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【ONE FN24】ストロー級暫定王座決定戦、ジャレッド・ブルックス「僕はいくらでもバッドガイになる」

【写真】スクショを撮るとなると、ご覧の表情に。もうこれは条件反射か(笑)(C)MMAPLANET

3日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムでONE Fight Night24「Brooks vs Balart」が開催され、イベントタイトルにあるようにジャレッド・ブルックスが世界暫定ストロー級王座を賭けてグスタボ・バラルトと対戦する。
Text by Manabu Takashima

3月にジョシュア・パシオを頭から落とす反則負けで、ONE世界ストロー級のベルトを失ったブルックスだが、王者の負傷で暫定タイトル戦を戦う権利を得た。

今や日本のMMA界でも見慣れたトラッシュトークを、2016年のパンクラスの来日時の時点で強烈に繰り広げ、乱闘騒ぎを起こしていたブルックスは、今もその口撃を続けている。しかし、当時のように浅薄な意識で対戦相手を罵るのではなく、ストロー級ファイターの現状を鑑みて──彼は暴言を発信するようになっていた。


感覚として自分の方がパシオより優れたファイターだという手応えは感じられた

――ストロー級暫定王座決定戦で、グスタボ・バラルトと対戦します。今の調子はいかがですか。

「凄く良いよ。そして、もの凄く落ち着いている。前回の試合後、ONEがこんなに早くチャンスを与えてくれるとは期待もしていなかったから、凄くハッピーだ。幸運にもまたタイトル奪取への道が切り開かれたわけだからね。神は僕の味方をしてくれているよ」

──3月のタイトル防衛戦では、ジョシュア・パシオを頭部から落としてしまって反則負け。本能的に動いてしまったのでしょうか。

「いや、そんなことはないよ。

僕はルールを熟知している。決してルールを犯そうとしたわけじゃないし、我を忘れたり、本能の想うがままにスラムしたわけじゃない。いつも通りのクラッチで、頭から落ちることなんてないように技を仕掛けた。あのまま落として、バックを取って殴るつもりだった。

ただパシオがキムラを狙っていて、そこに力点があったから普通の角度でなく、錐もみ状態……回転が掛かってスピンするような形でキャンバスに落ちてしまった。

結果としてタイトルを失い、ベルトを家に持ち帰ることができなかった。気持ち的にも浮き沈みがあったよ。でも、これも神が与えた試練で、しっかりとこの事実に向き合い、謙虚に過ごしていかなければならない。人生は一度切りだ。こういう経験を活かして前に進むしかない。それこそが神が僕に与えてくれた──これからの僕が成すべきことなんだよ」

──勝利目前の猛攻のなかでの出来事、最初はジャレッドが秒殺。「凄い」と思って眺めていました。

「戦いは56秒しか行われなかったし、ジョシュアが何をしようとしていたのかも分からない。同時にジョシュアが自分の距離で戦えていなかったのも事実だし、ファイトはファイト。いつだって何が起こるか分からないけど、感覚として自分の方がパシオより優れたファイターだという手応えは感じられたよ。

今はジョシュアがヒザの負傷から回復し、また戦える日がくるのを待ちたい。とにかく彼が順調にケガから回復してほしいと願っている。100パーセントの状態になってから、また戦ってぶちのめすよう……お互いに全力で戦いたい」

試合中に頭突きがあったら、レフェリーに続けろと指示を出されても従わない

──その前にバラルトとの暫定王座決定戦での勝利が必要になってきますね。

「バラルトと戦うために、しっかりと準備をしてきた。僕が本当のチャンピオンであること、ONEのストロー級の頂点に立っているのはジャレッド・ブルックスだと証明したい」

──ではバラルトの印象を教えてもらえますか。

「他に例を見ない異質なファイターだよ。ボカン・マスンヤネのように背の低い相手と戦ってきたけど、グスタボはその比ではない。異次元レベルの背の低さだよ。それでいて倒されないレスリング技術を持っていて、ボクシングにも優れている。爆発力もあるよね。

如何に触るか。距離とタイミングがとても重要になるだろう。ただ、僕のグラップリングは彼が過去に戦ってきた相手とはレベルが違う。グラウンドの展開になると、彼はどう動いて良いのか分からなくなるだろう。グスタボを立たせないで、背中をつけて戦わせることができるか。僕にとっても、テストになるね。

まぁ、テイクダウンを奪っても立ち上がられるだろう──1Rや2Rは。でもこの試合は5Rある。3R以降、彼は自分がいつものように動けないことに気づくに違いない。向うも初回、そして最後の力を振り絞る5Rには僕をテイクダウンできるかもしれない。でも、5Rにテイクダウンを許してもなんのダメージにもならないよ。

スタンドでもKOパワーがあるわけじゃないし。仮に彼のパンチが効くようなら、僕は驚くことになるだろう。アレックス・シウバ、ヨースケ・サルタと元世界チャンピオンに勝っているし、油断をすることはないよ。でも、彼のMMAは僕のレベルに達していない」

──そのようななかで、バラルトの攻撃では何を警戒していますか。

「スーパーマンパンチ、あとはバイスクルキック……一気に飛び込んでくる技かな。でも彼より遠い距離で戦うことがでるし、レンジのコントロールに関してはパシオ戦を見てもらうと分かるように、相手の攻撃を受けないで自分の攻撃を仕掛けることができる。

グスタボは最初の3分間は打撃、そこからレスリングを使おうと距離を少し詰めてくる。まぁ、彼の動きは見えるだろうから、隙を見せれば一気に攻めていくつもりだ」

──バラルトの試合で忘れることができないファクターは、頭突きだと思います。

「あぁ、それを言いたかったのか(笑)。分かったよ、ハハハハ」

──狙っているとまでは言わないですが、当たっても構わない感じで突っ込んでいます。

そしてレフェリーも2度目ぐらいまでは注意をしますが、あまりにも頻繁にあるので試合の流れを止めたくないのか、スルーし始めるということが過去に見られました。大体、反則を考慮して戦わないといけないとなると、凄くアンフェアですよね。

(C)ONE

「100パーセント、合意するよ。

だからこそ、凄く注意している。サルタからダウンを奪う前に、明らかに頭突きでダメージを与えていた。タツミツ・ワダ、ヒロバ・ミノワと戦った時も酷いヘッドバットが見られた。それにミノワは何度、急所を蹴られた? それだけじゃない、ショーツだって掴んでいる。

まぁ、チョットずる賢いヤツだよ。僕としては試合前に、しっかりとレフェリーには釘をさしておくつもりだ。頭突き、ショーツ掴みをちゃんと見てくれよって。『俺が安全に戦えるよう、試合を裁いてくれ』と。

2016年にパンクラスで戦っている時から、僕を知ってくれている日本の人達は分かっているはずだ。試合で頭が当たったのは2019年12月のハルオ・オチ戦だけだよ。あの時は、二人とも踏み込んでクラッシュした。でもグスタボは頭を振って入って来るから。あれは分かってやっているよ(笑)」

──笑いごとではないかと(苦笑)。

「ハハハハ。確かに。まぁ、頭が当たる恐れがあるのも1Rと2Rだけだ。3Rになると、もうグスタボは疲れて、頭が当たるような距離まで詰めることはできなくなる。パンチも頭も、空を切るだけさ。しっかりと僕のボクシング、キックボクシング、ムエタイを見せる。打撃も成長しているし、レスリングも成長している。何よりグラウンドの攻撃力はもう以前とは比較にならない。

そういう意味ではマイキー(ムスメシ)には負けてしまったけど、彼とグラップリングと戦うことで僕の柔術は進歩できた。いやマイキー戦の敗北で、もっと柔術を見なおすようになった。負けて、そのままではいられないからね」

──穴はないと。

「MMAの試合で何が一番大切かといえば、相手にアダプトすること。グスタボはアニマルで、ビーストだ。そんな彼に対し、彼にはない劇薬を注入してやるよ(笑)。

そうそう、ヘッドバッドの話だったね……。試合中に頭突きがあったら、僕はレフェリーに試合を続けろと指示を出されても従わない。レフェリーには『ビデオをチェックしてくれ』と伝えるよ。ヤツが何をやっているか、簡単に分かる。それを見て注意、そして減点を与えるべきだったね」

──いわゆるリクエスト、そしてVARですね。

「その通りだ。本当にワダとの試合なんて、酷かったからね」

──ハイ。ところで3月の時点ではパシオを破って、米国大会でDJと戦うという青写真を描いていました。今はどのように考えていますか。

「まぁ、その機会は逸してしまった。それも神の匙加減だ。ジョシュアの傷が早く癒えて、タイトル戦線が再び動くのか。そうなればDJとの試合も、また考えることができるようになる。そうでないなら、僕個人としてはまだ戦っていない選手が、ストロー級で台頭してくるのを楽しみにしているよ」

ストロー級組み続けることで、ONEがどれだけ金銭的に損をしているのかをファイターは知るべきだ

──ジャレッド、凄く落ち着いていますね。それとも減量等で、疲れているということはありますか。

「オォ……ブラザー、そんな風に心配させて申し訳ない。今の僕は、それだけ心が穏やかなんだ」

──本当に一つ一つの言葉に重みがあります。日本のファンは、それがジャレッドの本当の姿だとは理解していますが、あのメチャクチャなトラッシュトークが懐かしいです。

「アハハハ。今でも──やっているよ。でも、あの頃と今の僕は違う。今でも、試合前に下らないことを話しているけど、凄く冷静なんだ。自分の言葉で磁場が狂うことがないように心掛けてきた。あの頃はトラッシュトークをすることで、内側に影響を与えてしまっていたからね。今は違う。ただし、今も昔も僕が試合前に下らないことを発信するのは、僕らの試合のことをより知ってもらうためだよ。

『一生懸命に練習してきた。対戦相手もそうだろう。ベストを尽くすよ』といっても、人々は関心を持たない。試合後なら、ちゃんとリスペクトした姿勢を持つ。でも、僕らのやることをもっと色々な人に知ってもらうには、そういうことが必要になるんだ。

それにダンスをするにはパートナーが必要んだけど、今のところ僕と踊ってくれるパートナーはいない。それこそ『ベストを尽くす』って言うぐらいで(苦笑)。でも、ストロー級のファイターが考えないといけないのは、ONEにあってもストロー級の注目度は低いということんだよ」

──!!

「ストロー級の試合はそれほど視聴者がいるわけでもない。放っておいて、ファンがストロー級の試合に注目してくれるなんてことはないんだよ。同時にストロー級とフライ級の試合を組み続けることで、ONEという組織がどれだけ金銭的に損をしているのかをファイターは知るべきだ。どれだけビジネスにできる機会を失っているのか。それはこの階級の選手達が、エンターテイメントという要素を考えていないからだ。

オリンピックのようにクールに競技を見せているだけじゃ、興味を持ってもらえない。オリンピックは4年に1度だから、あのやり方が通用するわけで。

僕らは継続的にファイトを皆に視てもらう必要がある。例えば僕のことを知っていても、対戦相手のことは知らない。それじゃあ、興味は半減してしまう。僕のバカな一言で、ファンは対戦相手のことを知ることになる。それこそが対戦相手がどれだけ優れたアスリートなのかを知ってもらえる第一歩だ。

ファンにチケットを買ってもらって、あるいは試合の中継を視てもらって……楽しんでもらうには、戦っている人間のストーリーを理解してもらわなければならない。そういう意味で、話題になることは必要で。

僕の仕事は試合に出て、勝つことだ。それはもう当たり前のことだよ。同時にストロー級への関心が高まることをやっていくのも、僕の役目だと思っている。2016年にパンクラスで、ケント・カンベを挑発しまくった時から、そうやってきた。日本でもやってきたんだ。

誰もが僕のようなバカな話、トラッシュトークをする必要はない。重要なことは、もう少し自分たちのやっていることを理解してもらうために動くということ。何も僕のやり方を真似しろってわけじゃなくて、僕が何をしようとしているのを理解してもらえると嬉しい。リスクを回避していては、何も起きない。何か事態に変化を起こそうと動くと、良いことだけでなく悪い事態に陥ることだってある。だからって、何もしなくても良いのかい?

指をくわえて人任せてしていると失敗はないかもしれない。でも、チャンスだって失っているんだ。世界チャンピオンだと胸を張っても、5000人のフォロワーしかいなくてどうする? それでどうやって、試合に関心を持ってもらえるっていうんだい。米国の人々が、SNSを通して試合やONEを知ってくれるというのなら、僕はいくらでもバッドガイになるよ」

■放送予定
8月3日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

■ ONE FN24対戦カード

<ONE暫定世界ストロー級(※56.7キロ)王座決定戦/5分5R>
ジャレッド・ブルックス(米国)
グスタボ・バラルト(キューバ)

<ONEサブミッショングラップリング世界女子アトム級(※52.2キロ)選手権試合/10分1R>
[王者]ダニエル・ケリー(米国)
[挑戦者]マイッサ・バストス(ブラジル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
フィリッピ・ロボ(ブラジル)
ナビル・アナン(アルジェリア)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
デッドゥアンレック・ティーデ99(タイ)
ナックロップ・フェアテックス(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャミル・ガサノフ(ロシア)
アーロン・カナルテ(エクアドル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ドミトリー・コフトゥン(ロシア)
フェラーリ・フェアテックス(タイ)

<キック・フライ級/3分3R>
内藤大樹(日本)
エリアス・マムーディ(アルジェリア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
山北渓人(日本)
猿田洋祐(日本)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ランボーレック・チョーアッジャラブーン(タイ)
クレイグ・コークレイ(アイルランド)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
エンフオルギル・バートルフー(モンゴル)
カルロ・ブーミナアン(フィリピン)

<ムエタイ128ポンド契約/3分3R>
アリーフ・ソー・デチャパン(ロシア)
ザガリア・ジャマリ(モロッコ)

<ムエタイ女子アトム級/3分3R>
ユー・ヨーペイ(香港)
エイミー・ピルニー(英国)

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