【ONE FF34】ロッタンが語るスーパーレック戦、武尊とのドリームマッチ、そして現代ムエタイ
【写真】豪快な戦いぶりと派手なパフォーマンスが目立つロッタンだが、インタビューではこちらの質問に対して丁寧に答える姿が印象的だった(C)MMAPLANET
22日(金・現地時間)タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Friday Fights 34にて、ロッタン・ジットムアンノンがONEムエタイ世界フライ級王者として、スーパーレック・ギアットムーガーオの挑戦を受ける。
Text by Takumi Nakamura
その驚異的なタフネスと攻撃力でムエタイルールでの世界王者に君臨しているロッタン。ONEでの敗戦はムエタイ&MMAのミックスルールでデメトリアス・ジョンソンに敗れたのみ。立ち技、特にムエタイルールでは圧倒的な強さを見せつけている。
今大会では過去に一度対戦が流れているスーパーレックとの防衛戦ということで大きな注目を集めている。この大一番を控えるロッタンにスーパーレック戦はもちろん、ONEと契約を結んだ武尊とのドリームマッチ、さらに大きく変わりつつあるムエタイの現在について訊いた。
――前回5月のONE Fight Night10でのエドガー・タバレス戦は、ONEでは約3年ぶりのKO勝利でした。まずはあの試合を振り返っていただけますか。
「久しぶりにKO勝ちができてうれしかったよ。試合前は初めて米国で戦うということで、いつもと雰囲気も環境も違ったけど、結果的にKO勝ちできてよかった」
――ONEではデメトリアス・ジョンソンにミックスルールで敗れた以外、11戦11勝と無敗です。KO勝ちが遠ざかっていたのはなぜだと思いますか。
「自分はいつどんな相手でも100%全力で戦っている。それと同時に僕と対戦する外国人選手も練習にも試合にも情熱を持って取り組んでいる。彼らに勝つことはみんなが思っているほど簡単じゃないんだ。KO勝ちからは遠ざかっていたけれど、自分はいつも100%全力で戦っていることは間違いない」
――対戦相手のスーパーレック選手とは今年3月にスーパーレック選手の持つキックボクシングルールのベルトに挑戦する形で試合が決まっていましたが、ロッタン選手の怪我で試合が流れていました。あの時の心境を聞かせてもらえますか。
「あの時は本当に残念だった。自分にとってONEのキックルールのベルトは大切なものだから。あの試合のために必死で練習していたけど怪我をしてしまい、試合をするために十分な状態ではないと判断した。ONEはグローバルなステージで、ただ戦うだけではいけない。100%の力を出さなければいけないし、勝たなければいけないんだ。あの時の僕は怪我で万全じゃなかったし、それで負けることは嫌だったから、申し訳ないけれど試合をキャンセルさせてもらった」
――今回はロッタン選手が持つムエタイルールのベルトにスーパレック選手が挑戦します。MMAグローブ着用のムエタイルールで戦うことは勝敗に影響すると思いますか。
「それは50/50だと思う。MMAグローブで戦うことは、相手も正しいタイミングでパンチを当てれば僕を倒せる可能性があるからね。ただムエタイルールは自分のタフネスさがすごく生きる戦いになるので自信があるよ」
――ロッタン選手とスーパーレック選手は同じタイ人で同世代ということもあり、多くのファンは2人をライバルだと思っています。ロッタン選手にとってスーパーレック選手はどんな存在ですか。
「スーパーレックとは階級も同じで、彼はONEキックボクシングルールのチャンピオンだから、見ている人たちが自分とスーパーレックをライバルだと思うのは当然だと思う。お互いのファイトスタイルも噛み合うだろうし、見ていて楽しい試合になると思うよ」
――また日本の武尊選手がONEと契約し、ロッタン選手との対戦を希望しています。以前、ロッタン選手は「武尊がONEで自分と戦いたいなら、まず自分以外の選手と戦うべきだ」という趣旨の発言をしていました。あの発言の意図を改めて聞かせてもらえますか。
「日本のファンにちゃんと説明したいんだけど、あの発言をした時、実は武尊のことを詳しく知らなかったんだ。あくまで自分と対戦を要求している新しいファイターの一人という認識だった。だからああいう言い方をしてしまった。あれから武尊は(那須川)天心とも戦っているし、過去の試合を見ても本当に素晴らしいファイターだと思った。武尊がONEと契約して、もう誰か別の人間と戦えなんて言うつもりはない。自分はいつでも武尊と戦うつもりだよ」
――今の言葉を聞くことができて本当によかったです。日本ではロッタン選手のコメントだけが独り歩きして、ロッタン選手が武尊選手と闘いたくないと誤解しているファンが多かったんです。
「オッケイ、オッケイ。僕は武尊と戦うつもりだよ」
――それと同時にロッタン選手が武尊選手をファイターとして高く評価していることも分かりました。
「武尊は天心に負けたけど、彼は本当にアグレッシブファイターで素晴らしい試合を見せてくれた。武尊は自分と戦うにふさわしい選手だと思うし、武尊とは戦うべきタイミングで戦うよ」
――ここからはムエタイを取り巻く環境についても聞かせてください。ルンピニースタジアムでONEが毎週大会を開催し、ラジャダムナンスタジアムでもRWSがスタートしました。ムエタイ=賭けという状況が変わりつつあると思います。ロッタン選手はこれについてどう感じていますか。
「ムエタイから賭けという要素がなくなることは本当に喜ばしいことだと思う。ムエタイに賭けがあることで本来勝者であるべき人間が負けることがあった。観客にとってムエタイ選手は賭けの対象でしかなく、賭けに勝てるかどうかで応援されるかされないかが決まっていた。今自分はONEで戦っているけれど、ONEのおかげでムエタイがスポーツとして、ムエタイ選手がアスリートとして扱われるようになり、観客も賭けとは関係なく、心から好きな選手や応援したい選手に声援を送るようになった。ONEがムエタイのためにやっていることは素晴らしいことだし、ムエタイにとって本当にいいことだと思っている」
――ロッタン選手は米国でも試合をしていて、世界中にファンがいると思いますが、ムエタイをスポーツとして世界中に広めていきたいと思いますか。
「もちろん、そうなってほしいと思っている。ムエタイが米国や欧州、それ以外の国々にも広まり、ムエタイがどんなスポーツかを知ってもらうことで、ムエタイに人生を捧げてきた人間のことも知ってもらえる。ムエタイを世界中に広める。それが自分の最大の夢であり、人生をかけて実現させたいことだ」
――ロッタン×スーパーレックは日本のファンも注目している試合です。日本のファンに向けてメッセージをいただけますか。
「いつも応援してくれてありがとう。9月22日、僕とスーパーレックの試合は必ず見て欲しい。そしていつか日本でビッグファイト、日本で武尊と戦いたいと思っているから、その日を楽しみにしていて欲しい」