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【UFC ESPN67】ヤナ・サントス戦へ、ミーシャ・テイト「私がラストワン・スタンディング」

【写真】女子MMAを当たり前の存在に昇華させた世代で、トップ10入りを目指し戦う。素敵すぎる (C)MMAPLANET

3 日(土・現地時間)、アイオワ州デモインのウェルズファーゴ・アリーナで開催されるUFC on ESPN67「Sandhagen vs Figueiredo」でミーシャ・テイトが1年半ぶりに実戦に臨む。
text by Manabu Takashima

MMAデビューから18年、38歳になり二児の母親でもあるミーシャは「今、11位だからトップ10の壁を破りたい」と話す。北米女子MMAの歴史、レジェンドがビッグファイトでなくOne of themの戦いでなりうる最高の自分を目指す。

今回のヤナ・サントス戦を含めても、どれだけ彼女の雄姿をオクタゴンで見られるかは定かでない。あと何回、現役ファイター=ミーシャ・テイト、ラストワン・スタンディングのリッチな言葉をお伝えしたい。


──ミーシャ、引退という話題になるはもう辟易しているかもしれないですが、「私が何者か、見せたかった」と話した前回の勝利から1年5カ月も試合がなかった。誰もが引退を考えていると思っていたに違いありません。

「1年半近く試合に出なかったのは、人生を生きているなかで単にそうなっただけ。試合をすることで凄く充実した日々を送ることができるけど、生活としては別角度から見る必要があるわ。二人の子供は私の人生で、本当に本当に本当に大切なモノ。母親として、あの子たち以上に大切なモノはないわ。

そして私がファイトキャンプを行うことができるのは、周囲の皆のおかげで。母はまた、母親役を務めないといけない。前の試合が終わってケガをしていることもあったから、私がありたい自分でいる期間を設けたの。それが18カ月にも及ぶとは思っていなかったけど、それが人生。そして、正しいタイミングで試合に戻ることができたと思っている」

──この長い休息期間も、引退を考えることはなかったですか。

「ノー。前回の試合でUFCに戻ってきて、ようやく自分の力を出せたと感じていたから、また戦いたいと心の底から思っていたわ。ジュリア・アヴィラ戦では、過去最高の戦いができたから。20代の頃から試合から課題を見つけ出して、修正しようと思っていたけどデキなかった。30代になり、同じように課題をみつけてリフィックスすることを心がけてきたの。そして、戦うたびにデキているのか、そうじゃないのかを確認しつつ試合に出て来て。ジュリアとの試合では、それがデキているなら、またタイトル戦線でやっていける。そうでないなら、引退も考えないといけない。そんな風に思っていたわ」

──ではアヴィラ戦で納得できないパフォーマンスだったら、引退もあった?

「その通りね。絶対に引退していたとは言えないけど、次の人生のために何をすべきかと頭を切り替える必要があったはず。そうでないと、ただ健康を害するためにファイトを続けることになってしまうから。

でも満足いく戦いができたから、この道がタイトルショットに通じるようになった。そうなっていたら、最高に嬉しいわ。ただ自分のわがままで試合を続けていても、しょうがないわけだし。私は母親としての人生も、凄く気に入っているから。そして、それが一番大切な仕事なわけだし」

──そこなんです。もう十分に達成感もあるはずで。なぜ、今も戦い続けたいのか。しかも、タイトルに続く路を歩みたいと思えるのでしょうか。

「これだけ長い間戦ってきて、今も課題を見つけて修正していく作業を続けているわ。ジュリアとの試合では、良いパフォーマンスを見せることができたけど、まだ全てのピースがしっかりとハマっていない。ただし、良い方向に動けている。まだ手応えを感じたのは1試合、このまま良い調子をキープしたい。

私はMMAというスポーツ界にいて、年齢だけだともう若くはないわ。でも、体は気持ち次第よ。そして、私の気持ちは凄くシャープだから。レベルは過去最高地点に到達している。ここからの戦いは、自分の人生において凄く意味のあるものになる。筋肉がどうこうでなくて、気持ちという部分で、新しい武器を纏うことができているから」

──本当に気持ちの部分で、MMAファイターで居続けられているのですね。

「一度、戦いから離れ、ONEチャンピオンシップ──アジアで違う仕事に就いた。そして母親にもなった。あの時間はファイターでなく、人として人生を生きていた。それまで、ファイトは私の人生の大部分を占めていたのに。そして、敗北を恐れるというプレッシャーから解放されたの。あの時から負けることが怖いんじゃなくて、自分のなかでベストになれないことが怖くなった。

それは復帰後、全ての試合で『エベレストに登頂するために、前に進むことができるのは今日が最後かもしれない』と思って戦うようになったから。私が成り得る最高の自分になれるチャンスは、もうこれが最後かもしれない。ただ、そんな自分になれるなら、また世界チャンピオンにもなれると思わない? それが今の私の精神状態。私のゴールは勝利でなくて、最高の自分になることだから」

──今からすると、UFCにカムバックした後の苦戦は、女子MMAが進化の過程で以前のようにガンガン前に出てやりあうのではなくて、戦術を駆使して距離をコントロールする女子選手が増えたからでないかと。

「そこに苦戦するのも、私の長い旅の一部だから。私の全てのキャリアにおいて、MMAは本当に変化してきた。そして、今もここにいることを本当に誇りに思っている。私の世代で戦っている最後に1人になった。私がラストワン・スタンディング。女子MMAのオリジナルで、トップ10に戻ろうと今も戦っている。タイトルを狙う位置に再びたどり着ける可能性を模索して。ワオッ。毎試合、その機会を得ることができている事実に感謝しているわ。

私がMMAを始めた時、本当に小さなショーで戦い、HOOKnSHOOTで試合をして。BODOGでファイトしたわ。そしてStrikeforceからUFCに到達した。本当に素晴らしい旅を、渾身の力を込めて続けることができた。

今、もう私のポケットはお金でいっぱいになっている。これ以上、何も求めるものはないわ。エクストラな時をエンジョイできることに感謝しているだけで」

──そんなエクストラな時をエンジョイする相手が、ヤナ・サントスです。どのような印象を持っていますか。

「UFCデビュー戦で1階級上のサイボーグと戦ったタフクッキーよ。気持ちが強くて、勇気のあるファイター。クラシカルなストライカー✕グラップラーの試合になるでしょうね。私のキャリアはずっと立っていたい相手と戦ってきたけど、きっとこの試合もそうなる。仮に彼女が私をテイクダウンして、寝技で戦ってくるなら楽しくてしょうがないでしょうね(笑)。ありないけど、ハハハハ。でも私の打撃も成長しているし……そうね、良いマッチアップよ」

(C)Zuffa/UFC

──ヤナ・サントスは距離をコントールしてくるストライカーです。

「ケージに向かって距離をコントロールすることが、凄く重要になってくるわ。早いリズムで戦うこと。それにヤナはアマンダ・ヌネスじゃないし、彼女の打撃を恐れる必要もない。ただマウスピースをハメて、土曜日に戦うだけね」

──そのヤナ・サントス戦、どのような試合をしたいと考えていますか。

「ジュリア・アヴィラ戦より、強い自分でいたい。今ランキングは11位だから、勝ってトップ10の壁を乗り越える。そして皆に『38歳のミーシャ・テイトは、28歳のミーシャ・テイトより強い』って思われるような試合がしたい。私の名前をどこで見たいか。それがタイトルショットだと思われるようなファイトをするから」

──ビッグネームが、レジェンドとのビッグネーム対決を欲するのでなく、11位のランクをトップ10入りさせたい。凄く素敵な言葉で、どれだけMMAのことが好きなのかが伝わってきます。

「MMAが好きすぎるのよ。でも確実に言えることは、もう長くはここにいない。だらこそ、良い時間を過ごしたいと思っている。私が過去に何をしてきたかは、関係ない。今、何をしているのか。それが大切で。だからトライしている」

■視聴方法(予定)
5月4日(日・日本時間)
午前8時~UFC FIGHT PASS
午前7時45分~U-NEXT


■ UFC ESPN67対戦カード

<バンタム級/5分5R>
コリー・サンドハーゲン(米国)
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ライニエ・デリダー(オランダ)
ボー・ニコル(米国)

<ウェルター級/5分3R>
サンチアゴ・ポンジニビオ(アルゼンチン)
ダニエル・ロドリゲス(米国)

<バンタム級/5分3R>
キャメロン・スマーザーマン(米国)
セルヒー・サイディ(カナダ)

<ライト級/5分3R>
ジェレミー・スティーブンス(米国)
メイソン・ジョーンス(英国)

<女子バンタム級/5分3R>
ヤナ・サントス(ロシア)
ミーシャ・テイト(米国)

<ミドル級/5分3R>
アザマット・ベコエフ(ロシア)
ライアン・ロダー(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
ジリアン・ロバートソン(カナダ)

<バンタム級/5分3R>
ガストン・ボラニョス(ペルー)
クァン・リー(ベトナム)

<ヘビー級/5分3R>
ドンテイル・メイス(米国)
トーマス・ピーターソン(米国)

<女子フライ級/5分3R>
ジュリアナ・ミラー(米国)
イワナ・ペトロビッチ(クロアチア)

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