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【Black Combat05】Black Combatと対抗戦へ大島沙緒里─01─「MMAは辞めなきゃいけないと考えて」

【写真】アスリート夫婦というのは、そういう苦労もあるのか──と (C)SHOJIRO KAMEIKE

4日(土・現地時間)、韓国はスウォンのスウォン・コンベンションセンターで開催されるBlack Combat05では、Black CombatとDEEPの対抗戦が行われる。5階級で争われる対抗戦の女子アトム級は、DEEPミクロ級&DEEP JEWELSアトム級王者の大島沙緒里がホン・イェリンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2021年は4戦全勝も。2022年の初戦は3月にノンタイトル戦でHIMEに敗れた大島だったが、その後はRIZINの試合も含めて3連勝を収めている。しかし、そんななかでMMAを離れてしまう可能性もあったという。今回のインタビューでは、須田戦の後に見せた涙の真相とBlack Combatの対抗戦について語ってくれた。


――2022年の大島選手は3月の敗戦からスタートし、その後3連勝を収めて今年の初戦であるBlack Combatとの対抗戦に臨みます。大島選手にとって昨年は、どのような1年だったのでしょうか。

「初戦の負けは、浅倉選手に勝ったあと(2021年10月、浅倉カンナに判定勝ち)だったので、いろいろ言われたり書かれたりしましたね(苦笑)」

――いろいろ言われたり書かれたり、というのは……。

「上げて、下げられて――という感じです。私もそういう書き込みに慣れていなくて。アハハハ。そこで気持ちも落ちそうになりながら、すぐに次の試合が組まれたんですよね。だから私もすぐに気持ちを切り替えました。チャンピオンとして負けたら周囲の評価がどうなるかも分かりましたし、そこから『絶対に勝ってやる』という気持ちで毎試合準備していました」

――5月の須田萌里戦のあと、『これからMMAが続けられるかどうか分からない』といった旨のことを、涙ながらに語っていました。あの発言はどういう意味で、その後2試合行っているのは一体何がどうなったのかを、ご説明いただけますでしょうか。

「あぁ、その件については何も説明していませんでしたね(笑)。須田戦と同じ日に主人(柔道家の大島優磨)も柔道の試合があって、主人は負けてしまったんです。そのために十代の頃から入っていた柔道の強化選手から落ちてしまって。柔道を引退するかどうか、主人とも話し合いました。もし引退したら、地元(大島優磨の地元は徳島県)で教員をやるかもしれない――そうなる可能性もあったんです。彼が地元に帰るなら、もちろん私も子供たちも一緒に行きますから、東京でMMAを続けられなくなると思いました」

――えっ、そのような状態だったのですか!?

「でも主人がそのあとの大会で優勝して、まだ強化選手には戻っていないけど次に繋げることができました。それが去年の8月ぐらいのことですね」

――昨年の8月ということは、7月の山本美憂戦(RIZINで判定勝ち)は今後どうなるか分からない状態で臨んでいたのですか。

「そうなんです。あの試合は、私のほうから『試合がしたい』とお願いしました。MMAができる間に、できるだけやっておきたくて」

――……もしその時にMMAを離れることになっていたら、大島選手ご自身は気持ちよく離れることはできていたでしょうか。

「うーん、いや……気持ちよく離れることはできなかったでしょうね。それこそ、しばらく格闘技の試合も見られなくなってしまうような――。自分自身としては、まだやり切れていなかったので。

今は日本のどこへ行っても、MMAの練習はできます。でも私の場合は子供もいて、地方に行った時にAACCと同じような練習環境を確保できるのか……。そうなると、満足いくほどの準備をして試合に臨むことはできないんじゃないか。そう思っていました」

――……。

「そんな中途半端な状態で試合に出るのは、私自身は嫌でした。だからAACCを離れることになったら、MMAは辞めなきゃいけないとも考えていたんです」

――昨年11月の古瀬美月戦は、開始早々から鬼気迫る表情でテイクダウンを仕掛けて、すぐに袈裟固めからのアームロックで勝利しました。やはりあの表情には、大島選手としても懸けるものがあったのでしょうか。

「アハハハ、そうじゃないんです。逆に緊張しすぎていました。古瀬戦は打撃を見せようと思っていたのに、それを忘れて組みに行っちゃって(苦笑)」

――えっ、こちらが考えすぎていましたか(苦笑)。

「ミクロ級の試合で減量もあったので、いつもより緊張していました。ただ、アトム級ほど相手も大きくないので、自分の打撃も試したかったんです。いつもより打撃の練習を多くしてきたのに……全く打撃を出さなかったですね(笑)」

――アハハハ。緊張のせいで練習してきたことを出せずに圧勝したと。

「試合が決まってから、『大島が余裕で勝つだろう』と言っている人もいました。私自身は油断しないよう、いつもより気を引き締めて練習していたんです。『古瀬選手は強いし、決して余裕ではない』って思いながら。それが緊張に繋がってしまったんですかね……。

ただ、あの試合で勝てたことで、いろんな気持ちが晴れました。3月に負けたあとは全勝できましたからね。RIZINで勝つことができて、アトム級とミクロ級のベルトを防衛することもできて、とりあえずはホッとしています。でも2022年としては、結果的に現状維持なんですよ」

――現状維持、ですか。

「上にも行けず、下にも行かず、ずっと横ばいで一直線のままじゃないですか。このままで良いのか、いろいろ考えてきました。ミクロ級も相手が多いわけではなく、アトム級も相手が大きいので……。ミクロ級であれば、アム・ザ・ロケットとの試合がどうなるか、ですね」

――アトム級には、本野美樹選手が転向してきました。

「いえいえ、同門対決はないですから(笑)。本野はRIZINか海外を見据えてアトム級に落としているのでしょうし。実は私にとって、Black Combatが初めての海外での試合なんです。もともと海外でも試合をしてみたかったんですけど、佐伯(繁DEEP代表)がYouTubeでBlack Combatと絡み始めた頃に、『女子の試合はないのかなぁ』と思っていました。そうしたら対抗戦で女子アトム級をやると聞いて、すごく嬉しかったです」

<この項、続く

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