この星の格闘技を追いかける

【Shooto2025#02】椿飛鳥戦前のSASUKE「どのような結果に終わろうが、綺麗には終わらない」

【写真】穏やかな表情を取り戻したSASUKE。しかし、怒りは全く収まっていない。怒りをコントロールできるようになっただけだ(C)MMAPLANET

16日(日)東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2025#02で修斗世界フェザー級王者SASUKEが、椿飛鳥の挑戦を受ける。
Text by Manabu Takashima

本来は昨年11月に対戦予定だった両者だが、SASUKEの負傷でこのタイトル戦は延期されていた。4カ月前、海外での試合がハマらなかった状況で、度重なる椿の挑発に堪忍袋の緒が切れるような状態で挑戦を受けることを了承したSASUKEは、その怒りに支配されたような精神状態でハードな練習を自ら、そして信頼のできるトレーニングパートナーに強いていた。

一見してやり過ぎに感じられた練習をカメラが追っていた。そして、椿への怒りが留めなく漏れていたSASUKEの様子が収録されたTHE 1 STORYが制作されたが、タイトル戦の延期とともにお蔵入りとなりかけていた。

両者の一戦が実現することとなった3月某日、SASUKEのあの日々が映し出された動画をチェックしてもらい――当時の心境と今を語ってもらった。怒りは収まっていない。ばかりか増している。ただし、冷静さを取り戻したSASUKEの怖さは11月以上といっても過言でない。


言っていいか……裏で殴りかかってやろうと思っていたぐらいですからね

――今、本来は11月にアップロードされる予定だったザワンTV動画であるSASUKE選手のTHE1 STORYをチェックしていただいたのですが、素直にどのような感想を持ちましたか。

「狂っていますよね(笑)。あんなんだったんだって。自分らしくないって思いましたね。あんまり熱くならないタイプだから。あのメンタルで試合をしていたら、何からアクシデントが自分にあったんじゃないかなって思います。まぁ、あったんですけどね」

――結果論ですが、あの練習を見させてらって負傷欠場の報を聞いた時は入れ込み過ぎだったからと思わずにはいられなかったです。

「ハイ。そうですね。まぁ、良くなかったですね。チームメイトに対して、特に申し訳ない気持ちがあります。僕に殴られ続けた人達が報われない形になってしまったので、しっかりと1人ひとりに謝罪をしました。それでは、まだ足らないと改めて思いました」

――動けるようになってから、あの時と違う心境になっているのでしょうか。

「自分の気持ち的には苛立ちとか、腹が立っているというのは全然変わっていないです。そのあとも色々とあって、増してはいるんですけど練習は冷静に……本当に冷静にやっています。あんな風に暴れることは、今はないです」

――青く燃えると話していましたが、全くそうではなかったです(笑)。

「真っ赤でしたね(笑)」

――いや、もうどす黒くすら感じました。

「確かに、どす黒かったな(笑)」

――11月に試合があれば、それはもう私闘のような形で制裁を加えるような気持ちだったかと。それがケガで、MMAをSASUKE選手が戦えるようになったのではないかと。

「う~ん(苦笑)。あのケガとチームメイトの言葉、色々なことが入り混じっていて。今は青く燃えることがちゃんとできています。そこも含めて、このチームに強くしてもらっているなというのがありますね。

ただ、あの殺気あるスパーリングも、勝負事のなかで行く時には必要だと思います。今後のキャリアや試合のなかで絶対に必要な場面は出てくる。それを全面に出して創り上げた期間でしたが、行き過ぎるとダメになる。薬も使いすぎると毒になる。そういうことが、身をもって学べたから。アレはアレでプラスにしていくしかないと、今は思っています。

だからというわけじゃないですが、綺麗に終わることはできない。そこは難しいですね。どのような結果に終わろうが、綺麗には終わらない。きっと試合中にマウントとか取ったら、赤くなりますよ(笑)」

――怖いです(笑)。仮に椿選手がリセットできる時があるとすれば、試合が流れた時。でも、彼もいつまでも続けました。そうするしかなかったのかもしれないですが。

「正直、そこでしか勝てるところがない。まともに勝てると思っていないから、アレを続けていたんじゃないですか」

――赤く燃えていた11月の練習は怖かったです。ただし1月のケージで見せた眼中にない感じ、あの冷たさがより恐怖を感じました。

「アハハハハ。そうですか。言っていいか……裏で殴りかかってやろうと思っていたぐらいですからね。変な奴をケージに上げるなって、修斗のスタッフに言って。そのスタッフは止めに言ってくれたんですけど、アイツは『坂本代表にOKを貰っているから絶対に上げさせろ』って引かなかったそうです。で、ああなった。

でも彼の心理は僕には勝てないと思っているんじゃないですか。だからあんなふうにおちゃらけて、負けた時の保険をかけている。ボディガードのようなのを連れてきたけど、何も面と向かってはいえなかった。椿がチャンピオンになりますとかきれいごとだけ言って。で、後になってSNSでビビったんだろうとか後出しじゃんけんみたいなことをしてきた。多分、心の中ではビビりちらかしているんじゃないですか」

――そもそものミスマッチと言われることもあるタイトル戦。その因縁がケガで長引いた。SASUKE選手はここで、この試合をしている場合じゃないと思われることが今後につながってくるかと思います。

「多分、自分の力を出して普段通りにやればおのずとそういう結果になる。青く燃えて、刺しに行く。時には赤く燃えるところもチラッと見せて『こいつ、外国人にも喧嘩負けしないぞ』というところも見せながら、フィニッシュする。で、皆の期待感を煽りたいですね。そういう試合にしようと思います。とにかくチームの皆に申し訳ないという気持ちでいるので……結果とパフォーマンスで返すことができれば。それで全部、取り返そうと思います」

――取り返したあと、進路としてどこか意中とするプロモーションはありますか。

「Eternal MMAが、やはり良いなって。フェザー級チャンピオンのセバスチャン・スーライとは戦えなかったけど、あのベルトを取りに行きたいと思います。それができたら良いなって思っています」

――その可能性は十分にあると思います。現状のEternalと日本の関係を考えると。

「セバスチャンがOKを出せば、ですね。それこそ、前チャンピオンのジャスティン・ヴァンヘーデンは、HEX FSに行っちゃってライト級に転向したのですが、戦いたいと言ってくれていたし。僕とジャスティンをブッキングする動きがあったかは分からないですけど、戦いたかったです。だから誰か1試合を挟んで、王座挑戦でも全然やりたいです。とにかく強い外国人選手と戦いたいので。

平川(智也)さんがEternalで戦って、負けてしまったのでウチにとってリベンジになる。あの時、僕はタイにいたんですけど。猿飛流もEternalで負けているし……豪州、行きたいですね」

なんといってもピョートル・ヤンと一緒にいることができたのがデカかった

――タイというのは?今後を見据えてですか。

「まぁ、この試合用にという練習はないので(笑)。タイミングが良く、バンタオMMAに練習をしに行くという形で。2週間ほど、(風間)敏臣と行ってきました」

――バンタオといえば、レスリングというイメージです。

「そうなんですよ。ヒックマン兄弟の弟のフランク。修斗のベルトを取った後、2022年の3月と4月――ラスベガスのシンジゲートMMAで2カ月練習をした時に、最初の1カ月はフランクが指導していたんです。久しぶりにフランクに会えるかなって思ってバンタオに行ったんですけど、イスラエル・アデサニャのサポート、そのあともジャン・ウェイリについていて留守でした。でも、兄貴のジョージも凄く指導が上手いので。

レスリングがMMAのなかで、一番肉体的にキツイ。だから皆、そこから逃げたくなるんですけど、そこから逃げないヤツは皆強くなりますよね。まぁ、やっぱり日本のジムと海外のジムの違いで敷地が広い。圧倒的に人数が多い。一つの技術を指導するのも、コーチは皆のことを見るから圧倒的に長い。そこで休まずに続けてやっていれば、強くなれます」

――しかも、色々なタイプの選手が世界各国から集まっていますし。

「中央アジア系が多かったですね。ロシアもそうで。キルギス……ウズベキスタン、カザフはどちらかというとタイガームエタイに多くて。中国人選手、韓国のイ・ジョンヒョンもいましたね。ただ、なんといってもピョートル・ヤンと一緒にいることができたのがデカかったです」

――おお、ピョートル・ヤンと!!  触れてみて、いかがでしたか。

「そりゃあ、強いッスよ(笑)。ピョートル・ヤンって、大きくないんですよ。でもMMAのスパーリングをやると強いです。それこそ喧嘩じゃないですけど、引かない。純粋なグラップリングの練習ならどうにでもなる。でも、MMAになると3倍ぐらい強くなりますね。殺気をはらんでいるし、下がらされてしまいます。プレッシャーの掛け合いで、あまり引くことはないんですけどね。階級が下なのにピョートル・ヤンとやると、下がらされる。

殺気をはらんだ赤い強さと要所でテクニックを駆使する深みがあって。一番怖いタイプです。その怖さを肌で感じられたことが凄く大きかった。それだけでなく、スパーリングが終わると色々と局面ごとの技術を振り返って教えてくれて。土曜日の午前中とか敏臣と僕と、ピョートル・ヤンと3人で練習をすることもありました(笑)。そういう時もテクニック指導をしてくれて。グローブもせずに対人シャドー、普通に素手で殴るみたいになるんですけど(笑)」

――アハハハハ。

「でも、技術的にも奥が深かったです。これが世界のトップにある選手なんだという強さと怖さを感じました。それもあってピョートル・ヤンの試合を見直すと、プレッシャーを掛けて距離を潰す。近くなると、足払いとか柔道の技を使う。そこって僕にも通じている部分で。だから、教わった技術がハマったところがあります」

――ピョートル・ヤン譲りの戦い方。いやぁ、楽しみです。

「次の試合で出す必要はないですけどね。そこまで、必要じゃない。客観的に見て。ただし、今後を考えると凄く役に立ちます。今も実際にスパーリングで使うと、そこでリードできますし。バンタオの2週間は凄く学びが多かったです。

ピョートル・ヤン、それと(イルホム)ノジモフ。ノジモフは強かったです。殺気があって怖かった。練習が終わったらケロってしているけど(笑)。久しぶりにフェザー級で、こんなに強いヤツがいるのかと思いましたね。RIZINに頻繁に来日するなら、日本人を全部食っちゃうんじゃないのかっていうぐらい強かったです。そんなノジモフと練習をすることができて良かったです。

2週間、生きるか死ぬかっていう練習をしてきて、日本に戻ってきて試合の準備だっていう段階になった時、『なんで、あんな奴と次の試合をするんだよ』って逆にモチベーションが下がりました。そもそも格闘技に向き合う気持ちが違うし。やっていることが違う。強度も違えば、中身も全然違う。『勝てる』と言っていることが不思議です」

――とはいっても、ファイトはファイトで100パーセントはありえないです。

「だからいつも通りにやるというのが、今回のテーマです。バンタオに来て、2週間死ぬ気で殴り合って見ろよって。バンタオのスパーリングって、人数が多いから75キロで重い方と軽い方と分けられるんですよ。僕はギリギリ重い方になってしまって。中村京一郎君もバンタオに来ていたのですが、京一郎君はギリギリ軽い方で(笑)。ジョージに『俺も、こっちで良いか』って聞いたら、『ダメだ』って言われて(笑)。まぁ、しょうがないですよね。

ノジモフも身長が180センチほどあって、僕と同じでフェザー級でも重い方でやっていました。ノジモフって、本来はタイガームエタイでやっている選手だけど、バンタオにも来ていたって感じで。ダウトベックも確かタイガーですよね」

――ノジモフとダウトベックは、マネージャーが同じではないでしょうか。

「ダウトベックがどれだけなのか分からないですけど、ノジモフは知られていないだけで相当に強いですよ。ケラモフとの試合だって見たい。それぐらい強いですね」

――その猛者たちとの練習の成果を発揮するのは、次の試合でないと明言したSASUKE選手ですが、改めてタイトル防衛戦に向けて、一言お願いします。

「盛り上げようとしてやっていることが、盛り上がっていない。青木(真也)さんのように『もめごとはリングに持ち込めば金になる』ということを継承せずに、ケージのなかに入ってマイクで発言するチャンスがあっても、おちゃらけて誤魔化す。裏でコソコソと、スパイみたいなことをするヤツと一緒にやっている。アレでよく会社員としてやれていますね。何よりも、裏でビビっている。それはこっちも知っているですよ」

――できれば意気込みを……。

「そうですね。ハハハハ。とにかく今回はケガもなくて、大丈夫なので。期待してください(笑)」



■視聴方法(予定)
3月16日(日)
午後5時30分~ ABEMA格闘チャンネル

PR
PR

関連記事

Movie