【UFN194】オクタゴン唯一のカザフ女子、マリヤ・アガポワ「MMAで私が何者かを見せてやるだけ」
【写真】この2年で、すっかり英語でコミュニケーションが取れるようになった(C)MMAPLANET
9日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFN194:UFN on ESPN+52「Dern vs Rodriguez」で、UFC唯一のカザフスタン女子選手マリヤ・アガポワがサビナ・マゾと対戦する。
サウスポー、右ストレートを伸ばして左ハイというビューティフルコンビネーションを持つ中央アジアの女子MMAファイターは、母国でボクサーとして活躍する一方で不遇な境遇にあった。カザフスタンはイスラム教徒の国でありアガポワのような女性が格闘技はおろか、スポーツをするのも高いハードルが存在したという。「誰も私をコントールできない」──MMAの試合展開ではない。マリヤ・アガポワはフロリダに拠点を移した自身の現状について、そんな風に語った。
──土曜日にサビーナ・マゾと対戦します。今の気持ちを教えてください。
「最高よ。キャンプはとてもスマートに行うことができたし、しっかりと準備できたことが凄く嬉しいわ。あとは減量が上手くいってくれれば……ね。今は順調に落ちてきているから、もう試合が待てないわ」
──カザフスタンやキルギス、中央アジアはMMAの新しいパワーハウスです。特にカザフスタンはロシアに続けとばかりに強い選手を輩出していますが、女子選手はマリヤ以外にほとんど聞いたことがありません。
「そうね……女子選手もいることはいるけど、私のようなレベルにある選手はまだMMAでは出ていないの。女子選手が強くなるには、もう少し時間が掛かるし政府にもアスリートをサポートしてほしいわ。
カザフスタンでは普通の人は女がコンバットスポーツを戦うことに、まだ否定的な風潮が残っていて。彼らが分かってくれるようになるまで、時間が必要ね。格闘技というか、カザフスタンは男社会で、彼らは女がスポーツをすることすら好ましく思っていないのよ」
──そんななかでマリヤは、なぜMMAを戦うようになったのですか。
「私はアクションムービーの影響と、学校で虐められていたから自分のことは自分で守ろうと7歳の時にボクシングを始めたの。目標はオリンピック出場だった。でもカザフスタンの連盟は私にその機会を与えてくれなかったわ。世界選手権もスパーリング・パートナーとして帯同されただけで。
7年間、私には十分な力があったけどチャンスすら回ってこなかったの。結果的に女子選手の五輪への派遣も取りやめられ、アスリートへのサラリーも打ち切られた。あの時、もうボクシングを続けるのが嫌になって。どうせなら、楽しく、希望を持って生きたいじゃない?」
──その通りですね。ただ、そこまでの状況だったとは……。
「あの環境でボクシングを続けるのは、無理。だからMMAを始めたの。私は自分の能力を証明したかった。その機会を連盟が与えてくれないなら、私は自分で力を見せつけてやろうって。五輪に行けるチャンスがないなら、MMAで私が何者かを見せてやるだけだし。結果的に私は今、フロリダで自立している。誰も私をコントロールなんてできないわ」
──その時に女子がMMAの練習をする環境にあったのでしょうか。
「正直、男子選手のなかには私とスパーリングをしたがらない選手もいたわ。それに当時はまだカザフスタンのMMA自体が、そこまで進んでいなかったから、練習方法もスパーリングも今の米国での環境と比較すると、全然整っていなかったと言わるわね」
──それはやはり宗教的なことも関係しているのではないですか。
「そうね……やっぱりカルチャーが違うし、私は仏教徒だけど全ての宗教を尊重している。ただカザフで多数を占めるムスリムは、古くからの伝統で女性は家にいるもので、男に守られている存在だという考えが強くて。でも、その人が死んだら誰に守ってもらうの? 自分で自分のことは守らないと。
私が幸運だったのは、リナット・サディコフという素晴らしいコーチに出会えたことね。ただのボクサーだった私にレスリングを徹底して指導してくれた。リナットは私がMMAで戦うための全てのスキルを授けてくれたから、ATTでの練習についていけたし、成長できたと思っているわ」
──米国に拠点を移したのは、練習するためですか。
「私は米国に住むつもりは一切なかったわ。2年前にコンテンダーシリーズに出場するために米国にやってきて、その時にマネージャーから『米国に住んで、練習してみる気はないか?』って誘われたの。もちろん、『ノー』なんていう選択はなかったわ」
──家族は反対しなかったですか。米国に1人で住むなんて、凄く心配だったでしょうし。
「両親に伝えた時も『OK、ハッピーになりなさい』ってあっさりしていたわね(笑)。『あなたの幸せが、私たちの幸せだから』って言ってくれて」
──素晴らしいご両親です。そしてATTでの生活が始まったと。
「本当に強い選手が多くて、優秀なコーチも揃っている。そこがカザフスタンと米国の違いね。私自身、レスリングと柔術は本当に成長できたわ」
──前回の試合でシャイナ・ドブソンに敗れたため、今週末のマゾ戦は非常に大切になってきます。
「前回の試合は、準備期間も十分じゃなかったし、体調も崩していて……。あの時からライフスタイルを見直してきたし、今回は本当に自信がある。必ず勝つわ。サビーナとの試合はハードファイトになるだろうけど、良いファイトになるはずよ。全ての力を使って、試合を支配する。そして素晴らしい勝利を手にするわ」
──マリヤ、ありがとうございました。最後に日本のMMAファンに一言お願いします。
「オハヨォ。トモダチ(笑)。 これはキョージさんが教えてくれたの(笑)。私は今、ココナッツクリークのATTヘッドクォーターでなくて、ATTサンライズでロジャー・コラールの下で練習しているけど、キョージは私の友人よ。今も色々とアドバイスをしてくれるわ」
■視聴方法(予定)
10月10日(日・日本時間)
午前2時30分~UFC FIGHT PASS
■UFN194対戦カード
<女子ストロー級/5分5R>
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
マッケンジー・ダーン(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
ランディ・ブラウン(米国)
ジャレッド・グーデン(米国)
<フライ級/5分3R>
ティム・エリオット(米国)
マテウス・ニコラウ(ブラジル)
<女子フライ級/5分3R>
マリヤ・アガポワ(カザフスタン)
サビナ・マゾ(コロンビア)
<ミドル級/5分3R>
フィル・ホーズ(米国)
デロン・ウィン(米国)
<バンタム級/5分3R>
クリス・グティエレス(米国)
フィリッピ・コラレス(ブラジル)
<ヘビー級/5分3R>
アレクサンドル・ロマノフ(モルドバ)
ジャレッド・ヴァンデラ(米国)
<フェザー級/5分3R>
チャールス・ロサ(米国)
デイモン・ジャクソン(米国)
<女子ストロー級/5分3R>
ルピタ・ゴディネス(メキシコ)
シルヴァナ・ゴメス・フアレス(アルゼンチン)
<ライト級/5分3R>
チャーリー・オンテヴェロス(米国)
スティーブ・ガルシア(米国)