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【RIZIN LANDMARK06】バンタム回帰=ヤマニハ戦へ。所英男「もう所英男の試合はいいよと思われたくない」

【写真】ドロドロの試合に持ち込む姿が見てみたい(C)TAKUMI NAKAMURA

10月1日(日)に名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されるRIZIN LANDMARK 06で所英男がヒロ・ヤマニハと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

昨年はフライ級に階級を下げ、神龍誠とジョン・ドッドソンと戦った所。神龍戦では自分の可能性を感じた一方、ドッドソン戦ではUFCトップランカーの強さを痛感させられた。盟友・金原正徳の後押しで決まったバンタム級での再起戦。所からは「プライドを持って戦う」、「ナメられたくない」という言葉が聞かれた。


――所選手、お久しぶりです。よろしくお願いします。今日は所選手が主宰するリバーサルジム武蔵小杉 所プラスでの取材になりました(※取材は13日に行われた)。ジムをオープンして13年目になるとお聞きしました。

「はい。昔は出稽古ばっかりだったんですけど、今はジムにプロ選手が4人いて、プロ志望も入れて5人いるんですよ。なので僕も交じってジムでプロ練習の時間を設けるようになりました」

――もともとプロを育成するつもりはなかったですよね。

「はい。萩原一貴という選手がプロ第1号で、最初は一般会員さんとして練習に来てたんですよ。でもすごく熱心に毎日ジムに来るので『もしかしたらプロを目指してる?』と聞いたら『当たり前じゃないですか!』と言われて(笑)。きっと本人もプロ志望でジムに入ったわけじゃなくて、やっていくうちにそういう思考になったと思うんですけどね」

――まさに一般会員から格闘技にのめりこんでプロになった所選手と同じじゃないですか。

「ほんとにそうですね。それで萩原くんがプロになったのを見てプロを目指す選手が増えて…ですね」

――ジムの設立当初は自分の生徒と一緒に練習することになるとは想像もしていなかったのではないですか。

「全く想像してないですね。そもそも僕が選手に指導することすら怪しかったし、選手を育てるのは大変だと思っていたので、そんなつもりは一切なかったです(笑)。でもいざ自分と練習できる選手たちが育ってくると、すごく嬉しいですね」

――それこそ所選手がマット運動やエビから教えた選手たちと練習しているわけですよね。

「ああ…そう言われればそうですね。本当に色んな人たちと練習できて恵まれています」

――自分のジムの選手たちと練習することでどのようなプラスがありますか。

「ジムのプロ練に自分が混ざることで、みんなの練習になったらいいなと思うし、逆にジムの選手たちが個別にキックボクシングを教わりに行ったり、レスリングの練習をしに行ったりしてるんですよ。そこから自分が知らないことを教えてもらうこともあります」

――では、所選手の出稽古先はどちらになるのですか。

「ロータス世田谷のグラップリング、野木(丈司)さんのボクシングと走り込みが主です。自分のジムの練習も増えましたけど、出稽古先は変わらないですね」

――出稽古先も特に新しいところを探そうということはなかったですか。

「今までは試合前に野木さんにお願いして、ボクシングのスパーをやらせてもらってたんですけど、野木さんの門下生がみんな世界チャンピオンや世界ランカーになってしまって、同じ場所で練習するのもおこがましくて(苦笑)。それで今回は小見川道大さんにスパーをお願いしたら快くOKしていただいて、小見川さんのところでスパーをお願いしています」

――いい意味で練習メンバーも固定されているようですね。

「10年以上メンバーが変わってないかもしれないです。公開練習で金原(正徳)さんとも話したんですけど、もう知り合って20年近くになるんですよ。よくみんな辞めずに続けているなと思います(笑)」

――SNSでは桜庭和志選手が所プラスで練習している姿を見かけるのですが、どういった経緯で桜庭選手と練習するようになったのですか。

「ちょうど所プラスが桜庭さんのアクセスしやすい場所らしくて、クインテットの試合が決まる前くらいから、練習に来てもらうようになりました。桜庭さんはプロレスの試合にも出ているので、プロレス用に身体が大きい選手とやる練習、軽量級を相手に動く練習を分けているそうなんです。僕含めてここで練習している選手は60キロ前後なんですけど、その選手たちに合わせて力を使わない、動きのあるスパーリングをやられていて、本当にすごいと思います」

――桜庭さんというレジェンドと触れて、どんな影響を受けていますか。

「桜庭さんは誰よりも研究熱心で、時間ぎりぎりまで練習されるんですよ。練習が終わったあともみんなにアドバイスをしてくれたり、逆に自分が疑問に思うことはみんなに質問したり。それだけじゃなくて、その日の夜に『今日のあの動きなんだけどさ…』と電話をもらうこともあるんです。そんな桜庭さんを見ていると、強くなることには終わりがないんだなと思うし、それでいて桜庭さんは誰よりも楽しそうに練習されているんですよ。桜庭さんの格闘技への取り組み方は本当に尊敬します」

――ここからは試合について聞かせてください。前戦は昨年大晦日のジョン・ドットソン戦でした。元UFCフライ級のトップファイターに挑むも1RでKO負けという結果でしたが、あの試合を振り返っていただけますか。

「7月に神龍(誠)選手とやって、日本のフライ級で一番強いと言われている相手に3R持ったんで、負けはしたんですけどフライ級ではまだまだいけるという手応えがあったんです。それで大晦日にドットソン戦のオファーがあって、チャレンジしてみようと。ただ実際にドットソンと肌を合わせて、恥ずかしい話なんですけど……次元が違うと思いました。試合前の体調管理も含めて、色んな反省点があって、ドットソン戦を引き受けたこと自体が恥ずかしかったです」

――とはいえフライ級での自分の動きには、手応えを感じていたのですよね。

「自分で手応えがあるとは思ったんですけど、試合は判定0-3で負けているので(苦笑)」

――神龍=今後の日本を担う若い選手、ドットソン=元UFCのトップ選手というタイプが異なる2選手と戦って、感じたことというのは?

「UFCのトップで戦ってきた選手は凄かったとしか言いようがないですね(苦笑)。神龍選手もこれから上がっていく選手ですし、フライ級で2戦しかやっていないのに、この2人とやることが出来てよかったです」

――その敗戦から次の試合に気持ちが向くようになったのは、いつ頃だったのですか。

「僕自身はフライ級で負けたまま終わるのが嫌だったんで、もう一度フライ級でやりたい気持ちがあったんです。でもフライ級は減量も含めて調整が難しくて、精神的にもすごく不安定だったんですよね。計量が終わって試合を迎える間も、なかなか気持ちを作れなくて。周りからはフライ級でやることは反対されていました。そうしたら金原さんが僕をバンタム級で推薦してくれたみたいで、それで今回のオファーをいただきました」

――では自分から試合を希望したというよりも周りのおかげで気持ちにスイッチが入ったのですね。

「このまま終わりたくないと思う反面、試合をやりたいからと言って簡単には組んでもらえないと思うんです。特に今のRIZINは選手層も厚くなって、若い選手とベテランがいたら若い選手を使いたいでしょうし」

――来るべきオファーに向けて準備を続けていたという状況だったのですか。

「はい。ジムの子たちがいるおかげで、変わらず練習は続けていたし、試合がないからと言って生徒にやられるのは嫌じゃないですか。だからコンディションはいい状態をキープできていました」

――今回はヒロ・ヤマニハ選手と対戦が決まりました。所選手のキャリアからすると、一戦一戦が重要な試合になってきますよね。

「この年齢になると、試合するたびに周りから『いつまでやるの?』とか『いつやめるの?』と聞かれるんですけど、先に決めたくないんですよ。もし次がドットソン戦のようなパフォーマンスしか出せなかったら終わりだと思うし、だからと言って、そう思って試合をするのは違う。実際にそういうメンタルの時はいい結果も試合もできていないんで」

――公開練習では「心の中で“あと3試合”と考えている」という発言もありましたが…。

「あれは何となく言ってるだけで、深い意味はないんですよ(笑)」

――なんとなくでしたか(笑)。

「はい。これで終わりだと思って試合をしたくないんですよ。やめるときは……」

――ふと「これで辞めよう」と思う?

「多分そうだと思いますね」

――そういうなかで所選手はヤマニハ戦でどんなものを見せたいですか。

「僕は金原さんみたいにMMAを体現できる選手じゃないんで、元気な姿を見せて、自分らしい元気な試合をしたい。また見たいと思ってもらえる試合をしたい。プライドを持って試合をしたいですね」

――プライドを持つ、ですか。

「ヤマニハ選手はRIZINでは朝倉海選手と元谷友貴選手にしか負けていないし、倉本一真選手、手塚基伸選手、河村泰博選手には勝っていて、まだまだ上を目指せる選手だと思うんですよ。そういう相手に自分をぶつけて勝てたら面白いですよね」

――名勝負製造機と言われる所選手ですが、勝ち負けにものすごくこだわるし、負けてもいいから面白い試合をしたいとは思っていないですよね。

「ですかね…?」

――はい。僕も昔から所選手を取材していますが、むしろ負けず嫌いだと思いますよ。

「だったらそうだと思います(笑)。でも試合する以上は負けたくないし、惰性で続けるんじゃなくて周りに求められて試合をしたいし……ナメられたくないんですよね。見ている人たちに『所英男は終わりでしょ?』や『もう所英男の試合はいいよ』と思われたくない。自分の持っているものを出して、見ている人に喜んでもらえる試合をして勝つ。それが僕の目標です」

■視聴方法(予定)
10月1日(日)
午後12時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN LANDMAKR06対戦カード

<バンタム級/5分3R>
太田忍(日本)
佐藤将光(日本)

<キック61.5キロ契約/3分3R>
梅野源治(日本)
斎藤祐斗(日本)

<バンタム級/5分3R>
所英男(日本)
アラン“ヒロ”ヤマニハ(ブラジル)

<キック61.5キロ契約/3分3R>
梅野源治(日本)
斎藤祐斗(日本)

<フライ級/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
トップノイ・キウラム(タイ)

<ミドル級/5分3R>
イゴール・タナベ(ブラジル)
ANIMAL☆KOJI(日本)

<女子ストロー級/5分3R>
渡辺彩華(日本)
万智(日本)

<フライ級/5分3R>
村元友太郎(日本)
ホジェリオ・ボントリン(ブラジル)

<58キロ契約/5分3R>
中村優作(日本)
ヒロヤ(日本)

<ヘビー級/5分3R>
貴賢神(日本)
荒東“怪獣キラー”英貴(日本)

<フェザー級/5分3R>
ビクター・コレスニック(ロシア)
高木凌(日本)

<ライト級/5分3R>
渡慶次幸平(日本)
井上雄策(日本)

<バンタム級/5分3R>
後藤丈治(日本)
日比野“エビ中”純也(日本)

<68キロ契約/5分3R>
銀・グラップリングシュートボクサーズジム(日本)
太田将吾(日本)

<キック57キロ契約/3分3R>
竹野元稀(日本)
内藤凌太(日本)

<バンタム級/5分3R>
切嶋龍輝(日本)
MASANARI(日本)

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