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【UFC288】フォークスタイル=ステーリング✖フリースタイル=セフード戦展望─02─、間と圧

【写真】凄まじいフィジカルの持ち主同士、戦い方&思考はセフード=剛✖アルジャメイン=柔 という見方も成り立たないわけではない(C)Zuffa/UFC & MMAPLANET

6日(土・現地時間)、ニュージャージー州ニューアークにあるプルデンシャル・センターにてUFC 288「Sterling vs Cejudo」が開催され、メインでUFC世界バンタム級王者アルジャメイン・ステーリングにトリプルCこと元UFCフライ&バンタム級王者のヘンリー・セフードが挑む。
Text by Isamu Horiuchi

両者の1年に渡る伏線から、試合直前の舌戦を経て世界最高峰の座を争うのに相応しい技術的な側面を考察したい。

<アルジャメイン・ステーリング✖ヘンリー・セフード考察Part.01はコチラから>


ESPNでのZOOM共同インタビューはセフードとステーリングが自らのファイトを論題とし、ディベートと化し熱を帯びていった。

セフードが「お前の戦い方など分かる。前に出てきて前蹴りを放ち、えらい遠くからテイクダウンを狙ってくるんだろ。ラテラルムーブメント(横の動き)も使いながらな。俺はお見通しだ。お前など及びもつかない高いファイトIQがあるからな!」と先陣を切る。

(C)Zuffa/UFC

対してチャンピオンも「俺に別のプランがないと思っているのか?

俺は試合中に戦い方を変えることができるんだ。あんた自分を過大評価しすぎなんだよ。一人でイージー・ファイトだと思っているがいい。あんたは試合が始まった瞬間、自分はバカだったと気づくんだ。マイティマウス(DJ)があんたにやったのと同じことをやってやるからな。柔術で極めるのではなく、ぶっ倒してやる」と言葉を返す。

このような舌戦を展開し試合を盛り上げつつも、両者とも試合に向けての準備は抜かりない。セフードは復帰に向けて地元アリゾナでフィジカルから栄養、そして打倒ステーリングに必要な各能力を段階的に築き上げる綿密なファイトキャンプを計画&実行。

さらにかつての宿敵DJ(以前セフードは、ONE にてアドリアーノ・モラエシュ戦を控えたDJの練習を手伝った)もアリゾナに招き、さらなる技術の習得にも余念がないようだ。

(C)Zuffa/UFC

対するステーリングも、地元ロングアイランドで順調に調整を進めている。

セフードがDJと練習していると聞くと「俺はマイティ・マウス(DJ)の何倍も力が強いぜ」一笑に付した現王者は、こちらも軽量級のレジェンドであるドミニク・クルーズと練習。自分の戦いに役立つアドバイスを得ることができたと満足げだ。

さらにコロンビア大学のレスリング部(NCAA D1)に出向き、ヘッドコーチにして、かつてセフードと一緒にオリンピック・トレーニングセンターで一緒だったザック・タネーリ氏とも練習するなど、着々とセフード対策を進めている。トレーニングパートナーとして、セフードと似た体格のトップランカーのドゥヴァリシビリがいることも大きな利点だろう。

最後に、この両者の攻防における注目点をいくつか挙げてみたい。

まずはなんと言っても、スタンドの主導権をどちらが取るか。レスリングをバックグラウンドに持つ両者だが、MMAの最高峰に上り詰めることができたのは、高度な打撃技術を併せ持つからこそ。そして二人の打撃スタイルはきわめて対照的だ。

(C)Zuffa/UFC

殺傷力で大きく勝るのはセフードだ。

リーチは163センチと短いものの、松濤館空手を取り入れた遠い間合いのコントロールに長け、そこから素早くステップインしての右は一撃必殺の威力を持つ。踏み込んでのローも強烈だ。クルーズ戦では変幻自在のステップに幻惑されることもなく、ローを当て立ちの攻防を制していった。

(C)Zuffa/UFC

が、ステーリングはセフードの攻めを無効化するのに適した戦い方を持つ。

180センチという長いリーチを活かし、蹴りを多用して距離を取ることに巧みな現王者。左右の立ち方を自在に使い分け、テイクダウンのフェイントも交えながら、相手が距離を詰めようとするその出鼻にノーモーションの左右ジャブ、前手でのヒジ、スピニングエルボー等多彩な打撃を先に当てては横に動く。「ファンクマスター」の異名の通り、まさにファンキーにして変則的なスタイルだ。

「そんなお前の戦い方などお見通しだ」と語ったセフードは、いかにステーリングの手数を突破して間合いを詰め、強打を打ち込むつもりなのか。逆にステーリングはセフードの侵攻を止め続けることができるのか。

両者とも弱点らしきものがないわけではない。ステーリングはペドロ・ムニョス戦後に「俺の足はクソ細いから奴のローは効いたぜ」と認めたことがあった。逆にセフードはDJとの第1戦ではボディへのヒザで倒されており、今回ステーリングは「腹が奴を攻略する鍵になる。酒ばかり飲んでいた肝臓をテストしてやるよ」と語っている。いかに自分の弱点を守りつつ相手のそれを突くか、ともに自負するファイトIQの高さが問われるところだ。

この立ち技の攻防に加わる重要なピースが、テイクダウンを起点とするレスリングの攻防だ。寝技に絶対の自信を持つステーリングは「奴は俺とレッスルしたがらず、打撃で戦いたがるだろう」と予測するが、同時に「奴が(強打を狙って)間合いを詰めてきた時は、俺が組み付ける距離になるってことだよ」と、試合を組みに持ち込む自信を覗かせている。が、セフードは言わずと知れた金メダリスト。これまでMMAの試合でテイクダウンされたことはない。「あんたの体を浮かせてやる」というステーリングの予言は本当に成就するのか。

そのステーリングの最大の武器はバックコントロール&チョーク。別にセフードを倒して背中を付けさせる必要はなく、流れの中でバックを奪えば目的達成だ。「奴はフリースタイルレスラー。俺はフォークスタイルレスラー。この違いは大きいよ」と語るステーリングのレスリングが、MMAにおいて金メダリストを凌駕する場面は見られるか。

またステーリングが認めていたように、セフードが得意の大内刈りを決めて上になる場面も想像できる。もしそうなれば、寝技においても異なるスタイルによる興味深いせめぎ合いが見られるだろう。

(C)Zuffa/UFC

セフードのグラウンド&トップでの武器は圧とパウンドだ。

カレッジに進まず、フリースタイルに特化し五輪センターでの日々を送って金メダリストとなったセフードは、このレスリングをDJとの第2戦で駆使して僅差の判定をものにした。今回の練習メニューでもグラウンド&パウンドを重点的に組み込んでいる模様だ。

一方ステーリングの寝技は、フォークスタイル独特のボディクラッチのないコントールに最先端のノーギ・グラップリングの影響をより強く受けたもの。ジョン・ダナハーの弟子にして世界最高峰のテクニシャンの一人として呼び声高いジェイソン・ラウの指導を受けるステーリングは、「もし俺をテイクダウンしても、俺のガードの中で苦労するのは奴の方だ」と語る。

(C)Zuffa/UFC

予告した三角絞めの他にも、足関節やさまざまな下から崩し、スクランブルに持ち込む形を持っているだろう。

それがセフードの強力きわまるトップコントロールに通用するのか。

そしてステーリングは、一度上になれば無類の強さを誇る。相手のガードの中にステイすることなく、まず腰を制してから上半身のコントロールに移行してポジションを進めるきわめて現代的なパスガードの使い手であり、スクランブルを試みた相手からバックを奪いチョークにつなげる流れは天下一品だ。もし下になった時、驚異のフィジカルを持つセフードがどう対処するかも興味深い。

打撃、レスリング、グラップリングとどの局面においても、全く異なるスタイルをきわめて高いレベルで実践する両者の頂上決戦。3年間不在だったセフードに人気と知名度で遅れを取り、試合前の舌戦でも押され気味の印象が否めないステーリングは、ハードワークを重ね戦績を積み上げてきた現役王者の意地を見せることはできるのか。それとも傲慢不遜なるセフードが、ブランクをものともせずに現王者を凌駕し、改めてその天才ぶりとファイトIQの高さを見せつけ、前人未到の3階級制覇&4冠王に王手をかけるのか。

世界最高峰のMMAの攻防を、心ゆくまで堪能したい。

■視聴方法(予定)
5月7日(日)
午前7時00分~UFC Fight Pass
午前11時00分~PPV
午前6時30分~U-NEXT

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