【WJJC2021】アンディ・ムラサキ✖ジョナタ・アウベス✖マテ・ガブ。BJJ界のカズ=54歳メガトンも
【写真】2試合目を越えれば、表彰台。やってくれそうなアンディ・ムラサキ (C)EUG
8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われる。
Text by Isamu Horiuchi
2014年から2019年まで6連覇を果たしている絶対王者、ルーカス・レプリの名前が見当たらない今年のライト級。が、レプリに代わって頂点の座を付け狙う新世代の有望選手が多数出場し、見逃せない階級となっている。
そのなかでも最注目は、日本のインパクトBJJでティーン時代を過ごしたアンディ・ムラサキのムンジアル黒帯初挑戦だ。
ムラサキは今年の4月、EUGプロモーションズが主催する道着着用160パウンド以下トーナメントで黒帯初戦を迎えた。1回戦と準決勝ではケネディ・マシエル、ジアニ・グリッポという世界トップクラスの強豪のガードを強烈なプレッシャーで封じ込めてペースを支配し、グリッポ戦に至ってはパスガードで完全制圧した後に上から仕掛けた三角絞めで衝撃の一本勝ちを収めた。
決勝でムラサキは2019年フェザー級世界王者のマテウス・ガブリエルの切れ味抜群のオープンガードに対し、それに劣らぬ切れ味のトップゲームで真っ向勝負を展開した。結果、両者譲らない一進一退のままタイムアップを迎え、ムラサキはレフェリー判定で勝利を収め──世界超一流の黒帯3人を連破するという衝撃の黒帯デビューを果たした。
日系ブラジル人の両親を持つこの若者が、EUGトーナメントに次いで、世界大会でも初出場初優勝の偉業を成し遂げることができるのか。期待とともに見守りたい。
そのムラサキを10月のパン大会で下したのが、こちらも世界大会初出場となるジョナタ・アウヴェスだ。この試合でムラサキ相手に50/50戦に持ち込んだアウヴェスは、終盤に上を取って逆転すると、そのまま背を向けて守りに徹して勝利、その勢いで優勝をさらってみせた。
2019年の世界大会にて茶帯の部を制した直後に、師匠のギィ・メンデスによって黒帯を授けられたアウヴェス。前述のEUG160パウンド級トーナメントでは優勝候補筆頭に挙げられながら、マテウス・ガブリエルのベリンボロでポイントを奪われ、まさかの初戦敗退を喫している。
翌月には、雪辱を期して階級上のEUG170パウンド級トーナメントに参戦し、50/50を有効利用して決勝まで勝ち上がる。そこで待ち受けていたのが、チームメイトのタイナン・ダウプラを倒した柔術の神の子ことミカ・ガルバォンだった。
天才の繰り出す凄まじい攻撃を耐え抜き、なりふり構わず文字通りマットに這いつくばりながら上をキープ、執念の優勝を果たしている。1アドバンテージを競い合う現代柔術にあって、ガブリエルは師匠のメンデス兄弟譲りの戦略を実行して勝ち切る力が際立つ選手だ。
前述のように、そのアウヴェス相手に1回戦でベリンボロを決めて勝利しつつ、決勝でムラサキに惜敗したのが、2019年フェザー級世界王者のガブリエルだ。
ムラサキ戦にしても、終盤ベリンボロで崩して見せ場を作るなど、ガブリエル勝利を支持する声も多かったほどの接戦だった。そしてガブリエルは、ムラサキ以降はブラジレイロを全試合で制するなど無敗街道を走っている。
21歳のムラサキとアウヴェス、24歳のガブリエル。今年に入って戦績も三つ巴で1勝1敗の若手3人は、全員横並びの優勝候補と言えるだろう。
さらに今回もう一人、この3人に並ぶ優勝候補の新世代戦士が参戦している。豪州出身の24歳、リーヴァイ・ジョーンズレアリーだ。2019年のヨーロピアン決勝にて絶対王者レプリ相手にデラヒーバガードを作ると、レプリ必殺のニースライス・パスに素早く対処し、旗判定こそ2-1だったが完勝して世界を驚かせてみせた。
この強力極まりないオープンガードに、ムラサキやアウヴェスはどう対処するのか、そして劣らぬキレのガードゲームの持ち主であるガブリエルとはどういう試合になるのか、興味は尽きない。
またこの同階級には、2018年世界3位の北欧のベリンボロ使いエスペン・マティエセン、2016年フェザー級世界準優勝のマーシオ・アンドレ、さらには2018年世界準優勝のヘナート・カヌートらの強豪選手も出場している。
ムラサキは初戦でギルヘルミ・ボルゲスと対戦し、ここを勝ち上がると、ジョナタ・アウベスが待ち受けている。向かいの山にはAJ・アガザーム、ジョーンズレアリー、マティエセン、カヌートという名前のある柔術家がひしめいている。
前半のブラケットにはマテウス・ガブリエルとマイケル・リエラJrの勝者が、アンドレが勝ち上がり候補筆頭の反対側のセミファイナリストと相対することになる。
この前半の枠には、なんと54歳のメガトンことウェリントン・ディアスが出場している。1996年に世界柔術準優勝を果たしてから、25年経過してなお世界大会に挑む──柔術界のカズ、鉄人の戦いは無謀とも思えるが注目せずにはいられない。
■視聴方法(予定)
12月9日(金・日本時間)~13日(月・同)
午前2時30分~Flo Grappling