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【ADCC2022】オセアニア&アジア予選へ、世羅智茂─01─「もうギをやらないほうが賢いんだろうな」

【写真】コロナが始まった直後、無観客&ケージのなかでグラップリングを2度戦っている世羅(C)SHOJIRO KAMEIKA

19日(日・現地時間)、豪州ニューサウスウェールズ州スタンホープガーデンズのブラックタウン・レジャーセンター・スタンホープで『ADCC OCEANIA AND ASIAN TRIALS 2022』が開催される。
Text by Shojiro Kameike

9月17日(土・同)&18日(日・同)にネヴァダ州ラスベガスのトーマス&マックセンターで行われる世界大会を目指して、アジアとオセアニアのグラップラーが集まる予選大会。その77キロ級に世羅智茂がエントリーしている。

現在は柔術(ギ)とグラップリング(ノーギ)を並行して行っている世羅だが、プロMMAイベントのグラップリングマッチに出場するなど、グラップラーとしてのイメージも強い。そんな世羅がADCC予選に向け、グラップリングへの気持ちを語ってくれた。


――ADCC予選と世界大会は本来、昨年に行われるはずでした。しかしコロナ禍の影響で今年に延期され、改めてオセアニア&アジア予選に挑むこととなりました。世羅選手は昨年の段階でも出場しようと考えていましたか。

「はい、出るつもりでした。他の柔術の大会と日程が被っていたら、どうなっていたかは分かりませんが、タイミングが合えば出る予定でしたね」

――世羅選手は現在グラップリング、ノーギの試合に出る機会のほうが多くなっているかと思います。ノーギとギありの柔術、世羅選手の中ではどちらがメインなのでしょうか。

「最近は徐々にグラップリングへシフトしています。柔術は先日の全日本選手権(4月9-10日、アダルト黒帯ライト級で3位)でひと区切りつけようかな、と自分の中では考えていました。でも実際のところは、そこまで気持ちの整理がついていない状態です。もしかしたら今後も柔術の大会に出るかもしれないですけど、徐々にグラップリング中心にしていこうと思っています。

柔術のほうは、出る大会を選んでいくことになります。グラップリングも並行して試合していたら、そんなに柔術の大会にも出られないですし。仮に出るとすれば、ワンマッチで特別な相手と戦うとか、あるいは全日本選手権とか大きな規模の大会ですね」

――グラップリングへシフトしているなかで全日本選手権に毎年出場することは、どのような意味を持っていたのですか。

「1回は優勝したい、単純にその気持ちが強いです。ギの全日本は、黒帯になってから1回も優勝したことがないんですよ」

――全日本選手権の成績は、2020年と2021年が3位で……。

「それで今年の2位が過去最高です。やっぱり一度は優勝したいです。日本一という称号を得られるし、ひとつ大きな結果として全日本の一つ大きな結果として全日本のタイトルが欲しいので。そのタイトルを獲ることができていないのは、もどかしいですね。

反対にギで海外を目指すというのは、もう無いに等しいです。そのためにはギに集中しなきゃいけなくなりますから。もうギとノーギ、どちらもレベルが高くなっていて、並行してトップを目指すのは難しいですね。そうしたら、どこかの段階でギかノーギか区切りをつけなきゃいけなくなる。その区切りをつける意味で、全日本は獲りたかったんですよね。

それが2位だったので、どうしようかな……と心残りはあります。合理的に考えたら、もうギをやらないほうが賢いんだろうなということは自分でも分かっているんです。でも、そう簡単には割り切れない。それが格闘家なんですかね(苦笑)」

――負けたままで終わることはできない、その格闘家としての気持ちは理解できます。

「そうなんですよ。ノーギに集中したいけど、まだギに対する未練があるという(笑)。仕事としてクラスの指導はギでやっているので、ギの練習をすること自体を辞めることはないんですよ。でも試合となると、どうしようかなって」

――ギからノーギへシフトしていこうと決めた理由は何なのでしょうか。

「単純にギだけじゃなくノーギも好きっていうこともありますけど、自分の中では、ノーギのほうが結果は出ていると思います。だから……それだけですね。自分にとってはノーギのほうが結果を出しやすい、という」

――昨年のJBJJF全日本ノーギ選手権ではアダルトエキスパートライト級に出場し、決勝で森戸新士選手を破って優勝しています。

「去年、ノーギは負けなしだったんですよ。クインテットの引き分けはありましたけど、負けはなかった。ギもノーギ、どっちも好きですし、どちらが得意か不得意かっていうことも考えません。でもノーギのほうが結果も出ているので、冷静に考えたら、それはノーギへシフトしていくよねっていう感じです」

――そこまでギとノーギは違う競技になってきたのですね。

「もう全然違います。ノーギでは足関節の技術がメチャクチャ発達しましたよね。サブミッションオンリーの大会も増えていますし。海外だと今はWho’s Number One、日本ではクインテットとか。それと、いろんなルールもありますよね。コンバット柔術とかも……あれをグラップリングと言っていいのかは分からないですが、とにかくグラップリングは国内でも海外でも盛り上がってきていると思います」

――一方で、世羅選手の試合内容も以前と大きく変わってきたと思います。2017年に京都から上京し、カルペディエムへ移籍してから、どのような変化があったのでしょうか。

「常に柔術に触れられていること、それは大きいです。仕事は指導――柔術を教えることですし、それ以外の時間は練習しているので。24時間、柔術のことを考えていい環境にいます。それと、高いレベルを目指している選手が身近にいることは大きいですよね。

日本全国に才能のある選手は、たくさんいると思うんです。でも、そういう選手は、どうしても周りの会員さんとの温度差が出てきてしまいます。自分はバリバリ練習して試合で結果を出したいけど、周りの一般会員さんはそうではない。結果、自分が浮いてしまうこともあります。でも今、周りには世界にガンガン出て行こうぜっていう仲間がいます。

指導は指導、一般会員さんと接する時は、また違います。スタッフ同士だと海外の選手の試合をチェックしたり、一緒に技の研究とかもして互いに高め合っているので、そういった環境に来ることができたのは良かったです」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
6月19日(日・日本時間)
午前8時00分~Flo Grappling

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