【Combate Global】「痕跡を残し、名を刻む」。芦田崇宏がメキシコのバチバチファイター=ロメロと対戦
【写真】この状況が芦田の真価を発揮させる状況を創り出しているのであれば、嬉しい限りだ (C)MMAPLANET
27日(土・現地時間)、フロリダ州マイアミのユニヴィジョン・スタジオで開催されるCombate Global「Mexico vs Japan 2」に芦田崇宏が出場し、ロベルト・ロメロと対戦する。
Text by Manabu Takashima
RIZINで摩嶋一整、鈴木博昭に敗れ、この間のDEEPでの戦いが流れるなど厳しい時間を過ごす芦田に、世界で最も殴り合うMMA大会=Combateからオファーがあった。当初の相手はキャリア10勝0敗のラミロ・ヒメネスだったが、渡米前日に対戦相手が変更され、コーナーマンとして帯同した武田光司はニューアーク空港で足止めを食い──芦田は1人でマイアミに降り立った。
それでも「笑って過ごした」という芦田は、まさに猛牛というべきバチバチの殴り合い上等のメキシカンを相手に完全に腹が決まっていた。
──今回、Combateで試合をすることになった芦田選手ですが、実は対戦相手のラミロ・ヒメネスのインタビューを申し込んでいたら、「ロベルト・ロメロに代わったから1日待ってくれ」という連絡が今週の火曜日にありました(※取材に24日に行われた)。
「僕も聞いたのは、日本を出る直前でした(苦笑)。正直をいえば、前の相手の方が高いモチベーションを持てていたというのはあります。でも色々と準備をしてきたし、相手のスタイルとか変わってしまうとは思いますけど、そこはこれまでの経験を活かしてしっかりと戦いたいです」
──ヒメネス戦のオファー自体は、いつ頃にあったのでしょか。
「ちょうど1カ月ほど前ですね。他にも候補がいたようですが、話が来た時点で減量も始めました」
──6月の終わりの時点でオファーを受けたということは7月、8月と試合の予定がなかったということですか。
「ハイ、僕のなかで勝手にですけど8月31日のDEEPお台場の大会に出たいという気持ちではいました。ちょうど誕生日の次の日で、屋外でやるって珍しいじゃないですか(笑)。ただ、自分の知り合いも外でやるなら、応援に行けるかどうか分からないって言っていましたね(笑)」
──ハハハハハ。真面目な話、あの大会に出ることを考えていたということは、このところの試合結果を踏まえて──ということでしょうか。
「勿論、そうです。弁えて試合をやっていきたいので。今、RIZINということは口にしたくないので。ちゃんと這い上がってからでないと」
──去年の春にFight & Life誌でフェザー級特集をして、インタビューはおろか名前と写真の紹介ぐらいのページでも芦田選手に触れなかった。あの時、SNSで本人から怒りの反応がありました。
「あっ、あの時ですね(笑)。発奮材料になりました。もう1回、取材をしてもらえるようにならないといけないって。そうじゃないとやっていけねぇぞって思うぐらい『何クソ』ってなりました」
──逆にそう思ってもらえるのは有難いことです。そうですね……今回はただの海外での試合ではない。Combateで10勝0敗の選手と戦うということで芦田選手に取材をさせてもらおうと思った次第で。当時は、勝ってからでないと取材はできないという気持ちでした。ただし、2月に鈴木博昭選手に敗れた。あの試合は芦田選手のキャリアを考えるうえでも、非常に痛い敗北だったかと。
「本当にその通りです。あの試合は勝つべくして勝たないといけない試合でした。それは師匠の宮田(和幸)先生とも話をしました。これまでの負け以上に、重く受け止めた敗北でしたね。
完全に評価が落ちる負けですし、年齢もそう。ちゃんと順番を踏まえて上の舞台で戦いたい人間なので、DEEPのベルトを獲る前は基本的にRIZINに出たいということは口にせずに戦っていました。目標はそこであっても。
なので鈴木戦の負け、試合内容を考えると34歳になってもう一度這い上がることができるのか、と。その部分に関して、自分と向き合ってきました。ただ所(英男)さんとか金原(正徳)さんが戦い続けていて、僕の年齢で引退を考えること自体が甘いんじゃないか、とか。それでもファイターとしての限界なのかとか、凄く考えちゃいましたね」
──BRAVEは若くてピチピチの選手が台頭しているので、余計に年齢を考えるということはなかったですか。
「本当に勢いがあります。ただスケジュール上、三郷のプロ練習は参加できていなくて、今の若い子たちとは年に数回胸を合わせるぐらいんです」
──奇しくも、今の若い子という発言がありました。
「そうですね(苦笑)。たまにしか会わないので、その成長の度合いももの凄く感じられます。野村(駿太)もそうだし、木村(柊也)も南(友之輔)もそう。(黒井)海成も勢いよく来ています。アイツらに負けたくないという気持ちも、当然ありました。今でもそうですけど」
──そういうなかでCombateで戦わないかいという話があったと。
「僕のキャリアで今後、こういうチャンスが巡って来るとは限らないです。ハッキリ言って、現役生活は終盤に入っていると思うので。だから、この機会は絶対に逃したくなかったです。グアム、シンガポール、ブラジル、中国で試合をしたことはあるのですが、北米で試合をしことがなかったので。
しかもCombateはUFCに選手を送り出している大会ですし。僕はいわゆる格闘氷河期と呼ばれるRIZINがなかった時代に、皆がUFCを目指す中で戦ってきました。だから北米で試合をするということには特別な思い入れがあります。そういう意味でも、この試合はチャンスです。
海外にも国内にも強い選手がたくさんいるなかで、このチャンスが来た。ラストチャンスだというぐらいの気持ちでオファーを受けました」
──そんなマイアミへの遠征ですが、飛行機の旅でトラブルがあったそうですね。
「そうなんですよ、セコンドで武田(光司)と来きていたのですが、まずニューアーク空港からマイアミ行きの飛行機の手配ができていなかったんです」
──……えっ!!
「最終的には今回の試合の世話をしてくれたシュウ・ヒラタさんがチケットを抑えてくれたのですが、パスポート・コントロールが凄い人で混雑していて。僕は乗り継ぎ便に乗れたけど、武田は間に合わなかった」
──それはパスポートの写真と違うからじゃないですか(笑)。
「アハハハ。顔が違いますからね。前もそれで止められたそうですよ(笑)。結果マイアミに来て、まだ僕は1人です。昨日の夜も、武田と動いて体重の調整をする予定だったのですが、それでもできず1人でロードワークをしていました」
──なんとも。
「でも、それが海外ですよね。笑って過ごしていました」
──それぐらいでないと、海外では戦えないです。ところで新しい相手のロベルト・ロメロも7勝3敗1分というレコードの持ち主で、試合を見る限り相当なブルファイターです。
「メキシコ人だからなのか、心が強くてタフな戦い方をしますね。ガードを上げて『はじめの一歩』みたいにゴリゴリ打ち合うなかで、組んでもくる。凄くしんどそうな戦い方をするなって思います。暴れ狂ったような戦い方をしてくるので、日本人選手と戦い方とは違いますね」
──とはいえ、芦田選手としては得意な部分で戦える相手ではないかと。
「その通りです。これまで相手の弱点をつくMMAの競技特性を意識し過ぎていたようで、僕の一番の持ち味であるボクシングをほとんど出さなくなっていました。今回のテーマは真っ向勝負、相手は代わってもそこは噛み合うと思います。気持ちの入った試合を見てもらって、感じ取って欲しいです」
──日本人だけでなく韓国人選手もそうですが、手応えのあるパンチを入れても、逆に勢いをつけて反撃してくる選手に打ち負けることがままあります。
「そこはボクシングの経験があるので。ボクサーって、そんなヤツばかりなんですよ(笑)。いくら殴っても倒れない相手は過去にもいましたし、その経験を生かして戦います。何より、日本人ボクサーは技術力が高いですからね。
技術力といえば、先輩の井岡(一翔)さんと普段から接させてもらっていて、日本人の強さはそこだと凄く感じています。今回の試合に向けて、そういうところで準備をしてきたので、それを見せたいです。荒々しいメキシコのファイターに吞まれないで、技術力で勝つ。魅せる試合をしたいです」
──三郷でのプロ練習は出らないと言われていましたが、Combate出場に向けてはどのような準備を?
「BRAVE世田谷で海成と練習をして、それと久保(優太)さんが良く来てくれていました。試合前の久保さんに本当に申し訳なかったのですが、バンバン質問をさせてもらって。久保さんに僕の長所と短所を洗い出してもらい、あとは武田と調整をしてきました。
それと昔のようにHELAO TOP TEAMでKrushで戦っている川島康佑と週に2回、互いに倒すつもりで本当のガチンコ練習をやってきました。川島との練習で緊張感を創って、考えながら1日、1日と練習をしてきました」
──では最後にこの試合に向けての想いをお願いします。
「この試合に賭けています。勝ち負けは大事なのですが、選手としての存在意義を見せることができるようCombateに痕跡を残し、なおかつ北米MMAに名を刻みたいです。僕の覚悟を皆に見て欲しいと思っています」
■視聴方法(予定)
7月28日(日・日本時間)、
午前9時30分~ABEMA格闘チャンネル
■Combate Global 対戦カード
<フェザー級/5分3R>
ロベルト・ロメロ(メキシコ)
芦田崇宏(日本)
<ウェルター級/5分3R>
マルコス・ヨレーダ(メキシコ)
山田聖真(日本)
<女子フライ級/5分3R>
レヒーナ・タリン(メキシコ)
ギセラ・ルナ(アルゼンチン)
<バンタム級/5分3R>
イズマエル・サモラ(メキシコ)
フアン・プエルタ(米国)