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【UFC ESPN58】日本のK-1からオクタゴンへ、ヨセフィン・ヌットソン「K-1を生かしたMMA」

【写真】日本格闘技LOVEのヌットソン(C)MMAPLANET

15日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC on ESPN58「Perez vs Taira」でヨセフィン・ヌットソンが、ジュリア・ポラストリとオクタゴン2戦目を戦う。
Text by Manabu Takashima

K-1、Krushと4度に渡って日本で試合経験があるヌットソンは、所属ジムで練習するMMAファイターを見て「いつの日かMMAを戦ってみたい」という想いを抱いていた。そしてコロナ・パンデミックが起こり、ファイトがなくなった日常にあった彼女はアマチュアMMAを戦う機会に跳びついた。

その2年後、コンテンダーシリーズで勝利も契約を逃した彼女だったが1カ月に世界の最高峰に辿り着いた。打撃に関しては既にトップレベル──そんなヌットソンはMMAにフィットしたファイトIQの持ち主だった。


――UFCでの2試合目を今週末に控えています。今の気持ちを教えていただけますか。

「土曜日のUFC第2戦目に向けて、凄くワクワクしているわ。長い期間、今回の戦いの準備をしてきたので。もう、ずっとジムに缶詰め状態で、ようやく外に出ることができたから(笑)。やっと、自分のやりたいことができる。そんな気分ね」

──押忍。ヨセフィンは日本で4度キックの試合をしています。K-1で3試合、Krushで1試合を戦っています。日本にはどのような印象を持っていますか。

「いつも言っているけど、本当に日本のことが大好きで。K-1のような大きな舞台で戦ってきて、日本に行くのはいつも試合の時だったけど、いつもファンが温かく接してくれたことが忘れようはない思い出ね。どこにでもあることでなく──本当にファンがファイターに優しくて、日本のファンの前で試合をすることが大好きだった。日本では人生で最高の日々を送ることができたわ。

今の私の夢はUFC日本大会が開かれ、今度はUFCファイターとして日本のファンに再会することなの」

──この言葉が嬉しい限りです。ところで2019年12月にK-1でKANA選手と対戦したのを最後にキックボクシングの試合を戦っていません。いつ頃からMMAに転向しようと考えていたのですか。

「K-1で戦っている頃から、所属するジムに練習に行くと横でMMAのトレーニングが行われていて。アレクサンダー・グスタフソン、カムザット・チマエフ、イリル・ラティフィ達がMMAの打撃練習をしていたの。彼らのトレーニングする姿を見ていて、いつかMMAに挑戦したいなって思うようになって。

そんな時にコロナ・パンデミックが始まり、試合機会が全くのゼロになったでしょ? そうしたらBRAVE CFからMMAファイト、アマチュアマッチのオファーがあって。もう何も考えることなく、そのチャンスに跳びついたわ。MMAとかキックとかでなく、ファイトの機会を逃したくなかったから」

2020年にBrave CFでアマチュアMMAを経験し、翌年プロデビュー (C)BRAVE CF

──BRAVE CFはUFC、Titan FC、KSW、LFAや日本のプロモーションと並び、いち早く活動を再開。2020年の8月にはストックホルムで4週連続のイベントを開催しました。ロックダウンが世界中であったなか、MMAを戦う準備はできていたのですか。

「あの時は大変だったわ。ただ、ファイティングチームで屋外に出て。1日に3時間、もしくはそれ以上のトレーニングをしていたの。1度の練習にテクニックからコンディショニングまで詰め込むから、その練習時間が長くて。

でも、それが許されたのもスウェーデン政府が緩和策をしていたからだと思う。それでも全てのジムは閉鎖されていたし、ジムで練習しようものならポリスに止められていたはず。ただ、外で練習することはそれほど問題視はされていなかったわ。正直、K-1でまた戦いたいと思っていたけど、パンデミックはアジアを直撃していたし、その機会が訪れることはなかったの」

──2022年6月にはRoad to UFCのワンマッチに出場しました。あの時はもうMMAを戦おうと決めていたのですか。

「そうね、シンガポールで試合をした時はもうMMAで戦っていくことを決めていた。UFCファイターになるって。だからRoad to UFCでの試合は、その一歩だしチャンスを掴むために全てを出し尽くそうと思って戦ったわ」

RTUのワンマッチでは、韓国のソ・イェダムを判定で下した(C)MMAPLANET

──実はBRAVE CFのアマチュア戦は配信で、Road to UFCシンガポール大会は現場で取材もしていました。ただ私はMMAの記者でキックボクシングのことを全然知らなくて、ヨセフィンが日本のK-1で戦っていることも実は知らなかったです。

「アハハハハ、全然大丈夫よ」

──ただ昨年8月のコンテンダーシリーズの時にK-1プロデューサーから、メディアの仕事に戻ってきた中村拓己氏からヨセフィンに注目してほしいと教えてもらったのです。

「なんて素敵な話なの。その話を今回の試合前に聞けて、本当に嬉しい。ハッピーな気持ちになったわ」

──コンテンダーシリーズから約1カ月後にUFCデビュー。当然のように立ち技では既にアドバンテージを持っていますが、グラウンドでも見事にBJJの技術を駆使していました。

「ありがとう!! グラップリングの練習には相当に時間を使ってきたわ。未知の領域だったから。レスリングもそうね。壁レスも。MMAでやって行こうと決めた時、特に怖いとは思わなかった。でも覚悟は必要だったわ。本当に多くの知らない技術を吸収する必要があるし、練習時間はいくらあっても足らないって感じていたから。

何より、再び自分がビギナーになることを受け入れないといけなかった。それってちょっと、気持ちが落ちるんだけど。キックの実績でMMAを戦っていくことはできない。だから懸命にレスリングとグラップリングに取り組んだの。もちろん、MMAの打撃もね」

──そこです。打撃もK-1とMMAでは距離もリズムも違います

「その通りね。別モノだった。K-1ファイターは前へのプレッシャーの強さが必要で、テクニックにも厚みを持たせないといけない。私は可能な限り、その技の厚みをMMAでも生かしたいと考えていて。MMAでもK-1ほどじゃないけど、近い距離でパンチ、キック、ヒザ、そしてエルボーを使う局面がある。あの小さなMMAグローブで、そこを戦うわけで。でも近い距離は絶対に私の世界だから。

MMAにはいくらでも戦いのバリエーションがある。なら、私だから可能になるK-1を生かしたMMAも存在しているはずで。同時にもっと距離を取った戦い方があって、その位置取りは限りなく存在しているわ」

──それでもヨセフィンの立ち技でのアドバンテージは絶対かと。レスリングにはまだ課題があっても、首相撲をよく使っていますね。

「逆にコーチから首相撲を使い過ぎるなって怒られるの。私自身がクリンチが好きだから、すぐに組んでしまう……それも必要のないところで。打撃をもっと使えるのにとか、色々と考えるわ。それにレスリングが強い相手に、首相撲を使う時間は最小限にしないといけないし。やっぱり、近づきたい相手を自分から迎え入れるのは良くない。打撃で突き放さないと。

結局のところ、どういう選手と向き合っているのか。それでやることが大きく違ってくる。それがMMAだと思う。それでも、ムエタイから使っている首相撲は私の武器になるのは絶対ね」

──ヨセフィンのファイトIQの高さは、絶対的にMMAにフィットしていますね。最高のキックボクサーでも、その考えがないと打撃は無力化してしまいます。

「ありがとう(笑)。凄く嬉しいわ。私はいつだってK-1とムエタイ、私のルーツをオクタゴンで見せたいと思っているから。それは、誰と戦った時も変わらないわ」

──つまりは次戦、ジュリア・ポラストリの戦いでも?

「彼女はグラップリングもデキる、ストライカー。でも打撃を使いたがる傾向にある。ブラジルの選手は本当に寝技が強いけど、彼女はストライカーだわ。打撃戦を好んでいる。その立ち技もあまりフットワークを使わないで、上半身は動いているけど、下半身はフラット。ボクシングね。それは良い面もあるし、悪い面もあるわ」

──前足が目の前にありますね。

「そこが狙いだから、これ以上は聞かないで(笑)」

──ハハハハ。では、どのようなファイトをしたいと考えていますか。

「ファンの皆が喜んでくれるK-1スタイルを見せるには、最適の相手。結果、彼女はテイクダウンを仕掛けてくる。その瞬間、きっと驚くことになるわ。グラウンドだって十分に対応できるけど、できるだけ立って戦う。皆に喜んでもらうファイトを見せたいから」

──では最後に日本のMMAファン、そしてキックボクシングファンに一言お願いします。

「今の私の戦いをフォローしてくれている全てのK-1ファンの皆、心から感謝している。日本でUFCが開催された際には、皆に会場で応援してほしい。また、皆に日本で会いたい。その日が来ることを願っているわ」

■放送予定
6月16日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC Fight Pass
午前7時45分~U-NEXT

■UFC ESPN57対戦カード

<フライ級/5分5R>
アレックス・ペレス(米国)
平良達郎(日本)

<フェザー級/5分3R>
ルーカス・アルメイダ(ブラジル)
ティモシー・クアンバ(米国)

<バンタム級/5分3R>
マイルス・ジョンズ(米国)
ドゥグラス・アンドレージ(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
アス・アルマバエフ(カザフスタン)
ホゼ・ジョンソン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
アダム・ヒューギット(米国)
ジョシュ・クィンラン(米国)

<フライ級/5分3R>
タジル・ウランベコフ(ロシア)
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)

<フライ級/5分3R>
ネイサン・メネス(米国)
ジミー・フリック(米国)

<バンタム級/5分3R>
ギャレット・アームフィールド(米国)
ブレディ・ヒースタンド(米国)

<女子フライ級/5分3R>
カーリー・ジュディシー(米国)
ガブリエラ・フェルナンジス(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
ジェカ・サラギ(インドネシア)
ウェスティン・ウィルソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
シャイラン・ヌルダンベク(中国)
メルキザエル・コスタ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジュリア・ポラストリ(ブラジル)
ヨセフィン・ヌットソン(スウェーデン)

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