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【Special】『MMAで世界を目指す』第8回:鈴木陽一ALIVE代表「UFCの減量食と海外での体重調整」─02─

【写真】写真左は上海PIの試合会場、右は練習スペースだ。透暉鷹のRTU敗戦&負傷からの復帰にも期待したい(C)ISHITSUNA MMA

MMAワールドで勝つためには、フィジカル強化が不可欠となった。この連載では「MMAに必要なフィジカルとは?」というテーマについて、総合格闘技道場ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく。
Text by Shojiro Kameike

MMAワールドの頂点、UFCとの契約は狭き門だ。同時にUFCとの契約を目指すためのトーナメント=Road to UFCや、DWCSに日本人ファイターが出場するチャンスも減少していくかもしれない。その舞台に上がるためには、日本国内で強豪選手に勝利すること以外に、海外フィーダーショーでベルトを巻くという方法も考えられる。では海外で戦うために必要なこととは。技術、戦略はもちろんチームで取り組まなければいけないこともあることを知ってほしい。


透暉鷹について言うと、初めてバンタム級で試合をした河村選手とのKOPタイトルマッチは、減量も順調だったんです。それがRTUの時は……いろいろと国内でも環境や状況が良くなくて、減量に苦労しました。これは言い訳になってしまいますけど。

鈴木 何より僕たちが想像していた食事は、ただ同じものが配られるのかと思っていました。それが、なんど個々に合わせたものだという。

ベースは同じだと思うんです。それが選手に合わせて品目が減ったりすると。

――UFCサイドの減量や体調管理に対するサポートは、RTUだけでなく本戦でも行われるのでしょうか。

写真奥がファイトレディーの打撃コーチ、エディ・チャー。チャーの横にいるのはUFCファイターのアラテンヘイリだ(C)ISHITSUNA MMA

ヘンリー・セフードがいるファイトレディーに行った時、打撃コーチのエディ・チャーにRTUの時のサポートについて訊かれたんですよ。「凄くサポートしてくれた」と答えたら、「ナンバーシリーズのサポートは、RTUとは比べものにならないよ」と言ってくれました。やはり選手のサポートもRTU < UFN < ナンバーシリーズと、差が凄いと言っていましたね。

鈴木 7年前、加藤久輝がベラトールに出場しました。日沖発がUFCに出た時は現地入りが7日前だったら、ベラトールは5~6日前とか、1日か2日は短かったと思います。もちろん現地でコミッションによるメディカルチェックは行われる。でも食事については、自分たちで手配していました。ホテルの近くにあるスーパーマーケットへ買い出しに行って、ホテルで自炊していましたよね。肉や野菜を焼いたりして。

そうだったんですね。

鈴木 発がUFCに出た十年以上前は、UFCでもそれはなかった。それだけ時代は変わり続けているし、進化しているということですよ。

――当時は海外で試合をする場合、「日本から何を持っていくか」という議論が交わされていました。それこそ炊飯ジャーを現地に持ち込んだり。

鈴木 あった、あった(笑)。僕も海外に行く時は、ホテルに直接電話して、電子レンジの有無などを確認しましたよ。無い場合は、お風呂を沸かしてパックのご飯を温めようか――とか。当時はキャンプ用のフリーズドライ食品が重宝しましたね。ただ、UFC以外だと、そうしないといけない団体も多いでしょう。

海外ではホテルの部屋にバスタブがないことも多いですしね。ウチの選手が韓国で試合をした時がそうで、計量直前までランニングで落としているファイターもいました。

鈴木 国によって文化の違いもある。久米がオーストラリア修斗で試合をした時は、宿泊するホテルに何度もバスタブがあるか確認したら、「ある」と言うんです。でもそれは――ホテルに入ってみたら、プールサイドにあるジャグジーのことで(苦笑)。豪州は湯船に浸かる文化がないらしいです(※水資源に乏しいため、シャワーのみが基本と言われる)。

ニュージーランドの試合に帯同した時も、ホテルにバスタブはなかったです。

鈴木 オセアニア全体がそうなのでしょうね。

ニュージーランドのシティキックボクシングにて(C)ISHITSUNA MMA

僕は事前にスパがあるかどうか確認していました。現地ではダン・フッカーが「ウチに来るか?」と気を遣ってくれたんですけど、さすがに申し訳ないから調べておいたスパに行って。そのスパがなかったら体重が落とせなかったです。

鈴木さんと同じで、僕もホテルに確認したら「バスタブはある」と言われていました。でも行ってみたらプールの横にある、ぬる~いお風呂で……。

鈴木 そこは感覚が違ってきますよね。我々は高い温度で半身浴がしたいんだけど。

――バスタブだけでなく現地の環境については、決して人任せではなく、チームとして確認する必要はあります。

鈴木 そう思います。以前は僕も現地の人に任せていたんですよ。でも最近は全て自分で確認するようにしています。

僕はホテル側が「ある」と言っているのを信用できず、自費で別のホテルを押さえていました。確実にバスタブがあることを確認できているホテルを。

鈴木 それも知識や経験が重要ですよね。海外で試合をする場合は、飛行機の時間も変わったりしますし。セコンドが海外慣れしていないと難しいと思う時はあります。今は選手の能力だけでなく、セコンドの能力も必要になりますよ。

――すでにUFCは何度も豪州で大会を開催しており、日本MMAもオセアニアと関わることも多くなるでしょう。文化の違いも含めて、とても貴重な情報です。

鈴木 どれだけ下調べができるか。現地に詳しい人がセコンド、あるいは知り合いにいるか。

――現地のマネージャーやブッキング担当が日本人でないかぎり、日本人選手に何が必要かを理解することは難しいかもしれない……というリスクは想定しておいたほうがいいですね。

鈴木 そうなると、ますます下調べやネットワークは重要になりますね。ウチは、UFCの時は米国在住の方にマネージメントをお願いしていました。最近では豪州に知り合いがいるのと、ALIVE三重支部にいた選手がベトナムに住んでいたりとか。すると通訳をやってくれるだけでなく、現地の文化も分かっていて。

とても重要なことですよね

鈴木 今はRTUもアジアが対象だけど、これからオセアニアも入ってくる。DWCSと同じワンマッチになることも考えられるでしょう。これから世界を目指す選手は、どんどんいろんなことを経験しておかないといけませんね。

韓国コリアンゾンビMMAとも交流がある林代表。日本はどこまで競い合えるか(C)ISHITSUNA MMA

RTUも初戦が上海PIで行われたあと、準決勝は北京の近くで開催されるという話もあったんです。そうなるとPIはない、ホテルで調整しないといけないから気をつけてね――とも言われていました。その準決勝も開催場所がラスベガスになって良かったとは思います。それこそUFCは米国全土で開催していて、州によって違うことも多いでしょうし、いろんなことを想定しておく必要はあります。

鈴木 リカバリー一つでも、僕たちが思っているものとは違います。まだまだ勉強し続けないといけないですね。

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