この星の格闘技を追いかける

【Shooto2022#05】パク・ソヨン戦前の黒部三奈「一つ先のことしか考えられない」&「おーい、平ちゃん!」

【写真】ホントにチームメイト想い。マスタージャパンは空気感が良い(C)SHOJIRO KAMEIKE

17日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto#2022で、元修斗女子世界スーパーアトム級王者の黒部三奈が、韓国のパク・ソヨンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年11月、SARAMIに敗れベルトを失った黒部は、わずか2カ月後にルーキーの宝珠山桃華と対戦して判定勝ちを収めている。しかし、試合後の表情に笑顔はなかった。むしろ納得のいかない表情を浮かべていたのは、なぜだったのか。そこから見えた現在の黒部三奈、そして彼女のMMAとは。


――今年1月の宝珠山戦以来、半年ぶりの試合を迎える黒部選手です。

「17日はマスタージャパンから平川智也も出るんですが、一緒にいいですか? おーい、平ちゃん!」

平川 ……え!? はい、よろしくお願いします。

――突然の展開ですが、17日は根津優太選手と対戦します。

平川 根津選手とは3年半前に試合しているんですよ(2018年9月に判定負け)。僕の中ではリベンジのチャンスをもらえて嬉しいです。前回の対戦は、僕の試合の進め方で負けてしまった感じがあります。正直なところ勝てるチャンスはあったし、今回は倒せるんじゃないかと思っています。前回は1R目に相手の足が折れていたんですよね。なのに行けなかった自分に悔しい気持ちもあるので、今回は前に出ます!

「17日はマスタージャパンの2人で頑張りますので、よろしくお願いします!」

──って、もうインタビュー終了じゃないですか……。平川選手、無茶振りに応えていただきありがとうございました(笑)。そして、黒部選手ですが──まず前回の宝珠山戦の出来は、ご自身の中ではいかがでしたか。

「……不甲斐なかった、と思いますね。仕留めきれなかったことが」

――正直な印象を言えば、SARAMI戦のほうが出来は良かったように感じました。

「こだわりすぎてしまったんですよね。もっと自由にやりたかった。いま振り返ると、そう思います」

――こだわりすぎてしまった、とは?

「試合をするごとに、勝ったとしても負けたとしても、課題が生まれますよね。誰でもそうだと思うんですけど、選手って完璧に納得できるような状態で試合に臨めることって無いじゃないですか。練習して、ある程度の自信は持っている。でも、もっとコレができればいいのになぁ、もっとココができていれば――と思いながら試合に臨むわけで」

――確かに選手が100パーセントの状態で試合に臨めることは、それこそ100パーセントないかと思います。すると何パーセントの状態でケージに入るか、ということになります。前回の試合では、そのパーセンテージが低かったということですか。

「それもあるし、一つひとつの課題をクリアすることにこだわってしまうと、トータルな部分が良くなくなっちゃいますからね」

――いま抱えている課題が100だとすれば、100をクリアしていないと不安になってしまうタイプなのでしょうか。

「そうです。試合前に、まだ完璧にはできていないけどなぁ……と思っちゃうタイプですね(苦笑)。でも前回の試合から、課題を一つひとつクリアしながら、だいぶ良い感じに繋がってきたかなって思います。以前より、一緒に練習している強い選手たちをテイクダウンできることも多くなってきたし。これまではケージに押し込んでからテイクダウンできなかったことが課題としてあったので」

――なるほど。現在、黒部選手が目標としているのは、修斗のベルト奪還なのですか。

「それはホントに、ホントにね、ひとつ先のことしか考えられないんですよ。目の前にある試合のことしか考えられなくて。目標――強くなりたい、それはずっと同じです」

――その目標は、全くブレないですね。改めて見つかった課題をクリアしていくことも楽しそうです。

「楽しいですよ。アハハハ、練習が楽しいです。試合前にサーキットトレーニングとか、そういうキツい練習はしますよ。でも嫌だと思うことはないし、基本的に練習が楽しいですね」

――これは試合前のファイターに訊くことではないかもしれませんが、練習が楽しくなくなったら選手を辞める時ですか。

「まぁ、楽しくないことをやる必要はないですかね」

――ではサーキットトレーニングをキツいと感じる以外に、普段の練習で楽しくない……MMAをやる意味を見失いそうな時はあったりしますか。

「……無いかな(笑)。MMAというものが、それだけ魅力のある競技なんですよ」

――なるほど。そういえば4月には柔術の試合に出られたのですね。

「4月の全日本選手権で女子アダルト茶帯フェザー級3位でした。紫帯の頃までは、柔術の試合にも結構出ていたんですよ。それが去年末ぐらいから、また柔術の試合に出ようかと思って。最近はMMAに専念していたから、MMAの試合が決まるとタイミング的に柔術の試合には出られなくなってしまっていたんですよね。

でも、また最近は柔術自体が楽しいなと思うようになって。でも柔術の試合に出るのって、勇気がいるじゃないですか」

――えっ、そうなのですか。

「アハハハ、勇気いりますよ。やっぱり競技が違いますし、簡単に負けちゃったら恥ずかしいので(苦笑)」

――今回はMMAのために柔術をやってきたのでしょうか。それとも純粋に柔術という競技へ挑んでいるのですか。

「練習では、MMAのために柔術をやるということは考えています。でも柔術の大会に出る時は、純粋に柔術を楽しむためですね。もともと格闘技を始めた頃は、寝技というか柔術にハマっていて。キックボクシングやMMAもやっていましたけど、柔術も好きで試合に出ていました。私は身体能力が高いほうではないので、MMAの試合でも柔術に助けられている部分が大きいです」

<この項、続く

PR
PR

関連記事

Movie