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【Interview】OFC世界ウェルター級王者 鈴木信達 「十に一つ」

Nobutatsu Suzuki

【写真】取材時はまだ目の周囲に傷跡が残っていたOFC世界ウェルター級チャンピオン、鈴木信達 (C)MMAPLANET

3月14日(金・現地時間)、マレーシアのクアラルンプールにあるスタジアム・ネガラで開催されたOFC14「WAR OF NATIONS」でONE FC世界ウェルター級王座を獲得した鈴木信達。

ブロック・ラーソンを相手に絶対的に不利という前評判を覆し、判定勝ちでベルトを手にした。MMAPLANETでは王座奪取から1週間後に鈴木が行政書士として勤務するオフィスを訪ね取材を行っていた。今回から3度に分けて、その模様――鈴木がOFCの頂点に経った試合を振り返り、今後について語ったインタビューをお届けしたい。

──王座奪取、おめでとうございます。今日は事務所でのインタビューとなりましたが、休日にも関わらずお忙しそうですね。

「帰国した朝に成田から直接、事務所にやってきて仕事をしていました(苦笑)。お客さんは関係ないですからね、僕が格闘技をやっていることは……」

──腫れた顔を見て、驚かれなかったですか(笑)。

「格闘技をやっていることを知らないお客さんもいますから、ちょっと転んだとか適当なことをいって誤魔化しています(笑)。格闘技をやっていることを伝えると、話が膨らみ過ぎることもあるので、その辺りは余り触れないようにしているんです」

──どのように転べは、そのような傷になるのか……(笑)。今大会のタイトル奪取、11月のクアラルンプール大会からゴタゴタが続いていました。当初はアダム・カユーンと王座決定戦を行う予定が、負傷欠場を理由にノンタイトルでヴィトー・ピント戦が決定。しかし、計量&フェイスオフを済ませながらも、相手に事前のドクターチェックで異常が見られ試合そのものがなくなってしまいました。

「正直なところタイトルマッチがなくなったことに関しては、それほど動揺はなかったです。まぁ、ケガをすることもあるだろうと。代わりの選手とノンタイトル戦は、僕からするとリスクしかなかったので、一瞬、受けるべきか受けないか悩みました。こんなことをいうと小さな話になってしまうかもしれないのですが、友人が15人もクアラルンプールまで応援に駆けつけてくれるためにチケットも抑えていました。その好意を無駄にしたくなかったというのはあります。あとは試合の間隔を空けたくないというのも。

試合をすることにして、マレーシアに入国し、計量をして試合がなくなった……という時も、まぁ周囲の人は色々と言われていましたが、仕方がないかと(苦笑)。流れが悪かったので仕切り直そうと思いました。ただ、試合をするつもりだったので気持ち的には疲れましたね。減量までして……気持ちが整っていて、いきなり破断になったので」

──プライバシーの尊重という意味もあり、しっかりと説明もなかったと聞いています。

「計量が終わった直後に試合がないと聞かされた時は、不信感は募りました。相手の状態が分かっていて、何度もドクターチェックをしているのであれば、僕も体重を落とす必要はなかったですし。ただし、そのあとで主催者側からの説明で、なぜ言えなかったかも教えてもらい、僕も納得はできましたけどね」

──それは人が良いですねぇ(笑)。何度かドクターチェックをしているということは、一度でもパスをしていれば戦わないといけなかったということになりますよね……。

「まぁ、そういうことになりますよね。僕のセコンドは怒っていました。僕も聞いたときは驚きでしたし。試合がなくなったという衝撃の方が大きかったですけど、後々考えるとなぜ、最初から……という気持ちになりました」

──そんな経過がありつつ、新たに決まった対戦相手はカユーンではなくブロック・ラーソンでした。実力差もそうですし、手が合う、合わないでいえば、余りに違いのある相手となりました。

「こんなことをいうと偉そうなんですけど、アダム・カユーン選手と戦えば50/50で、10回戦えば向こうが5回、僕が5回勝つ。1/2で勝てる試合でした。それがラーソン選手になると、下馬評でも1対9ですね。僕の分が悪い相手でした。本当のことをいうとラーソン選手のことを余り知らなかったので、即答で『やりますよ』って返答してしまって。それから色んな情報を拾うと『おい、おい、おい』と。バケモノみたいな選手じゃないですか(笑)。

でも、いずれそういう選手と戦うこともあるだろうし、早いか遅いかだけなので、やるだけだと。対戦相手がフィル・バローニ選手だろうが、カユーン選手だろうが、ラーソン選手だろうが、僕の勝ち方は多岐に渡っているわけじゃないです。誰と戦っても、ある程度戦い方は固まっている。自分のやることは決まっているので、相手のことは深く考えないようにしました」

──試合展開を予想すると、ラーソンがテイクダウンからパウンドだけなら、その隙に立ち上がることもできるのですが、彼は抑えて肩固め、RNC、腕十字やアームロックなども持っているので、鈴木選手には分が悪いなと。中村K太郎戦もありましたし。

「分が悪い程度でなく、分が悪すぎました(笑)。自分のなかでも何度かシュミレーションして、やはり負けパターンというものも見えていました。同時に十に一つの勝利も、1の方に持っていくことができれば、必ず勝てるという自信もありました」

──そこにまさにハマったと。

「ラーソン選手はサウスポーで、僕はその腹部へ彼が経験したことのないような角度で、彼が経験したことのない衝撃を与えることが可能な攻撃ができるので、戸惑わせることはできると思っていたんです。そこにハマれば、削り続けて勝てるんじゃないかという思惑はありました」

──1Rに早々に下にされた時は、どのような気持ちでいましたか。

「あの時は『ヤベェ』ってなりました。かなり殴られましたし。残り時間が少なくなっていたので、ここを凌げばと思って何とか戦い切ることが出来ました。パウンドも見えなかったわけでなく、来るのが分からないと効かされるのですが、角度も分かったので何とか凌げました。それでも、もう30秒あれば、レフェリーに試合を止められたかもしれなかったです」

──その1Rを終えて、当然のように2Rもラーソンはテイクダウンを仕掛けてきました。そこでテイクダウンを防ぐことができたことが、あの試合のキーポイントのように感じられました。

「1Rが終わった直後に自分も苦笑いというか、『強いなぁ、コイツ』って思い、2回倒されたら終わりだなっていうのがありました。とにかくテイクダウンを切って、凌ぐ。オフェンスよりもディフェンスを頭に入れて、相手を疲弊させることを頭に置いて戦いました。次に倒されて抑え込まれると、削るどころかこっちが削られてしまうので。そこは結構意識して、頭を切り替えましたね」

──そこで三日月蹴りが、ボディを捉えました。その直後からラーソンは回るのではなく、下がるようになりました。あの場面で、すぐに『これはっ』と逆転があるような予感もしました。

「手応えはありました。相手の表情も変わりました。1Rのやってやるという顔から、戸惑いの顔に。攻撃の手数は彼の方が多かったと思います。それなのにプレッシャーをなぜ掛けられているんだという戸惑いがあったと思います。自分よりも体も小さくて、パワーもない相手にどんどんプレッシャーを掛けられて、ケージ際に追い込まれていくことに戸惑っていたでしょうね。そのきっかけは腹を効かせたことだとは思います」

<この項続く>

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