【ADCC Asia & Oceania Trial】三刀流、須藤拓真「この経験を自分の回りにフィードバックしたい」
【写真】淡々といつも通りの須藤──のようで、やはり期するモノは感じられる??!!(C)TAKUMI NAKAMURA
25日(土・現地時間)にシンガポールはジュロンイースト・スポーツセンターで開催されるADCCアジア&オセニア予選に出場する須藤拓真。
text by Takumi Nakamura。
MMAとグラップリングを並行して戦い、今年6月Level-G PRO GRAPPLINGの初代ライト級王座決定トーナメントでは全試合一本勝ちで優勝を果たした。MMA・柔術・グラップリングもすべて同じ「組み技」という大きな枠で捉え、ルールに左右されず自分を貫く須藤はADCC予選でどんな戦いを見せるのか。そのファイトスタイルのルールや憧れの今成戦についても訊いた。
――シンガポール出発前のインタビューありがとうございます(※取材日は20日)今回は海外での試合となりますが調整などいかがですか。
「特に減量もないですし、いつも通り練習しているという感じです。MMAの試合もそうなんですけど、試合があるから練習の強度を上げることもないので、それと同じ感覚ですね」
――須藤選手はMMAとグラップリングの試合を並行して出場していますが、ADCC予選には出場したいという意向があったのですか。
「グラップリングを中心にしている選手として、一番挑戦しなければいけない大会だと思っていたので、いつか出たいと思っていたんです。ちょうどそのタイミングが今かなと思って、出場を決めました」
――先ほどは試合の有無に関わらず練習の強度は変えないということでしたが、練習メニューについてはいかがでしょうか。
「MMA・グラップリング、どの試合に出るからと言って練習内容が変わることはないですし、多少ルールやポイントを意識してやる程度ですね。基本の戦い方は変えないけど、考え方を変えるというイメージですね。ADCCは引き込みにマイナスポイントがあるからと言って、レスリングをバリバリ練習するかと言ったらそうでもないですし、これをやったらポイントが入るという部分を考えるくらいです」
――MMAとグラップリング、どちらか一方に集中するとは考えていないですか。
「それは考えてないですね。僕のなかでMMA、グラップリング、柔術をやることで、それぞれの視点から他の競技を見ることができるんですよ。例えば柔術は道衣を着たり制限が多いですが、グラップリングにはそれがない。MMAは打撃があるから寝技やグラップリングの攻防に時間をかけることができない……そうやって違う視点で競技を見ることが出来るし、僕は色んな競技をやった方が強くなれると思っているんで、そのスタンスは変えないですね」
――出場する試合やルールで練習内容を変えない、試合の有無にかかわらず練習の強度を変えないというのはそこにつながるわけですね。試合に向けて他の出場選手の情報はどのくらい入っていますか。
「全くチェックしてないです!」
――……全く、ですか。
「はい。MMAの試合で対戦相手が決まっていても、相手の映像を見ないぐらいなので、グラップリングの試合でトーナメントになるとなおさらです(笑)」
――分かりました(笑)。須藤選手は対戦相手より自分にベクトルが向けるタイプのようですね。
「意識を向けているとまでは言わないですけど、僕はそっちかなと思います」
――自分にベクトルを向けるという部分で今の足関節メインのファイトスタイルはどのようにできあがったのですか。
「僕の場合は格闘技を始めたきっかけが今成(正和)さんなんで『ああいう戦い方をやろう!』と思ってやっているわけでもないんですよね。人間、意識しないで好きなものに似て行っちゃうのかなと思います(笑)」
――刷り込みのようなものですね(笑)。
「競技問わず満遍なく格闘技は見ていたタイプで、魔裟斗さんや山本“KID”徳郁さんの試合も見ていたんですけど、一番ビビッと来たのが今成さんでした」
――とはいえ足関節そのものはどのように覚えたのですか。なかなか教えられる人間も少ない技術だと思うのですが。
「誰かにジムで足関節を特別教わったことはなくて、海外のグラップリングの映像を見て勉強した部分はありますね。クレイグ・ジョーンズだったり、ラクラン・ジャイルスだったり…そういうところから学びました」
――今年6月Level-G PRO GRAPPLINGでは初代ライト級王座決定トーナメントで優勝したあと、今成選手への対戦アピールもありました。やはり今成選手とは戦いたいですか。
「具体的な話には発展していないのですが、やっぱり今成さんとは戦ってみたいですね。今成さんとやれるんだったらルールは何でもいいですね。というか僕と今成さんだったら、どのルールでもお互いやることは同じだと思うので(笑)」
――今成選手のようなサブミッション特化型のスタイルを自分が引き継いでいきたいという想いはありますか。
「う~ん……そこまではないですね(笑)。気づいたらこのスタイルになっているだけなので、これからもそんな感じでいきます」
――今回のADCC予選出場は大きなチャレンジだと思いますが、結果も含めてどのような大会にしたいですか。
「ADCCへのチャレンジもそうなんですけど、日本一になりたいという想いがあって出場を決めた部分もあるんですよ。色んな大会があるなかでADCC予選で結果を残せば、そう見てもらえるんじゃないかと。極端な話、僕は試合もやりたくてやっているわけじゃなくて、むしろ緊張もするから出たくないんです。練習は好きだけど試合は苦手、みたいな。でも試合で勝つとチヤホヤされるじゃないですか(笑)」
――まさかそんな動機だったとは(笑)。
「練習して強くなるのもいいんですけど、試合で勝ったり優勝したりすると、周りが『あの選手強いらしいよ』って見てくれるじゃないですか。あれがいいんですよね(笑)」
――肩書やタイトルは自分の強さを形として残すものですからね。
「もちろん自分がどれだけできるかを試すことも目的ですし、今まで国内でしか試合をしなかったので海外の選手と肌を合わせることも楽しみです」
――ADCC予選を楽しみにしているMMA・グラップリング両方のファンに向けてメッセージをいただけますか。
「アジア・オセアニアで自分の強さを誇示して、この経験を自分の周りにフィードバックしたいですね。日本のグラップリングを発展させる…というのは大げさなんですけど、今以上に盛り上がってほしいですね。周りがみんな強くなって日本全体がレベルアップすれば、自分も強い人と練習する機会が増えると思うので」
――いい意味で気負わずに須藤選手らしい試合を期待しています。
「ありがとうございます。いつもこんな感じですが、頑張ってきます(笑)」