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【DWCS S09Ep10】30歳、夢を追う決断。クォン・ウォンイル「佐藤将光選手が自分の背中を押してくれた」

【写真】 タフファイトは絶対。それでも拳に自信を持っているウォンイル(C)MMAPLANET

14日(火・現地時間)、ネヴァダ州エンタープライズのUFC APEXでDWCS S09 Ep10が開催される。2025年のコンテンダーシリーズも最終週を迎える。これまでの9大会で契約を勝ち取ったファイターは実に41人を数える。あと何人が続くことができるか。そのシーズン09最終日は、第5週でフィリッピ・フランコを破ったもののショートノーティス&計量失敗だったフレディ・ヴィダルに約束通り、再チャレンジの機会が与えられ全6試合が組まれている。
Text by Manabu Takashima

豪州HEX FSフェザー級王者マーワン・ラヒキが、コンゴ民主共和国のアナニアス・ムルンバと対戦。カザフのOctagonヘビー級王者でウズベキスタン人のアザマット・ヌフティラエフ、キャリア8勝0敗7KO(6試合が初回KO)でLFAでも6連勝中のミシェウ・オリヴェイラなど期待のプロスペクトが揃っている。

そのなかで特に注目したいのはフアン・ディアスと戦うクォン・ウォンイルだ。クォン・ウォンイルは2019年からONEと契約し5敗こそ喫しているが、9つの勝利は全てKO勝ちというストライカー。まさにUFCが求めるファイトスタイルの持ち主だ。

Road to UFCでトーナメントが実施されている階級で、東アジア勢がコンテンダーシリーズでスポットが与えられるのは異例中の異例ともいえる。対戦相手は、それこそコンテンダーシリーズの権化というべきバチバチのファイターを絶賛育成中のUFC PIメキシコで練習を積むペルー人ファイターのディアスだけに、倒すか倒されるかというファイトになることは絶対だ。

30歳にして、夢を追う決断をしたクォン・ウォンイルをインタビューすると、この選択を後押しした日本人ファイターの存在がああったことが明らかとなった。


自分にとって新しい挑戦する時が来たと思いました。それは夢に近づくために動き出すこと

――2週間後にコンテンダーシリーズを戦うウォンイル選手です(※取材は9月29日に行われた)。今の気持ちを教えてください。

「凄い良い感じです。フアン・ディアスをぶっ殺します(笑)。ところで今月の初めにインタビューを受けることができなくて、スミマセンでした。あの頃、UFCからプロモビデオの撮影が必要だから2日間、ラスベガスに来て欲しいという連絡があって。凄くタイトなスケジュールで、取材を受ける時間がなかったです」

――2日間!! そのためにほぼ6日間ほど潰れるわけですね。

「全くもってクレイジーでした。あのスケジュールでソウルとラスベガスを行き来するのは(笑)」

――メンタル、そして体調面で問題はなかったですか。

「もちろん、試合が迫っているので急遽創り上げる必要がありました。でも、帰国後は本当にスムーズに準備は整っています」

――ところでウォンイル選手がコンテンダーシリーズに出場すると知った時、凄く驚きました。ONEで戦うようになって6年、ONEはウォンイル選手のファイトスタイルを気に入っていたし、試合機会も多かった。だからONEとの関係は凄く良好だと思っていたので。

「僕は今でもONEと凄く良い関係です。何も問題はなかったです。今回はコンテンダーシリーズで戦いますが、UFCで戦うことはMMAを戦い始めた時からの夢でした。ONEと契約を更新した方が、安定した生活を送ることができたと思います。

でも、自分にとって新しい挑戦する時が来たと思いました。それは夢に近づくために動き出すこと、UFCにチャレンジするということでした」

――30歳という年齢が、その決断を後押しすることになりましたか。

「正直、年齢は大きな原因ではなかったです。ただ佐藤将光選手とキム・スーチョル選手のRIZIN韓国大会での試合を見て……佐藤選手とはONEで戦っています。そして、彼は自分よりもずっと年上です。

佐藤選手は自分への挑戦を続けている。新しい舞台で、新しい挑戦を。それを見て、自分もできるはずだとモチベーションになりました。佐藤将光選手がキム・スーチョル選手と戦ったことが、自分の背中を押してくれたんです」

――おお、痺れる話です。ところでUFCとの契約に向けてコンテンダーシリーズが第一の選択だったのでしょうか。Road to UFCやZFNで戦うことを考えることは?

「これは他で言っていなかったことですが、もっと良い条件のオファーが他からありました。UFCからは『1勝、どこかで挙げて欲しい。それからだ』と言われていたので、他のプロモーションを交渉をした結果、金銭面でも良い条件の話を貰えていました。

でもコンテンダーシリーズほど、UFCに直結している試合は存在しません。良い試合をして、相手を倒せば最速でUFCファイターになれます。時間を無駄にしたくなかったです。そして、最初に話が来たのもコンテンダーシリーズでした。だからコンテンダーシリーズで戦うことにしました」

――「あと一勝必要だ」からコンテンダーシリーズのオファー、それはUFCがウォンイル選手を求めていることに他ならないですね。

「なぜ、UFCがこのようにコンテンダーシリーズのオファーをくれたのか、自分も理由は分かりません。ただ、自分のUFC以外での実績を評価してくれたのかと思います。ONEでタイトルに挑戦し、何より14勝のうち13試合でフィニッシュしています。12KO勝ちで、判定は勝っても負けても1度ずつです。負けた試合も判定でなく、フィニッシュされています。つまり、自分がエキサイティングなファイターだUFCは分かっているはずです」

――そしてコンテンダーシリーズは、やるかやられるかというファイトが絶対の舞台です。

「その通りです。やるかか、やられるか。それがコンテンダーシリーズです。そして、やられるのはフアン・ディアスです(笑)」

――押忍。ところで過去6年に渡り、ONEのハイドレーション込みで北米階級より1階級上の65キロでバンタム級を戦ってきました。ドライアウトが認められた135ポンドへの減量に不安はないですか。

135ポンド、カツカツ。相当にしぼっている(C)Zuffa/UFC

「そんなことまで心配してくれて、ありがとうございます。

これまで計量を不安に思ったことは一度もありません。体重を落とし、戻すだけです。自分は漢です。本当の漢は、ただケージに入って戦うのみ。減量やリカバリーなんて、どうでも良い。ただ、戦うだけです」

自分の試合を見てください。そうすれば、目にしたいモノが見られます

――そんなウォンイル選手ですが、今やファイターだけでなくプリティボーイMMAの指導者です。今回の挑戦に、ジムの皆の反応はどうでしたか。

「ジムの皆が、自分がUFCファイターになることを期待して支えてくれています。最高の空気です。既にプロとして戦っているコーチ、プロになるために練習をしているアシスタントコーチが、自分の穴埋めをしてくれてトレーニングに集中することができています。しかも、そういう選手たちの成長は著しくて、今や自分にとっても最高のスパーリング・パートナーになっています。

生徒だけでなく、友人たちも自分の新しい挑戦に良い影響を受けてくれているのも感じます。若干プレッシャーになっていますが、この瞬間を最高に楽しめています」

――ではコンテンダーシリーズでファンだけでなく、ダナ・ホワイト、ショーン・シェルビー、ミック・メイナードにどのようなファイトを見せたいと思っていますか。

(C)Zuffa/UFC

「とにかくハードファイトを対戦相手に強います。

フアン・ディアスが逃げ回らない限り、絶対に良い試合になります。何か自分に特別な期待をしなくても、大丈夫です。ただ、自分の試合を見てください。そうすれば、目にしたいモノが見られます」

――では最後に日本のファンに一言お願いします。

「日本のファンの皆さんが応援してくれると、嬉しいです。そしてファンの皆さんだけでなく、自分がONEでケージやリングを共有できた日本の選手たちが、プライベートやセコンドで日本に行くたびに練習場所を提供してくれて、一緒に汗を流してくれます。本当に皆さんに感謝しています。絶対にUFCファイターになります」


■視聴方法(予定)
10月15日(水・日本時間)
午前9時~UFC FIGHT PASS

■DWCS S09Ep10対戦カード

<ライトヘビー級/5分3R>
フレディ・ヴィダル(米国)
レヴィ・ホドリゲス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
フアン・ディアス(ペルー)
クォン・ウォンイル(韓国)

<フェザー級/5分3R>
マーワン・ラヒキ(豪州)
アナニアス・ムルンバ(コンゴ民主共和国)

<ウェルター級/5分3R>
ミシェウ・オリヴェイラ(ブラジル)
ヴィクトル・ヴァレンズエラ(チリ)

<ヘビー級/5分3R>
アザマット・ヌフティラエフ(ウズベキスタン)
ヨヴァン・レカ(セルビア)

<ミドル級/5分3R>
マリオ・ミンガイ(イタリア)
ウェス・シュルツ(米国)

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