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【NOGI Worlds2021】ハイサム、無念。優勝候補─結果3位─のフェヘイラに0-7で2回戦負け

7日(木・現地時間)から10日(日・同)まで、テキサス州ダラス郊外ガーランドのカーティス・コーウェル・センターで、World IBJJF Jiu Jitsu NO-GI championship2021=ノーギワールズ2021が開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ノーギグラップリングの大会としては、ADCC世界大会に次ぐ権威を持つこのトーナメントの黒帯アダルトスーパーヘビー級に、ハイサム・リダが参戦。

先日のWNOチャンピオンシップの黒帯の部で見事に3位入賞、世界のトップグラップラーの一角に食い込んできたハイサムの戦いをレポートしたい。


<スーパーへビー級1回戦/10分1R>
ハイサム・リダ(ガーナ)
Def.3分10秒 by 三角絞め
シャビエル・シウバ(ポルトガル)

スタンドで前に出るハイサムに対し、体格で劣るシウバはフットワークで距離を取る。ときおりテイクダウンのフェイントを見せるシウバは、ダブルレッグを仕替けて押してゆくが、ハイサムは倒れずに場外へ。

スタンドから再開。足を飛ばすシウバだが、ハイサムはその首を掴みつつ、長い左手を伸ばしてのニータップでテイクダウンに成功、2-0と先制した。が、シウバもすぐに手足を効かせて距離を作り、レッスルアップして右足のシングルに移行する。しかし、懐の深いハイサムは倒すことはできず試合は再びスタンドの攻防に。

距離をとってテイクダウンのフェイントを見せるシウバが前に出ると、ハイサムは前に出てきたその右腕を両腕で掴み、アームドラッグから引き込みに。さらに下から右足を旋回させて仕掛けるが、シウバも腰を引いて回避する。

シウバは両足担ぎで攻撃に転じる。さらにハイサムの左足をヒザで潰しにかかるシウバだが、ハイサムはその左足を自由にして素早く三角絞めへ。足のロックを作った後に頭を押し下げると、シウバはあっさりタップ。ハイサムが見事に一本勝ちで初戦突破してみせた。

あっさり三角絞めに仕留められたシウバだが、ハイサムの長く強靭な足を制するのはそれだけ困難ということだろう。ハイサムとしては、積極的に攻撃を仕掛けてフィニッシュと、世界の舞台でもその持ち味を存分に発揮した会心の勝利だった。

<スーパーヘビー級準々決勝/10分1R>
ヴィニシウス・フェヘイラ(ブラジル)
Def. by 7-0
ハイサム・リダ(ガーナ)

見事な三角絞めで初戦を突破したハイサムを準々決勝で待っていたのは、優勝候補のヴィニシウス・フェヘイラ。2019年のADCC世界大会99キロ以下級にて準優勝に輝き、同年のノーギワールズの無差別級を制覇。まさに世界重量級のトップに君臨するグラップラーの一人だ。

対峙する両者。そのタンク型の体型ゆえに「トラクター」の異名を取るフェヘイラと、長身のハイサムの対称が際立っている。

開始早々座り込んだフェへイラに対し、素早くその足を捌いて右に動いてパスを仕掛けるハイサム。さらにハイサムは上から覆いかぶさるようにフェヘイラの背後を取ると、次の瞬間右腕を狙って腕十字に。フェへイラが背筋を伸ばしてポイントをずらすと、すぐにオモプラッタに移行するハイサムだが、フェへイラは立ち上がって腕を抜き、ハイサムのオープンガードの上になった。

開始早々嵐の如き攻撃を仕掛けたハイサムが、これでアドバンテージを獲得。が、同時に結果的に上になったフェへイラにも2点が与えられた。ハイサムが先日3位入賞を果たしたWNOならば、ジャッジに攻勢の印象を強く与えるこの攻防だが、IBJJFではこうしてフェヘイラがポイント先行となる。

ハイサムがクローズドガードを取ると、立ち上がるフェヘイラ。ハイサムはその両カカトを掴んでのスイープを狙うが、フェへイラは堪える。ここでハイサムが素早く距離をとって立つが、フェへイラがすかさずダブルレッグへ。今度はハイサムがそれをこらえて両者は場外へ。重量級の両者による、ダイナミックにしてスピードと迫力溢れる攻防だ。

試合はスタンドから再開。再びシッティングガードを取ったフェレイラは、ハイサムの右ヒザ裏を左腕で抱えて引き寄せ、得意のシングルレッグエックスの形を作る。さらに右足を引き寄せてバランスを崩されたハイサムだが、長い左足でフェへイラの頭を大きくステップオーバーし、逃れることに成功した。

が、フェへイラは再びハイサムの右足を抱えてシングルレッグエックスへ。今度はすぐ右足を取ったままレッスルアップにつなげ、ハイサムに背中を付けさせて上を奪取して4-0とリードを広げた。

左ヒザを入れてくるフェへイラに対し、ハイサムは右のニーシールドで守る。さらに右足を頭にかけてフェヘイラの左腕を狙うが、すかさずフェへイラはその足を押し除けて体重をかけてパスガード。サイドに付いて点差を7-0としてみせた。

下になったハイサムは、エビで距離を作り、前転してガードに戻すことに成功。が、ここで足がフェヘイラの足に当たってしまい、時間残り約半分の時点で試合が中断することに。

フェへイラが頭に包帯巻かれて再開。ハイサムが立ち、フェへイラ座って上下が入れ替わる。パスを仕掛けるハイサムだが、フェへイラの頭に手をかけたところで包帯が取れ、試合はまたしても中断。取れないように頭に包帯をぐるぐる巻きにされたフェヘイラは、まるで交通事故の被害者のような外見に。

再開後、左にパスを仕掛けるハイサムだったが、フェへイラも器用についてゆく。やがて上体を起こしてシッティングを取ったフェへイラに対し、ハイサムはそのワキに右腕をこじ入れてダース狙い。が、フェレイラは背中を付けて距離を取りながら、ディープハーフの体勢を作ってディフェンスする。チョークのグリップが解けると、フェヘイラは下から煽り、ハイサムの左足に絡んでのシングルレッグエックスを作る。

跳躍するようにそれを引き抜いたハイサムは、一気に左に動き、さらに大きく右に飛んでのバックを狙いへ。が、ここもフェへイラはマットに背中をつけて守る。ならばとハイサムが体を起こして別の攻撃を仕掛けようとしたところで、フェレイラは包帯が取れかけていることをアピール。試合は三たび中断された。

再開後、フェへイラは距離をとってシッティングへ。ハイサムは右のニースライスでの侵攻を試みるが、フェへイラは巧みにその右足を掴んで後方に煽り、クローズドガードに入った。

残り2分。攻撃したいハイサムが立つと、フェへイラは再びその右足を掴んでシングルレッグエックスに。それをハイサムが立って引き抜いたのに続き、フェへイラも立つ。ハイサムになかなか攻撃をさせない巧みなフェヘイラのインサイドワークだ。

スタンドでハイサムは足を飛ばしてから片足を取りにゆくハイサムだが、フェへイラは距離を取る。なんとか展開を作りたいハイサムは残り20秒で引き込み。そこから回転して足を狙うが、守りに徹したフェへイラに試合終了まで防がれてしまった。

序盤からダイナミックな攻撃を仕掛け、大いに持ち味を発揮したハイサム──特に開始早々の腕十字の仕掛けには、極めさせないことには定評のあるフェヘイラ──本日まで黒帯になってからの一本負けは、19年ADCC世界大会決勝のゴードン・ライアン戦のみだった──をもヒヤリとさせるものだった。

が、結果は0-7で完敗。ポジションを失っての仕掛けが即失点につながるIBJJFルール故にリードを許し、その後はフェヘイラの巧みなシッティングガードやシングルレッグエックスを攻略しきれず、点差を広げられてしまった。

果敢に極めを狙ってゆく今のハイサムのスタイルは、F2WやWNOには向いていてもIBJJFではどうしても不利となる。今後パスガードやスイープ等のポジション取りを磨いてゆくか、それともフェヘイラのような超強豪たちをもフィニッシュする強烈な極めを追求するか。新天地米国にて、その凄まじい潜在能力を開花させつつあるハイサムにこれからも注目していきたい。

ちなみにフェヘイラは次戦、現在クレイグ・ジョーンズらが主催のBチームで練習する米国の新鋭ジョセフ・ダーカイジングにバックを許し、そこからヒザ固めに移行されてまさかの一本負け。そのダーカイジングも決勝でディヴォンテ・ジョンソンに敗れて準優勝。世界の層の厚さを改めて感じさせる結果となった。

【スーパーヘビー級リザルト】
優勝 ディヴォンテ・ジョンソン(米国)
準優勝 ジョセフ・ダーカイジング(米国)
3位 エリオット・ケリー(ブラジル)&ヴィニシウス・フェヘイラ(ブラジル)

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