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【Special】月刊、青木真也のこの一番:10月─その弐─伊澤星花 ✖パク・シウ「好感を持っちゃいます」

【写真】組み有りの打撃か、打撃有りの組みか。伊澤はMMAの打撃戦をいとわなかった (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年10月の一番、第二弾は10月23日に行われたDEEP104 から伊澤星花✖パク・シウ戦について語らおう。


──青木選手が選ぶ10月の一番、2試合目は何になりますか。

「伊澤星花✖パク・シウですね。伊澤選手は僕が思っていたより良い選手でした。本人はフィニッシュできないことに納得していないようですが、試合が始まったと同時に距離を詰めていきました。パク・シウのプレッシャーに下がることがなかったです。アレを見て、『この子は良い選手だ』と思いました」

──伊澤選手は打撃を貰うことに腰が引けていないですね。

「組みが混ざった打撃、ということではその通りです。この選手は将来性があります」

──おお青木真也にそう言わしめる、と。殴られてダウン、簡単にテイクダウンできなかったも初めての試合でした。

「女子だからというのはあると思いますが、打撃のプレッシャーを掛けることができていた。失速する場面もあったけど素晴らしいと思いました。一つ課題を挙げるとすると、ケージレスリングですね。ケージレスリングはあまり稽古できていないように見えました。

シングル、ダブルと入るのですが、そこから柔道流のクリンチと融合できていない。あそこは勿体ないですね」

──ただ、まだ4戦目です。ケージレスリングも実質、実戦では初体験という見方もできます。テイクダウンから起き上ってきた相手というのは。

「そうなんですよね。だから凄く未知数だった。それが今回の試合で、これから先があることが分かりました。だから、これからを考えるとケージレスリングかなと思いますね。あと今回の試合で49キロ、これまではストロー級ということを考えると、小さいですね」

──試合前のインタビューで、初めて減量をしたと聞きました。ただ海外にアトム級がないので、ストロー級で戦っていきたいと。

「48キロは北米にほぼないですしね。良いと思います。だからこそケージレスリングをしっかりとやってほしいです。そこができると、あのグラウンドの強さが生きています」

──将来性は絶対。どう実戦経験を積んでいくのか。

「国内はいないですからね。どういう文脈でやっていくのかは、興味深い。52キロだと小さいから、体ができるまで契約体重を念頭にいれてキャリアを積んでいくのもありますね」

──では現状のRIZINのトップ勢、いわば浜崎朱加選手ともキャッチウェイトで有り得るわけですね。

「う~ん、僕がこういうことを言うのはダメなんだろうけど、ケージで見続けたいですね」

パク・ジョンウン

──北米を見てストロー級で戦っていくということに通じているかとは思います。それ故のケージレスリングが課題という着眼点でしょうし。

そうなるとDEEP、佐伯さん人脈だと隔離措置が解かれ、韓国勢の招聘がいつ再開されるか。その辺りが伊澤選手の今後に大きく関係しているのかと。

シム・ユリ

「そうですね。パク・シウに勝ったことで、パク・ジョンウンやシム・ユリと契約体重で戦うということですね」

──はい、シム・ユリは9月にパク・ジョンウンを破りRoad FCのアトム級チャンピオンになりました。それとDouble GFCならアトム級王者のパク・ホビョンがいます。

パク・ホビョン(C)DOUBLE GFC

「階級差はあるけど、彼女に当てる強さを持っている選手は日本にいない。なら韓国勢になってきますよね」

──現状、伊澤星花選手と平田樹選手、女子MMA界の新星を比較すると伊澤選手の方がMMAになっているように見受けられます。

「平田より格闘技が出来ている。それは当たり前のことです。全然、伊澤選手の方がMMAになっています。打撃の距離感にしても。伊澤選手は単純にMMAが好きなんだと思います。

この間の大会では控室が近くで試合後に『良いファイト。凄く良いMMAだったと思います』ということだけはお伝えしておきました。あんまり納得いってなさそうだったけど(笑)。そう格闘技で、MMAだったという風に話したはずです。あまりね、ベラベラ話してはいませんが。

この選手をどう育てていくのか。それが彼女の岐路でもあるし、日本のMMA界の岐路でもある。にしてもMMAが好きなのが伝わってくるから、好感を持っちゃいますよね」

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