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【ONE】フロリダ発、エディ・アルバレス─01─「情熱を生き方に置き換えることができるようになった」

【写真】8月25日発売のNumberでは14年振りに格闘技特集を組まれる。その話をすると、エディは前回の特集でフィラデルフィアのケンジントン地区にあった自宅での取材時に撮影された1枚と似たポーズをとってくれた……(C)MMAPLANET

7月最終週から、8月の第2週にかけて米国で取材を行った。ABEMA海外武者修行の地=NYとミルウォーキー。LFAに挑んだ田中路教、河名マストを追ってオクラホマ州ショーニーへ。そしてATTとキルクリフFCという世界有数のメガジムが、僅か車で10分強の位置に並び立つフロリダを訪れた。

そしてキルクリフの朝のプロ練習(基本キルクリフにはプロ練習しか存在しないのだが)に、エディ・アルバレスの顔が確認できた。1984年11月生まれ、38歳になったレジェンドが貪欲に世界の頂点を目指す若い選手と汗をかいている。

隆盛を極める米国のMMA界、情熱だけで人生を考えることなくこの世界に飛び込んだアルバレスの視線で見る現代米国MMAと自身のキャリアとは──。


──初めてエディを米国で取材をしたのは14年前、DREAMで戦いフィラデルフィアのケンジントンに住んでいる時でした。あれから随分と米国におけるMMAの発展具合は変化しました。今回、米国に滞在してみてコロナ以降の2年間で、さらにMMA産業は成長したように感じました。

「イエス。コロナ禍でMMAはさらに発展したよ。全世界がシャットダウンし、他の全てのスポーツが動きを止めた時に、MMAだけが歩み続けた。人々は家の中に缶詰にされ、何も楽しみがなかった。コンサート、ライブ・エンターテイメント、スポーツをTVで視ることもできない。MMA以外のね。

それまでMMAってファンでなければ、少し目に留まってもチャンネルを進められるスポーツだった。それがこの間に以前はMMAに興味のなかった層までが、MMAへの理解を進め視るようになった。テレビをつけてMMAがあれば、そのまま視聴し続けるファンになったんだ。それってハードコア・ファンと同じってことだよね。

勝利を手にするために、自分の限界を引き上げようとするファイター達の姿を視て、自分達が普段から生きるうえで欠かせない戦いを重ね合わせたんだ。コロナ禍において、他のスポーツ中継がない時にMMAだけがすぐに活動を再開して、人々の視る機会を増やした。結果、MMAファンはパイが広がったんだ」

──あれだけMMAファイターが夢として語っていたESPNでの中継が、UFCとPFLなど当然のようになっています。UFCはサブスクのESPN+の中心コンテンツです。

「ABCまでMMAの試合を中継しているからね。これって若い選手には当たり前のことだけど、本当に感慨深いよ。僕はMMAというスポーツの進化を目の当たりにすることができたんだ。MMAを戦い始めたのは2003年、まだTUFの中継もまだ始まっていなかった。

大金を稼げるモノでもなかった。スペクタルだけど、スポーツとしては認められてはいなかったよ。僕も最初の頃はパッションだけで戦っていた。ファイト、コンバットが好きだから。でも自分のキャリアをどう積み上げていくのかとか、何も考えていなかった。それが僅か2、3年でTUFが始まったことが大きく影響して、MMAはビジネスとして成長した。僕にとっても、ただのホビーがビジネスになったんだ。

パッションをキャリアに置き換えることができるようになった。その時点で、時代に恵まれていたと思うよ。ケン・シャムロック、ジェンス・パルバーら90年代にMMAを始めたオールドスクールの選手たちは、引退する時に財産を残すことができなかった。ホントに僕はラッキーだよ。MMAに豊かな暮らしを与えてもらうことができた。MMAというスポーツで、自分の力でそれを成し遂げ、家族に分け与えることが可能な時代を生きることができた」

──選手でもメディアでも、ファンでも野球やフットボールのファンだとこれだけ劇的な変化を体験できなかったです。

「そうなんだよ。40代で初めて出会って、50歳、60歳になるという変化には対して興奮できないからね。でも僕らはMMAを赤ん坊の時から見てきた。人生の始まりから見て、成長して、一人前の男になるところを見てきたんだ。

しかも今、MMAは最高のエンターテイメントになっていてNFLやNBA、MLBのプレイヤーやハリウッドの人間がいつも観戦にやってくる。本当に素晴らしいことだよ。自分が現役である短い間にMMAが進化と成長を見ることができたなんて最高だよ」

──それでいて、キルクリフFCでは若い選手たちと混ざってハードな練習をこなしています。やり切ったということではなく、まだ戦うモチベーションを持ち続けるのが凄いです。

「これはキャリア云々ではなくて、ライフスタイルだから。ガキの頃から、こうしてきた。コンバットスポーツ、苦しみ、前進、成長は全て僕の人生の一部だ。僕から奪い取ることはできない。これがなくなると、僕が僕でなくなってしまう。『ノーモア』とは言えないよ。本当に人生の大部分を占めてきたことだから。練習をしないなんて、腕や足を失うようなものなんだ。

自分がなれる最高の自分になりたい。そのために練習をしないわけにはいかないしね。いずれ、僕の体も『無理だ』と言う時がやってくる。そうなっても、自分がどれだけ世界のトップ戦線で戦うことができたのか──を誇りに思うよ」

──だからこそ、エディの体が心配になるのも事実です。日本で戦ってきた時からBellator、UFC、そしてONEとずっとアグレッシブな試合、バチバチの殴り合いを繰り返してきました。体調の方がいかがですか。

「見ただろう? ここで世界のベストと練習を続けることができている。一歩下がったところで戦うなんて言えない。でも、休むべき時は休んでいる。そして家族と過ごしている。朝から晩までジムにいるってことはない。365日、ジムにいることもない。3、4カ月ハードに練習をして、ジムから離れて家族と2、3カ月過ごす。休息を取り、気持ちと頭を落ち着かせて練習に戻る。

ファイターだけの人生は送っていないよ。強度が高く、激しく動く。その機能を維持して、休むんだ。こうやってきたから、これだけ長い間このスポーツを続けることができたと思っている。ずっと6速や7速で走っているとエンジンがブローしてしまう。激しく情熱を燃やしたあとは、気楽な構えでいるんだ。そうやって生きてきた」

──奥様はエディが現役を続けることを納得していますか。あのケンジントンでの生活と、今の生活は奥様も家族も全く違うでしょうし。

「ホントに運よく、素晴らしい環境で子供を育てることもできた。安全で良い学校に通わせることができている。妻はもう僕に危ないことをしてほしくないと思っているよ。でも、彼女は僕のことを知っている。エディ・アルバレスが何者か分かっているんだ。僕の情熱、愛情……つねに、そのことについては会話をしてきたよ。

まだ何試合かは戦うつもりだ。確定してないけど、ハイレベルな相手と戦える技量もエネルギーもある。と同時に、ここからの数試合だけでなく、これまでのキャリアを鑑みて時が来たと思ったらグローブを置くよ。何も後悔はないからね」

<この項、続く

■放送予定
8月27日(土・日本時間)
午前10時00分~ ABEMA格闘チャンネル
午前10時00分~ONE Supper App

■ONE161対戦カード

<ONE世界フライ級 (※61.2キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]アドリアーノ・モライシュ(ブラジル)
[挑戦者] デメトリウス・ジョンソン(米国)

<ONEムエタイ世界バンタム級選手権試合/3分5R>
[王者] ノンオー・ガイヤーンハーダオ(タイ)
[挑戦者] リアム・ハリソン(英国)

<ムエタイ・フライ級ワールドGP準決勝/3分3R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
サヴァス・マイケル(キプロス)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
マーカス・ブシェシャ・アルメイダ(ブラジル)
キリル・グリシェンコ(ベラルーシ)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
アミール・アリアックバリ(イラン)
マウロ・チリリ(イタリア)

<ムエタイ・フライ級ワールドGP補欠戦/3分3R>
アミール・ナセリ(イラン)
ジョナサン・ハガティー(英国)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
リン・フーチン(中国)

<ムエタイ58キロ契約/3分3R>
ディアンドラ・マーティン(豪州)
アンバー・キッチン(英国)

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