【Road to UFC 2025】プロ初黒星からの挑戦、吉田開威「フライ級では、僕は打撃でやりやすくなる」
【写真】持ち味である打撃を生かすために、改めて組み技にも取り組んだ結果、打撃の成長にも繋がっている(C)SHOJIRO KAMEIKE
5月22日(木)と23日(金・いずれも現地時間)の2日間にわたり、中国は上海のUFC PIでRoad to UFC 2025(Road to UFC第4シーズン)が開幕する。今年はフライ、バンタム、フェザーそしてライトの4階級でトーナメントが行われ、吉田開威がフライ級に出場することとなった。
Text by Shojiro Kameike
今年1月、吉田はGladiator暫定バンタム級王座決定戦でシンバートル・バットエルデネに敗れた。当初は南友之輔と対戦予定だったが、南の負傷欠場によりシンバートルと戦うことに。そのシンバートルが計量オーバーと様々な要素があったものの、黒星は黒星。その吉田のRTU出場は意外でもあった。何より、本人も驚いたという。
ただ、吉田にとっては以前より語っていた「フライ級でRoad to UFCを目指す」という目標を実現した形だ。しかもその目標は昨年からの話ではない。中学時代からプロを目指していた吉田が選んだ道、さらに敗戦を受けて取り組んでいる今の練習を追った。
――昨年10月、グラジで上田祐起戦直後のインタビューで、吉田選手は「Road to UFCを目指したい。海外で戦うならフライ級まで体重を落とせるかどうか」と語っていました。その発言を考えると、今回のRTUフライ級出場は想定の範囲内だったかと思います。
「はい、そうですね。プロ4戦目ぐらいからRTUとの交渉を始めて、その直後は中国での試合でした。そこでKO勝ちしたことはインパクトが大きかったのかな、とは思います。次の試合もKOで勝ちましたし。今RTUに出るためには、中国で試合をするのが近道なんですかね。中国でスタートするトーナメントだから……」
――今回の出場メンバーを見渡すと、中国だけでなく各国の出場団体にも、ある種の傾向は見られます。ただ今年の1月に、グラジでシンバートルに敗れた時点でRTU出場はあると考えていましたか。
「ない、と思いました。だからすぐ、フランスのAres FCとか海外の大会と話をし始めていて。そこに――まぁまぁ早くRTUの話が来たんですよ」
――まぁまぁ早く、というのは?
「試合が終わって2週間後ぐらいに。だから1月中ですよね」
――それは早いですね。しかも敗戦の2週間後に……。
「そうなんですよ。『今年のRTUはないなぁ……』と落ち込みながら練習していたら、2週間後に連絡が来ました」
――シンバートルに敗れたあとは、RTUを狙えるような海外の大会への出場を考えていたわけですね。フランスのAres FCについては、硬式空手の繋がりから現地のファイターやジムとの繋がりもあって。
「そこで思ったよりも早くRTU出場決定の話が来ましたね」
――シンバートル戦は、対戦相手の変更と、代役選手の計量オーバーがありました。その状況でモチベーションを保つことができましたか。
「う~ん、まぁ……納得いかないっちゃいかない部分はありましたよ。でも、その状況で試合を受けるしかない。受けないとRTUの話もなくなるというか、そこで勝てないとRTUもないと思っていました。あと、このタイミングで試合をしないと、また試合ができるタイミングもないですし。RTUを目指すなら受けざるを得ない、という状況でした。
試合が終わったあとに他の人から『体重戻し制限の交渉をするべきだった』と言われて、僕も『あぁ、確かに』と思いました。相手の計量オーバーがあっても何の交渉もせず試合を受けてしまったこととか、いろいろと勉強になりましたね」
――試合内容については、いかがですか。
「寝かされて立ち上がるまでは練習していて、そのあとに明確なミスがありました。左ハイを出した時に足を滑らせてしまったんですけど、単純に滑っただけではなくて――試合後にALIVEの鈴木陽一社長から指摘されたんですよ。『体重が重い相手と組み終わって、立った時に全身の筋肉がこわばっていたのではないか。普段は力を抜いてハイを蹴っているのに、筋肉がこわばっている状態で蹴った時のギャップがあったのかもしれない』と。
それを聞いて自分も『なるほど』と思ったんです。僕としては、いつもと同じ感覚でハイを蹴ろうとした。でも体の状態がいつもと違っていた。ここはもう感覚の話になってしまうんですけど……。そこで足が滑り、『やっちまった』と思った瞬間にすぐ相手が極めに来た。そのスピードは凄かったです。
単純に経験不足だなって思いました。でもでも、いろんな経験が詰まった試合でしたね。エスケープして、ミスして、極められて――良い負け方だったと思います」
――その「良い負け方」を経て即、技術の見直しも始まったわけですか。
「試合が終わってからガイオジムで和田教良さんと、今日見ていただいたようなレスリングの練習を始めました。この2カ月間は週2回、ひたすらレスリングをやって、夜は柔術の練習をしています。それで週末は寒天練でスパーをするというルーティンに変えおかげで、だいぶ動きは変わってきたと思いますね」
――レスリングのスパーでは、ボトム、サイド、バックなど全て自分が不利な状況からのスタートを指定していました。
「そこは絶対ですね。やはり自分の打撃を生かすために――もちろん寝技で攻めることもありますけど、練習で攻めることをメインにする必要はないですから。基本的にはガイオジムでも、寒天練でも、基本的には下から始めます。
寝技だけじゃなく打撃に関しても変わってきました。今までは当てて引く、当てて動くというものばかりだったんです。でも海外の選手みたいに、前に出ながら打っていくと――自分にとっては新しいことが身についてきました。
寒天練にトレント・ガーダムが参加していることも大きくて。寒天練に行くと、ほぼガーダムと殴り合っています(笑)。まずガーダムはガンガン出て来るから、それを捌く練習から始めると自分から前に出ることも、打ち合うこともできるようになってきましたね」
――組みの練習量を増やした効果なのか、筋量が増えていませんか。
「だいぶ増えてきました。でも減量は余裕を持ってやっているので大丈夫です。そこは、もともと僕は学校に通ってやってきたことで」
――スポーツトレーナーを養成する専門学校に通い、様々な資格も取得していますよね。
「中学生の時に初めてMMAの試合に出た頃から、格闘技のプロになることを考えていました。プロになった時に役立つことを学びたいと思って、将来は専門学校に行く。だから大学ではなく専門学校に進むための高校選びから始めていたんです」
――これまでフライ級の体重で体を動かしたことは?
「ないです。でも中国で試合をした時は水抜き無し、最後に少しだけ汗を抜くぐらいでバンタム級リミットまで落としたんですよ。RTUはフライ級で話をしていたし、初戦はまた中国で開催されるだろうから、同じ中国で水抜きなしで落としてみました。
フライ級で戦うのは、僕は打撃でやりやすくなるという点があります。UFCのフライ級は平均身長が167センチぐらいで、僕は174センチある。自分のファイトスタイルを考えると、リーチが長い選手と当たったらやりづらいんですよ。リーチが長く、中に入って行かないといけない相手はやりづらいです。でもフライ級だと、自分から中に入っていく必要がなくなるのは大きいですね。RTUだけでなく、海外で戦うならフライ級だと考えていました」
――中学の時から全ての選択がRoad to UFCだったわけですね。
「アハハハ、そういうことです」
――RTU初戦の対戦相手は、いろいろと噂は出ていますが、まだ公式からの正式発表はありません。そこでトーナメント全体の印象を教えてください。
「まだ全然視ていないですね。まだ発表されていないけど、次の対戦相手のことしか考えていません。まずは上海のUFC PIが使えることを楽しみにしています(笑)」
――アハハハ。これまではMMAと並行して硬式空手の大会にも出場していましたが、今年はどうなるのでしょうか。
「今年は出ないです。5月には硬式空手の大きな大会もありますけど、それにも出ません。そこで試合をして怪我とか、少しでも違和感が残るようなことは避けたいので。今は5月からのRTUだけに集中しています」
■Road to UFC 2025 フライ級トーナメント出場者
吉田開威(日本)
山内渉(日本)
アグラリ(中国)
イン・シュアイ(中国)
ムリドゥル・サイキア(インド)
ナムスライ・バットバヤル(モンゴル)
リオ・ティルト(インドネシア)
アーロン・タウ(ニュージーランド)