【Special】WWEのスター=シェイナ・ベイズラーが語る──彼女の頃の北米女子MMAと今
【写真】この話を訊いたら、シェイナのプロレスが見たくなりました(C)MMAPLANET
17日(金)にWWE所属のプロレスラー中邑真輔とシェイナ・ベイズラーが、東京都港区のCARPE DIEM三田で石黒遙希&風間敏臣の両者と柔術の公開練習を行った。
Text by Manabu Takashima
共同囲み取材を終え、ベイズラーに今の女子MMAの発展について尋ねると、パイオニア世代ならではといえる言葉が訊かれた。
MMAでは今の女子選手のようにスポットが当たることはなかったかもしれないが、あの日々を真剣に生き続けた結果としてWWEスーパースターの地位がある。
ある意味、当時の努力が結実した彼女だからこそ語ることができる──リッチな話をお届けしたい。
──TUFシーズン18のエピソード04。ロクサン・モダフェリの敗北後にチームが違ったシェイナと彼女が涙で抱き合うシーンは、自分のMMA記者キャリアのなかでもっと美しいシーンの一つです。あの少し前から女子MMAは、米国で爆発的に発展しました。
「女子MMAの普及は、凄く見ていて嬉しいわ。私やロクサン、そしてテラ・ラロサ、アマンダ・バッグナーの時代、MMAを続けていてもUFCで戦うなんて夢を見ることはできなかった。ただ、MMAを戦うことが好きだったから。MMA愛だけで戦っていて、ね。そしてベストを目指していたの。
TUFで戦う機会が巡って来て、皆がトライアウトに挑戦したわ。でもハウスに残れたオールドスクール・ファイターは、私とロクサンだけだった。私はチーム・ラウジーで、彼女はチーム・テイトだったけど、私たちはお互いが何をやってきていたのか──全てを知っていたから。
ロクサンが試合に負けて……あの時点で、私たちの未来がどうなるかなんて分かっていなかった。『ここまで努力してきたのに、何も成し遂げることはできなかったんだ』って2人とも思っていて。あのフィーリングをあの場で共有できたのは、私とロクサンだけだった。
今、女子MMAを見ていると本当に若い頃からしっかりとトレーニングを積んで、UFCを目指すという確かな夢を持つことができる。人生を賭けて挑戦できる、確固たる理由が存在しているの。そういう状況になったことは、本当に嬉しいわ。
私達の頃は、目標とする選手もいなかった。憧れの存在も。対戦相手と競い合うだけで。今は小さな頃からアマンダ・ヌネスに代表されるようなロールモデルが女子MMA界に存在していて。そういう存在を追いかけて成長できる。ホントに良い時代を迎えることができて良かったわ」
──シェイナとロクサン、あの時は両者がUFCで戦うことになるとは思っていなかったので、ここまでやってきた世代の選手が、まさにロンダ・ラウジーやミーシャ・テイトという存在があって、そこにチャンスがあるからMMAを戦うようになった世代に敗れた。非常に感傷的になるTUFでした。
「あの時は、自分達が女子MMAの普及のためにやってきた努力なんて、誰にも認められないんだって思ってしまったわ。凄く、タフな瞬間だった。本当に辛かったわ。新しい世代の女子ファイターたちが有名になって、誰も私たちのことなんて覚えていない……心が痛かった。
そうそう実は2カ月ほど前にタラ・ロサが結婚して、私とロクサンも式に参列したの」
──おぉ、素晴らしいです。
「3人であの頃を振り返り、凄く懐かしかったわ。『私達の時代って試合の機会があれば絶対に跳びついて戦っていたわね』って話して。誰が相手かなんて、私達は気にもしていなかった。誰とでも戦った。
今の子たちって『準備が整っていない』とか言って試合を断ることができるし、対戦相手も選ぶことができる。私達とは種類の違う貪欲さを持っているのよね。今の女子MMAの子達は、机の上に色んなものが並んでいて。それで色々悩んで、苦労している。
でも私たちの頃は机の下に散らかったスクラップから、何かを創ろうとしていたの。MMAを愛していたから。だから次元が違うよねって、ロクサンとタラと話していたの(笑)」