この星の格闘技を追いかける

【Road to UFC S05 SF】決勝進出を賭けてラルシネーゼと対戦、鈴木崇矢「螺旋のように繋がっている」

【写真】幼少期から無意識にやっていたことが繋がっていく。それもMMA(C)SHOJIRO KAMEIKE

28日(金・現地時間)に中華人民共和国は上海の浦東発展銀行上海東方体育中心(プートン・ファジャン・インハン・シャンハイ・ドンファン・タイユィ・ジョンシン)で開催されるRoad to UFC Season05 Semi Finals。そのフライ級T準決勝で鈴木崇矢が豪州のジョセフ・ラルシネーゼと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

前日計量は56.47キロでパス(C)Zuffa/UFC

米国フロリダ州のキルクリフFCに練習拠点を移し、今年1月にはトニオ・フィゲレイドをKOしてフューリーFCフライ級王座を奪取。さらにRTU出場を切符を掴んだ鈴木は、5月のトーナメント一回戦でMGL-1FCフライ級王者オトゴンバートル・ボルドバートルに左ボディを効かせ、カウンターの右フックで倒して準決勝へと進んだ。

オトゴンバートル戦で見せた打撃については「自然に出た空手の動き」だったという鈴木。MMAを戦うことで、無意識にベースである空手と繋がり、進化してきた。勝つために、そしてUFC世界王者となるために。そんな鈴木が、MMAと空手が繋がってきた瞬間と、ラルシネーゼ戦について語る。


自分の型が出来て、血が通い、どんどん形になっていく。その形の中で光っていたのが、空手やバレエだったんです

――今は日本に帰国して、EX FIGHTで練習しているそうですね。

「はい。前回の試合後にキルクリフFCで2カ月間ファイトキャンプをやって、次の大会が上海で開催されるということもあって試合2週間前に帰ってきました。まず日本で時差に慣れさせたあと、上海に向かいます」

――5月にRTU初戦でオトゴンバートルにKO勝ちした直後、米国に帰国したのでしょうか。

「UFCが取ってくれる飛行機のチケットが日本とマカオの往復便だったので、まず日本に着いてから米国に戻りました。もう生活も練習も拠点は米国なので、そちらのほうが『家に帰ってきた』という感じはありますね(笑)」

――RTUの場合も毎試合、米国と日本の往復については自費で……。

「自費です。アハハハ」

――今は円安の影響で、航空便の価格も高くなっているかと思います。その費用を自費で賄ってでも、やはりUFCと契約したいという気持ちが大きいですか。

「正直、その気持ちはないです。というのも僕は、UFCのチャンピオンになるためにMMAをやっているので。UFCと契約したいから米国で練習したり、航空券の費用を――という考え方はしていないですね。言ってしまえば、UFCのチャンピオンになって稼いでいった時のことを考えると、そんな今の出費なんて大したことない。未来の僕がそう言っているので、何も気にしていないです(笑)」

――アハハハ。そんななか既に様々な媒体で語られているとは思いますが、オトゴンバートル戦ではベースである空手の動きが自然に出たということでした。特に至近距離で、あれだけまとめた打撃を出すことができる。それこそがフルコン空手で培ったものなのだろう、と感じます。

「そうですね。フルコン空手だけでなく打撃をやっている方は分かる感覚かもしれないけど、相手を見ていなくても、どこにどんな部位があるか分かるんです。相手との距離って相手との距離ってメチャクチャ近いじゃないですか。それこそチューしちゃうぐらいの距離にいて。その状態では、どこに何があるか見ていられないんですよ。だから相手の位置と自分の拳の感覚で、感覚的に打ち分けています。オトゴンバートル戦のフィニッシュは、その一瞬を切り取ったものにすぎなくて、自分としては何も考えずに自然と出している攻撃ですね」

――幼少期からフルコンをやっていて、それだけ体に染みついている動きである、と。

「染みついています。でもフルコンをやっていた頃は、そんなに考えてやっていませんでした。だからこそ染みついているんだろうなと思いますね。MMAをやり始めてからは、凄く考えて練習するようになって。でもその先に、無意識の部分に辿り着く――不思議ですよね。格闘技って、そういう螺旋のようにグルグル回って繋がっているようなもので」

――鈴木選手にとっては「気づいたらMMAでも空手が生きていた」ということなのでしょうか。

「もちろん自分の強みは空手と、以前やっていたクラシックバレエにもあります。でも、それをうまく繋げることができていませんでした。それこそ米国に拠点を置いて練習し始めてからは、目の前のことに必死で。『MMAで空手を融合させる。バレエのステップをうまく使う』とか考えていても、うまく当てはまらなかったです。

でもガムシャラに突き進んでいく毎日の中で、だんだん自分の型が出来てきました。その型に血が通い、どんどん形になっていく。その形の中で光っていたのが、やっぱり空手やバレエだったんです」

「倒れてくれーーっ!!」と思いながらパンチを振っても、それはただの僕の意志じゃないですか

――MMAを戦っていくことで改めて、自分の中で気づかされたものなのですね。それに気づき、掴めてきたのはいつ頃ですか。

「ずっと無意識でやっていて、意識的に分かったのは最近ですよね。思い返せば『これは空手の動きだよな』『バックボーンの中にある動きだな』というものは、やっていました。ただ言語化して試合で表現できるようになったのは前回のRTU初戦であったり、その前のフューリーFCのタイトルマッチでした」

――確かにフューリーFCのタイトルマッチでは、それまでの試合と何か動きが違うように感じました。

「明らかに自分ではあったと思います。一言で表すのが難しいぐらい、やってきたことがあって。『こうだったから、こうなった』とかはないんですよ。……、……難しいな。ひとつ言えるのは、本気で勝つために毎日を過ごしていた結果、フューリーFCでチャンピオンになったという感じで」

――なるほど。その表現が一番分かりやすいかもしれません。

「初めてタイトルが絡む試合であり、ここで勝てばUFCにひとつ近づくことができる。アウェイの中に僕とコーチ2人で乗り込む。それでも絶対に勝たないといけない、という気持ちでファイトキャンプに臨んでいました。その本気さが僕の魂を磨いてくれたんだろうと思います。『空手の技でこうしよう、ああしよう』とかは一切なく、とにかく勝つことだけを考え、勝つためにやるべきことをやってきた。そこで自分はファイターとして剥けることができました。ズル剥けですっ!!」

――……せっかく良い話をしていたのに(笑)。フューリーFCのベルトを巻き、RTUでオトゴンバートルを下して準決勝に進みました。結果を残すことで「勝つために」という気持ちは、より一層強くなるものですか。

「絶対に勝つ、というよりは『勝つためにやるべきことを淡々とやる』というフェーズになってきています。僕は感情の起伏が激しいので、これまでも感情に揺さぶられることもありました。それでも存在している事実はただひとつ――次の準決勝でジョセフ・ラルシネーゼに勝つ。勝つために今、この瞬間にやるべきことを120パーセントでやる。練習も休養も、作戦を考えることも、何も考えずにゆっくりすることも……全て淡々と。フューリーFCのタイトルマッチを経て、本当に意味でファイターになれたんだと思います」

――過去の試合で、感情に揺さぶられて失敗したことはあるのですか。

「デビュー戦(※2022年4月、海飛にKO負け)は感情の揺さぶりが大きかったですね。緊張を押し殺すために相手を殺す――それは自分が緊張から逃げるためにしていることなので、そんな自分の振るう拳には重さも殺気も籠もっていない。ただの感情的なパンチなんですよ。

たとえば『倒れてくれーーっ!!』と思いながらパンチを振っても、それはただの僕の意志じゃないですか。でもKO勝ちしている試合は『ちゃんと打った結果、相手が倒れている』という感じで。その部分を突き詰めていくと、呼吸であったり普段の過ごし方にも繋がっていく。自分の目の前にあるもの、今のこの瞬間も全てUFC世界王者に繋がっていくと考えています。

だからデビュー戦も全部が悪かったわけではないです。あの試合で学べたことは、自分の中でも凄く良い教訓になっていて。初心に戻るという意味で、デビュー戦の時の僕はいつでも自分の中にいるんですよ」

――考え方が、まさに武道ですよね。目の前にあることを突き詰めていく、しかし終わりはない。

「終わりはないですね。それこそUFC世界王者になったとしても、その時点で自分が世界中の誰よりも強いのかどうかは分からない。きっと僕がベルトを巻く頃には、自分のようなファイターが『絶対にUFCのチャンピオンになる!』と言って練習しているでしょうし。そんなファイターが世界中にいて、目指しているものがUFCのベルトなんです。だからチャンピオンが負けること、ベルトを防衛できない時もあるからこそ、ファイターは一生チャレンジャーなんだと思っています。そんな世界だから自分はMMAをやっていて、終わりはないですよ」

本当に自分のタイミングでテイクダウンに入ってくることができるかな?

――素晴らしい考えです。RTUの話に戻ると初戦を終えた直後、ラルシネーゼ×亮我戦を観戦することはできたのですか。

「試合を視たのは10日後ぐらい、米国に戻ってからです。『あぁ、こういう感じか』という部分を持ってファイトキャンプを始めました。

試合映像を視ると、タフだし、効かされてから戻すまでの流れをつくるのが上手いファイターだと思います。相手は良い打撃を当てて、そのあと攻め込んできた時に粘り強い。盛り返す馬力がある。そのなかで一瞬を突いたフィニッシュがあることは、強みの一つでしょうね」

――RTU初戦でも亮我選手が打撃を効かせていました。しかし、そこからの誤魔化し方が上手かった。

「そうなんです。見ていて分かりやすいぐらい効いていたのに。ハッキリとは分からないけど、豪州は南半球にあって、感覚的にも文化的にも北米とは何か違うものを持っている気がします。だから自分の想定は当てはまらないことも多いだろう、と。

キルクリフって南半球から来ている選手はいないんですよ。豪州の選手と触れるのは次の試合が初めてで。もちろんモンゴル人ファイターも前回が初めてでしたけど。ただ、運が良いことに――圭ちゃん(中村圭一郎)のRTU決勝はシドニーで開催されたじゃないですか。僕もセコンドとして一緒に行っているんですよ。だから現地で豪州の空気だったり生活などは感じることができていて」

――実際に豪州で感じたものは何ですか。

「なんだか、まろやかなイメージでした。風も食べ物も人も――あと女の子が健康的で大好きです(笑)」

――アハハハ!

「それはともかく、やっぱり何か北米とは違いますよね」

――ラルシネーゼについては、相手に動かせてからテイクダウンに入る動きの印象も強いです。

「テイクダウンについては、キルクリフにいるレスラーって『オールアメリカンのD-1で戦っていて、MMAでは無敗でベルトに挑む』みたいな感じの選手ばかりなんです。本当にスペシャリストたちなので、テイクダウンのタイミングについても対策はバッチリですね。もちろん入られたら入られたで、ちゃんと対処します。練習相手が強いからって大丈夫、というのも驕りだと思うし、そこは油断しないように」

――はい。

「でもラルシネーゼに言いたいのは――『互いに集中している極限の状態のなかで僕を相手にし、本当に自分のタイミングでテイクダウンに入ってくることができるかな?』ということです」

――おぉっ!! かなりラルシネーゼ対策にも自信を持っているようですね。ちなみにもう一つの準決勝、内田タケル×チーニョーシーユエ戦は、どちらが上がってくると予想しますか。

「それは本当に分からないですね。正直、どっちでも良いかなと思っています。僕は強いヤツと戦いたい。それは必然と勝者になるじゃないですか。楽に勝ってUFCと契約しようなんて、1ミリも思っていないので。強いヤツを倒して契約しないと、面白くない。だから次戦も決勝も、ぜひ楽しみにしていてください!」

■視聴方法(予定)
8月28日(金・日本時間)
午後6時00分~UFC FIGHT PASS
午後5時45分~U-NEXT


■Road to UFC Season05 Semi Final対戦カード

<ライト級/5分3R>
ダリウス・フラワーズ(米国)
マァフゥシャトゥ(中国)

<ミドル級/5分3R>
イーリージャーティ・マイマイティージャン(中国)
トレストン・ヴァインズ(米国)

<Road to UFC女子ストロー級準決勝/5分3R>
パク・ボヒョン(韓国)
ファリダ・アブドッゥエヴァ(キルギス)

<Road to UFC女子ストロー級準決勝/5分3R>
万智(日本)
モン・ボー(中国)

<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
チーニョーシーユエ(中国)
内田タケル(日本)

<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
ジョセフ・ラルシネーゼ(豪州)
鈴木崇矢(日本)

<Road to UFCバンタム級準決勝/5分3R>
カシブ・マードック(ニュージーランド)
ラビンドラ・ダント(ネパール)

<Road to UFCバンタム級準決勝/5分3R>
田嶋椋(日本)
チュングレン・コレン(インド)

<Road to UFCフェザー級準決勝/5分3R>
ジョージ・マンゴス(豪州)
アーフージョン・アーリーヌアール(中国)

<Road to UFCフェザー級準決勝/5分3R>
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)
ソン・ヨンジェ(韓国)

PR
PR

関連記事

Movie