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【UFN215】MMAふしぎ発見! フィアーリョと対戦、ムスリム・サリコフが語る─01─「散打の歴史 in ロシア」

【写真】初めて聞く話ばかり。試合前でなければ、もっと色々と教えて欲しかった (C)MMAPLANET

19日(土・現地時間)はネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFN215:UFN on ESPN+73「Lewis vs Spivak」が開催され、メインカードのウェルター級でムスリム・サリコフがアンドレ・フィアーリョと対戦する。

リー・ジンリャンに敗れ再起戦となるサリコフは、キング・オブ・カンフーの異名を取る散打出身のストライカーだ。北京五輪と同時開会された北京武術(ウーシュウ)トーナメントの85キロ級金メダリストのサリコフは世界大会で5つの金メダルと1つの銀メダルを獲得しており、散打の歴史で非中国人として最も成功を収めたことで知られている。

そのサリコフにインタビューを試みると彼が指導を受けたマーシャルアーツスクールの存在から、ロシア及びダゲスタンにおける散打の発展理由が語られた。

なぜロシア人ファイターは散打をバックボーンにしているファイターが多いのか──そしてサリコフだけでなく、ヴォルク・アターエフやサビッド・マゴメドシャリポフのような散打ファイターがダゲスタンで生まれた秘密が明らかとなった。


──キング・オブ・カンフーのインタビューができてとても嬉しく思っています。

「ノープロブレム。僕も日本のファンと触れ合える機会がなかったので、インタビューをしてもらってとても嬉しく思っている。スパシーバ。日本という国は僕にとって、とても大切な国だからね」

──ダゲスタン生まれ散打で数々の栄光を手にして来たムスリムですが、日本が大切というのはどういうことでしょうか。そもそも散打がなぜロシアで盛んなのかの分かっていないのですが……。

「ロシアではなくて、ダゲスタンで盛んなんだ。散打はダゲスタンでもっと盛んなアマチュアスポーツの1つだよ。多くの人々が散打のトレーニングをしている。空手もそうだよ。ダゲスタンの人間はボクシング、レスリング、そしてマーシャルアーツが好きなんだ。今では柔術も人気があるよ」

──ムスリムと散打の出会いはいつ頃だったのですか。

「僕は7歳の時にダゲスタンの首都マカチハラから父の故郷であるブイナスクの近くにあるハリムベガウルという小さな村に引っ越したんだ。その時、近所の子供達がマーシャルアーツ・スクールに通っていているのを見た。それがピャーチ・スタロン・スィウェタ(ファイブ・ダイレクションス・オブ・ザ・ワールド)という世界一の規模を誇る武道学校だったんだ。先生のグセイン・マガマエフは若い頃から空手の稽古を積んでいた人物で(双子の兄弟と重量挙げの経験があり、叔父からコンバットサンボの指導を受けた時期もあった)」

──ソビエト連邦時代、空手の練習は禁じられていたと聞いたことがあります。

「その通りだ。彼は空手の稽古をしてチャンピオンにもなった。でも、共産党は空手のトレーニングを突如禁じ、誰もが表立っては空手ができなくなった。でも彼は地下に潜って空手の稽古を続けた。

と同時にグセインは中国に渡り、武術散打を学んだ。中国は知っての通り共産党の国だから空手は禁じられても、ソビエト連邦の共産党政府は中国の格闘技である散打を学ぶことは認めていたんだよ。共産党政府は取締りの目を光らせ、空手の稽古をしていないか監視した。だからグセインも表立っては散打の練習と指導はきなかった。そして監視役が立ち去ると、リアルマーシャルアーツ……ファイトのトレーニングをしていたんだ(笑)」

──なるほどぉ、共産党繋がりで散打はソ連で認められていたと。なのでソ連崩壊後もロシアのMMMAファイターには散打の経験者が多いということなのですね。いやぁ、全然知らなかったです。

「当時グセインはモスクワに居を構えていたけど、1982年にマーシャルアーツを禁じるという取り締まりを受けたのをきっかけに1984年にダゲスタンに戻り、ブイナスクに小さなスタジオで散打の指導を始めたんだよ。僕がブイナスクに住むようになったのが1991年でまさにソビエト社会主義共和国連邦が崩壊する年だった。

僕は父に『皆、何をしているの?』と尋ねた。すると父は『あの子たちはファイトしに行っているんだ。ブルース・リーみたいなマーシャルアーツだよ』と答えてね(笑)。僕はブルース・リーの大ファンで、映画を何本も視ていたから『僕も通いたい』って哀願してね。父は僕を連れてグセインのマーシャルアーツ・スクールに連れて行って話をしてくれた。回りは僕よりも年上の生徒が多かったけど、その日から散打を練習をするようになった。風邪をひいたり、体調が悪くなった日以外は毎日のようにスクールに通った。

僕の先生は散打を指導してくれたけど、彼のベースには空手がある。だから日本は僕にとって大切な国なんだ」

──グセインさんは政府や連盟などのサポートがあって、それだけの大きなマーシャルアーツ・スクールを運営できていたのでしょうか。

「もともと小さなスタジオから始まって、徐々にジムを拡張していった。彼は自分の力でスクールを今の規模まで大きくしたんだ。ただ建物に関しては政府が、提供しているはずだよ。そしてダゲスタン共和国の教育科学省の認可を受け、マーシャルアーツの寄宿学校にまで成長している」

──いやぁ、想像の範疇を越えていますね。

「今では散打だけでなくテコンドー、空手のクラスもある。ヴォルク・アターエフ、ザビッド・マゴメドシャリポフ、マゴメド・マゴメドフらもグセインの教え子だよ。今ではグセインの教え子が他の街にスクールを創っているので、ダゲスタン中にグセインのマーシャルアーツ・スクールが存在しているんだ。ダゲスタンがコンバット・スポーツで強いのは、グセインの教え子たちが全土で打撃を指導しているからだよ」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
11月20日(日・日本時間)
午前3時00分~UFC FIGHT PASS

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