合いたいです。当日はぜひ会場で、会場に来られない方はPPVを購入してご覧ください!」
■視聴方法(予定)
9月10日(木)
午後3時~ ABEMA、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■SUPER RIZIN05対戦カード
<RIZIN&PFLフェザー級選手権試合/5分3R>
[RIZIN王者]ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
AJ・マッキーJr(米国)
<ライト級/5分3R>
朝倉未来(日本)
青木真也(日本)
<ライト級/5分3R>
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
野村駿太(日本)
<フェザー級/5分3R>
カルシャガ・ダウトベック(カザフスタン)
平本蓮(日本)
<フェザー級/5分3R>
斎藤裕(日本)
YA-MAN(日本)
<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
高木凌(日本)
<女子スーパーアトム級/5分3R>
RENA(日本)
ナターシャ・クジュティナ(ロシア)
<キック71キロ契約/3分3R>
ブラックパンサー・ベイノア(米国)
宇佐美秀メイソン(日本)





















