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【DEEP115】ヤン・ヘジュン戦へ、酒井リョウ「佐伯さんも酒井、槙吾、石司、大原の4人が危ないと」

【写真】生来の明るさに加え、連勝で乗っている感が伝わってくる酒井(C)MMAPLANET

18日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP115 Impact「DEEP vs BLACK COMBAT」。DEEPと韓国BLACK COMBATの対抗戦で、DEEPメガトン級暫定王者の酒井リョウがBLACK COMBATヘビー級王者のヤン・へジュンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

今年7月に水野竜也をKOし、4連勝とともにDEEPメガトン級暫定王座を手にした酒井。豪快な勝ちっぷりの裏には「弱点と穴をつぶさなければMMAでは勝てない」という考えのもと、練習方法・環境の充実があった。


――DEEP×Black Combatの対抗戦でヤン・へジュン選手と対戦する酒井選手です。普段とは違う形式の試合ですが、今の心境を教えてください。

「実は水野戦に勝ったら対抗戦があるかもという話は聞いていたので、オファーがあった時は正式に決まったなって感じでした」

――対戦相手のへジュン選手にはどんな印象を持っていますか。

「なんでもできる選手で、ベテランのMMAファイターという印象です。打撃もできて、レスリングもできて、寝技もできてという。いい意味で特徴がない、そんな感じですね」

――そういったウェルラウンダー相手にどんな試合をイメージしていますか。

「佐伯さんからはいつも『お前は先に行かないと負けるぞ』って言われるんですけど(笑)、対策という部分では×日本人選手の方が立てやすいですよね。試合の映像もあるし、色々と耳に入ってくる情報もあるので。でも今回は相手の情報が少ないので、ちょっとそこはやりにくい部分ではあります。実際、へジュンは3年くらいブランクがあるから、最新の試合映像が少ないんですよ」

――直近の試合が昨年10月のBlack Combatで、その前の試合は2019年のROAD FCまで遡ることになります。

「しかも韓国では評価が高い選手らしく、韓国では『へジュンの相手がその選手で大丈夫か?』みたいに思われているそうです(苦笑)」

――同じ日に対抗戦に出場する石司晃一選手にインタビューしたのですが、石司選手も撮影のために来日していたBlack Combatの関係者から「韓国のファンの間では今回の対抗戦の中で確実にバンタム級は韓国側が勝つと言われている」と聞かされたそうです。

「石司はもっとムチャクチャ言われていましたよ、『お前だけは勝てない』くらい。佐伯さんも佐伯さんで『酒井、(鈴木)槙吾、石司、大原(樹理)の4人が危ない』と言っていました(苦笑)」

――かなりプレッシャーをかけられているようですね。ただへジュンはもともとミドル級のファイターでブランクもあり、連勝中の酒井選手としてはしっかり勝っておきたい相手だと思います。

「僕的にヘジュンは水野さんに近いイメージなんですよ。ミドル級から階級を上げた選手で、組み技がベースだけど打撃もできる、みたいな。しかも赤沢、水野、へジュンと3連続で同じタイプが続いているので、試合のイメージはしやすいですね」

――話せる範囲で構いませんが、どう戦おうと思っていますか。

「僕は石井慧さんたちとも練習していて、打撃で倒している印象が強いと思うんですけど、試合前はしっかり5分3Rやるつもりで練習していて、たまたま試合で秒殺しているだけなんです。今回もテイクダウンされたり、劣勢になることやきつい展開になることを想定して練習しています」

――重量級で倒せる武器を持っていると、そういったフルラウンド戦う練習や劣勢から挽回する練習などを端折ってしまいがちになると思うのですが、酒井選手はそうではないんですね。

「全然そうじゃないです…というか考えが変わった感じです。もともと僕はPRIDEが好きでMMAを始めて、いかに寝ないで打撃でぶっ倒すか。そればっかり考えて練習をしていたんです。実際に組み技や寝技は覚えるのが難しいし、スキルを上げるのに時間がかかるんで。でもそこを無視していたら勝っていけないじゃないですか。だからそういう練習は絶対に必要だし、組み技や寝技の細かい技術、ケージを使ったテクニックなど覚えなきゃいけないことはたくさんありますが、その分練習が楽しいです」

――連勝している裏にはそういった考えがあったのですね。

「自分は指導者がいないことも多かったので、自分で考えたり、後輩からアドバイスしてもらったり…そうやって練習してきました。最近では一緒に練習しているアライアンスの高阪さんや槙吾さんに色んな事を聞いています。こんなことを言うと恥ずかしいですけど、シングルレッグのやり方から教わっていますよ」

――MMAで勝つためには苦手分野をいかに潰すかが重要ですからね。

「海外の選手を見てもみんなオールラウンダーだし、一つの武器で勝っていけるのは昔の話だと思うんですよ。いかに弱点や穴を潰していくか。そこがMMAにおける強さだと思います。そこから逃げていたら勝てないです」

――先ほど名前が挙がった石井慧選手と練習することで、MMAに対する考えや練習について影響を受けた部分はありますか。

「石井さんと僕は考え方が真逆で、僕は観客が沸けば勝ち負けはどうでもいいやと思っていたんです。でも石井さんのセコンドについたとき、石井さんはインターバル中にもセコンドに『勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい……』と言うんです。この間のPFLの試合に激励のメッセージを送ったら『相手の髪の毛を引っ張ってでも勝ちます』と返事があって。石井さんはアマチュアの最高峰のオリンピックで金メダルを獲った人で、勝つことに対する執念が尋常じゃないんです。そういう石井さんの姿を間近に見て、僕も勝ち負けに対する考えが変わって、それが最近の勝利にもつながっていると思います」

――石井選手の勝ちへの執着や強さへの追及に触れたわけですね。

「僕と違う部分もありつつ、似ている部分もいくつかあって。例えば試合前のルーティンを大事にするとか、僕は石井さんと知り合う前から自分のジムにスパーリングパートナーを呼んで練習することが多かったんです。石井さんも自分がジムを回るというよりも、練習場所にトレーナーやパートナーを呼んで練習するんですよ。そういうところは石井さんと似ているなと思いました」

――試合の結果も含めて、今MMAファイターとして充実しているのではないですか。

「長年格闘技をやっていて色んな人間関係が出来て、強くなるための練習環境を作り上げることは出来たかなと思います」

――重量級は日本人選手の選手数が限られている階級です。これからどこを目標に戦っていきたいと思っていますか。

「僕ももう36歳で、これからUFCを目指すというのは現実的ではないと思います。そうなった時にDEEPでやり残したで言えばメガトン級正規王者のロッキー・マルチネスに勝つ、あとはRIZIN、さいたまスーパーアリーナで試合をしたいです」

――過去にRIZIN参戦経験がある酒井選手ですが、その時は静岡でキックルールだったんですね。

「そうなんですよ。だから本職のMMAファイターとしてRIZINに出たいです。僕の中で戦いたい相手が2パターンあって、スダリオとか上田幹雄とか小さい頃から格闘技をやっている日本人選手、もしくは重量級なんで強い外国人選手。そのどちらかとやりたいです」

――日本人の重量級となると自ずと対戦相手も限られてきますよね。

「ぶっちゃけスダリオとか上田も練習相手がいないから『一緒に練習しませんか?』みたいな連絡が来るんですよ。でも僕はそれを断っていて。ただでさえ選手が少ないんだから、そこで仲良しこよしでやっていたら試合できないじゃないですか。

僕は基本的に対戦する可能性がある相手とは交流しないし、もしどこかで練習場所が一緒になるにしても、それ止まりにしています」

――なるほど。選手が少ない重量級だから一緒に練習するのではなく、自分で強くなる方法を考える。それが酒井選手の場合はいい方向に出ているようですね。

「自分はレンジャージム赤坂の店長もやっているので、どうしても自分の練習時間が限られるんですよ。そのなかでどうやって強くなれるかを考えて、その結果が今の練習環境や内容を作ったと思います。もちろん結果がすべての世界なので、おかげさまで結果を出せているからこそ、このやり方で間違っていないと思えていますね」

――今後のチャンスにつなげるためにも、なおさら今回の試合は落とせない試合です。どのような試合を見せたいですか。

「韓国つながりでいうと、僕は5年前に韓国のTOP FCに出て、チョン・ダウンに負けてるんですよ。だから僕にとってはその時のリベンジという意味もある試合です。お客さんに対しては少しでも『明日から頑張ろう!』と思ってもらえるような熱い試合をするので楽しみにしていてください!」

■視聴方法(予定)
9月18日(日)
午後5時40分~DEEP チャンネル-YouTube、U-NEXT、サムライTV

■ DEEP115対戦カード

<ヘビー級/5分3R>
酒井リョウ(日本)
ヤン・へジュン(韓国)

<DEEP & Black Combatライト級選手権試合/5分3R>
大原樹理(日本)
イ・ソンハ(韓国)

<DEEP & Black Combatバンタム級選手権試合/5分3R>
石司晃一(日本)
ユ・スヨン(韓国)

<DEEP JEWELS & Black Combat女子級アトム級選手権試合/5分3R>
大島沙緒里(日本)
パク・シユン(韓国)

<ミドル級/5分3R>
鈴木槙吾(日本)
チェ・ジュンソ(韓国)

<フェザー級/5分3R>
青井人(日本)
シン・スンミン(韓国)

<フライ級/5分3R>
駒杵嵩大(日本)
キム・ソンウン(韓国)

<バンタム級/5分2R>
力也(日本)
木下尚祐(日本)

<フライ級/5分2R>
杉山廣平(日本)
KENTA(日本)

<ライト級/5分2R>
涌井忍(日本)
倉本大悟(日本)

<フライ級/5分2R>
マサト・ナカムラ(日本)
亀田一鶴(日本)

<アマ68キロ契約/3分2R>
安井飛馬(日本)
菅涼星(日本)

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