この星の格闘技を追いかける

【Gladiator016】ケージで殴る黒帯柔術家=井上啓太「二刀流? 練習の成果を両方で出したいだけ」

【写真】 淡々となかなかできなことをやっている──そんな印象だ(C)MMAPLANET

23日(日)、大阪府豊中市の176boxで開催されるGLADIATOR016で井上啓太が春川広明と対戦する。

コロナパンデミック以前から、畳とケージを行き来していた稀有な存在の井上。しかし、本人は二刀流という言葉にピンと来ていなかったという。

日々、所属するグラウンドコアで練習してきたことを試合という舞台で出す。それが井上啓太のポリシーだった。


──井上選手は5年前に初めてMMAを戦っているのですが、IBJJFルールの競技柔術で結果を残している選手がケージでMMAを戦うというのは、今も当時も稀で。それでも今は須藤拓真選手、イゴール・タナベ選手、グラップリングから転向の岩本健汰選手がいますが、当時は本当に異色でした。

「そうなんですか……僕的にはそういうことを考えて戦っていたわけではなかったので、二刀流って書いてもらっていてもピンと来ていてなかったです(笑)」

──つまりはMMAを戦うことも特別ではなかったと?

「ハイ。もともと柔道をやっていてグランドコアで柔術を始め、2年程は柔術だけだったのですが、それからは打撃もやっていましたし打撃歴が短いわけではないので」

──グランドコアで柔術をするだけでなく、他でも打撃を習い始めたと?

「いえ、グランドコアでは週に2回キックボクシングのクラスがあるんです。週に4回寝技のクラスがあって、1回MMAのクラスがあります。寝技のクラスは3回が柔術で1回がグラップリングで。それ以外に選手スパーとか、打撃とMMAのスパーの時間が毎日のようにあるので、僕は普段から練習していることの試合に出るという感覚でした」

──なるほどぉ。ではジムにMMAを戦う選手も所属しているということなのですね。

「試合に出るまでの人はそれほどですけど、クラスはけっこう盛況です。去年はアマ修斗の関西選手権で2人優勝して、全日本にも出ています」

──そうなのですか。失礼しました! 井上選手は2018年に初めてグラジに出場し飯田健夫選手にTKO勝ち、昨年は6月にDREAMERSの八木敬志選手にヒールで一本勝ちしていますが、この2試合しかMMAは出ていませんでした。

「それは柔術に重きを置いていたからです。僕はこれまではムンジアルを目指していたので、やはり柔術をメインにしてきました。MMAも戦っていきたいと思ってはいたんですけど、どうしてもケガが増えるので、柔術のトーナメント前のオファーは断らさせてもらっていたんです。全日本とかアジアの2カ月前ぐらいはオファーがあっても、そこは柔術を優先していました。

ただコロナになって柔術は随分とトーナメントがなくなって、試合に出る機会がなくなってしまって。それでも去年のJBJJFの全日本も出ていますし、練習は変わらずやってきた感じです」

──コロナにおける柔術の活動停止は、MMAやグラップリング転向を含め色々と変化を起こしましたね。

「ハイ、この間は考えることがありました。もう年齢も年齢ですし、悠長なことを言っている場合じゃないなって思って……今は、両方やろうと。特に柔術の試合が減ったこともあり、MMAも同時にでていこうという風になりました」

──ムンジアルに出ようと思うと、国内にいてはアジアが再開されないとポイントがなかなか獲得できないですしね。

「そうなんです。実は2020年のムンジアルに出たくて、ポイントを計算するようになりました。ソウル・オープンとかに出て2019年の終わりにポイントを貯めることができたのですが、コロナでムンジアルが中止になってしまって……タイミングが悪かったです。今もポイントはどう取れば良いのか……。

ただ基本的に道場のクラスに合わせて練習をしているので、柔術の試合前も週に2回の打撃クラスと週1のMMAクラスに出ていますし、MMAの前だからMMAだけ練習するということもなくて。いつもやっていることを、試合という舞台で出す。だから柔術とMMAを戦うことに違和感はないです」

──練習していることを試合で出す。恰好良いですね。

「ただノーギは大昔に白帯か青帯の時に小さなワンマッチ大会に出ただけで、大きなトーナメントに出たことはないです」

──そこも面白いですね。MMAと柔術よりも、グラップリングと柔術、そしてMMAと柔術の方が近いかと思われるのですが。

「そうなんですよ(笑)」

──とはいえ八木選手に勝った試合など、Kガード的なエントリーから50/50、そしてサドルで内ヒールを極めた。あの流れなど柔術でも、MMAでもなくダナハーの足関節でした。

「それはグラップリングのクラスがあるからです。柔術の時にヒールは当然しないので、グラップリングクラスでやってきたことを試合で出しました」

──素晴らしいです。

「ホント、日々のグランドコアでの練習の成果を柔術とMMAの両方で出したいと思っているだけで(笑)」

──MMAでは他で行われているプロ練習や選手練習に参加というのは?

「もちろん行ったことはあります。ただ基本的にはグラウンドコアの練習だけですね。あまり出稽古をするタイプではないです」

──いやぁ、独自性があって興味深いです。ところで今回グラジエイターにグラップリングを提供したプログレスでは、グラップリング2ルールとコンバット柔術があって、凄く井上選手向きではないかと。

「あれは興味深いです。凄く楽しそうだなあって思って、記事を読んでいました。ノーギの試合は出たことはないのですが、特にMMAに寄ったポイント制のグラップリングは楽しそうだと思います」

──コンバット柔術はいかがですか、掌底は嫌ですか。

「いえ、別にMMAと変わらないですし。掌底がありで、ヒザをついていれば打って良いのなら、それに対応しないといけないですけど拒絶感はないです(笑)」

──MMA大会にあのルールの試合が組まれるということは、どう思われますか。

「やはり柔術家なので嬉しいです。組み技や寝技をMMAのファンに方たちに見ていただけると言うのは。どういう風に捉えられるのかも楽しみです」

──そのなかで今回、井上選手はMMAで春川広明選手との対戦です。

「コーチに試合をチェックしてもらったのですが、パラエストラ広島の選手らしくちゃんとしたMMAの選手ですね。僕は柔術家ですし、寝技が得意だと思ってもらっているでしょうが、昔から一通り何でもやってきて、何でもできるので色々な面を見せることができれば良いかなと思います」

──現状でMMAと柔術、目指すところはどこでしょうか。

「柔術ではムンジアル、MMAでは試合経験は全然ないので、グラジエイターで一つ一つ積み重ねて……チャンピオンの佐々木選手に挑戦できるようになる相手と戦っていきたいです。そうやってキャリアを積んで、大きな舞台でも戦ってみたいと思っています」

──ありがとうございました。では初インタビューですし、MMAPLANETの読者の皆さんに井上啓太とはどのような選手なのかアピールお願いします。

「えぇと……。難しいですねぇ(笑)、こういうことを話したことがないので。いつも書いていただいているように柔術もMMAも頑張っているので、柔術家としての側面だけでなくMMAファイターとしての僕の一面も見てもらえると嬉しいです」

■Gladiator016対戦カード

<フライ級/5分2R>
藤田健吾(日本)
有川直毅(日本)

<バンタム級/5分2R>
土肥”聖帝”潤(日本)
神田T-800周一(日本)

<フェザー級/5分2R>
中川皓貴(日本)
富田翔市(日本)

<バンタム級/5分2R>
山口翔(日本)
神野翼(日本)

<バンタム級/5分2R>
竹本啓哉(日本)
福島啓太(日本)

<ストロー級/5分2R>
N.O.V(日本)
蒔田真吾(日本)

<ライト級/5分2R>
井上啓太(日本)
春川広明(日本)

<フライ級/5分2R>
坪内一将(日本)
中西哲生(日本)

<バンタム級/5分2R>
今村豊(日本)
谷口武(日本)

<フォークスタイル・グラップリング60キロ契約/5分2R>
NavE(日本)
松本一郎(日本)

<フォークスタイル・グラップリング79キロ契約/5分2R>
森戸新士(日本)
濱村健(日本)

<サブオンリー・グラップリング82キロ級/10分1R>
佐々木信治(日本)
伊東元喜(日本)

<フェザー級/5分2R>
伊賀GORI(日本)
斎土泰斗(日本)

<58キロ契約/5分2R>
木村旬志(日本)
荒木凌(日本)

<フェザー級/5分2R>
宋鬼子(日本)
谷口軍曹(日本)

<バンタム級/5分2R>
大前健太(日本)
尾崎大和(日本)

<バンタム級/5分2R>
秋田良隆(日本)
永輝亜(日本)

<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
那須”独歩”育夫(日本)

<フェザー級/5分2R>
大和(日本)
桑本征希(日本)

PR
PR

関連記事

Movie