【IFL】今シーズン、ベストイベントで新王者誕生
16日(金・現地時間)、コネチカット州アンカスビルのモヒガンサン・アリーナで行われたインターナショナル・ファイト・リーグ(IFL)。メインカードの3大世界タイトル戦は、ミドル級で番狂わせが起こり、ダン・ミラーがヒザ十字でライアン・マクギヴェンを破り、王座奪取を果たした。
【写真】ミドル級で新王者が誕生、ダン・ミラーがライアン・マクギヴェンをヒザ十字で撃破した (C) IFL
続いて行われたライト級世界戦では、挑戦者ダヴィダス・タルセビュチスが予想以上の仕上がりを見せ、今シーズンのIFLベストバウトといえる一進一退の攻防が続いた。結果は、3人のジャッジ全てが48‐47というスコアをつけて、ライアン・シュルツがタルセビュチスを下して王座防衛に成功した。
また、メインの世界ヘビー級戦は、肉弾相打つ打撃戦が繰り広げられ、王者ロイ・ネルソンが挑戦者ブラッド・アイムスを右フックで下した。
リング外では代表のジェイ・ラーキンが、資本の提供者にIFLの指揮権を譲ってもいいと発言するなど、先行きが不透明なIFLだが、リング上ではそんな低調なムードを吹き飛ばすかのような、熱戦が続き、所属ファイターのモチベーションの高さが伺えるイベントとなった。
■IFL:NEW BLOOD NEW BATTLES 試合結果は下記の通り
・メインイベントIFL世界ヘビー級選手権試合級4分×5R
ロイ・ネルソン(王者)
def.ブラッド・アイムス(挑戦者)
[1R2分55秒/TKO]
・第8試合IFL世界ライト級選手権試合4分×5R
ライアン・シュルツ(王者)
def.デヴィダス・タルセビュチス(挑戦者)
[5R終了/判定]
・第7試合IFL世界ミドル級選手権試合4分×5R
ダン・ミラー(挑戦者)
def.ライアン・マクギヴェン(王者)
[1R3分36秒/膝十字固め]
・第6試合ライト級4分×3R
ダニーロ・ビルフォート
def.マイク・マッセンジオ
[1R3分25秒/膝十字固め]
・第5試合ライト級4分×3R
ジョン・ソーダー
def.ザック・ジョージ
[1R47秒/TKO]
・第4試合ミドル級4分×3R
マット・ホーウィッチ
def.ジョーイ・グゥエル
[3R終了/判定]
・第3試合ウェルター級4分×3R
ジョン・ハワード
def.ニック・カランドリノ
[3R2分24秒/TKO]
・第2試合ライトヘビー級4分×3R
アーロン・スタークス
def.ラモン・リスター
[3R終了/判定]
・第1試合ライト級4分×3R
ジョン・フランキー
def.フランク・ラティナ
[1R2分19秒/チョーク]
・第4試合ミドル級4分×3R
マット・ホーウィッチ def. ジョーイ・グゥエル
[3R終了/判定]
左ローから組むつくホーウィッチ。グゥエルはヒザをボディに叩き込んでいく。ブレイク後も同じような展開でコーナー、ローブに詰まった展開が続き客席からブーイングが起こる。再びブレイクがかかり、試合がリスタートするが、局面に大きな変化は見られない。腕十字マスター=グゥエルと、エディ・ブラボーが認めたラバーガードの使い手=ホーウィッチの戦いは、3度目のブレイク後ついにホーウィッチがテイクダウンに成功し、寝技へ移行。しかし、残り時間は20秒で効果的なパウンドを落とすことなく1Rは終了した。
2Rも初回と同じようなたちあがりとなり、ブレイク後にグゥエルがコーナーにホーウィッチを押しこむ場面も見られたが結局、テイクダウンできずに再びブレイク後。試合が再開した直後にテイクダウンを奪ったホーウィッチ、グゥエルはガードから左腕に十字を狙うが、ホーウィッチは構わず右のパウンドを落としていく。
最終3R、「最後だぞ」とセコンドにハッパをかけられてコーナーを飛び出したグゥエルだが、このラウンドはすぐにテイクダウンを許し、サイドを奪われてしまう。しっかり抑え込んで、パウンドを落とすホーウィッチは、グウェルに足を戻させない。そのまま細かいパウンドを落とし続けたホーウィッチだったが動きが少なく、ここでもブレイクを命じられてしまう。その後の展開でようやくテイクダウンを奪ったグウェルだが、ホーウィッチがラバーガードを仕掛けたところでタイムアップ。ブレイクを繰り返した試合は、ホーウィッチが3‐0で判定勝ちを収めた。「蹴り、パンチが成長したところを見せたかったんだ」というホーウィッチだが、その決意は観客にとって歓迎すべき想いにはならなかった。
・第5試合ライト級4分×3R
ジョン・ソーダー def. ザック・ジョージ
[1R47秒/TKO]
ソーダーがいきなりフックをヒットさせ、ジョージをコーナーに押し込む。一度はリング中央まで、ソーダーを押し戻したジョージだが、右ストレートを顔面に浴びて、そのままコーナーを背負うように腰から崩れてしまう。一気呵成にパウンドを落としたソーダーが、47秒TKO勝ちという衝撃のIFLデビューを果たした。
・第6試合ライト級4分×3R
ダニーロ・ビルフォート def. マイク・マッセンジオ
[1R3分25秒/膝十字固め]
スタンドの打撃からテイクダウンを狙ったマッセンジオ。テイクダウンには成功したが、ビルフォードのラバーガードに効果的な攻撃を見せられず、またビルフォードもディフェンスに徹していたため、ここでブレイクが命じられる。リスタート後、もみ合うように打撃を繰り出す両者だったが、ビルフォードが狙いを足に定める。と、コーナー際でヒザ十字を極めたビルフォート、3分25秒でマッセンジオからタップを奪った。
・第7試合IFL世界ミドル級選手権試合4分×5R
ダン・ミラー(挑戦者)def. ライアン・マクギヴェン(王者)
[1R3分36秒/膝十字固め]
この夜、最初の世界戦はミドル級戦から。この大会の翌朝に飛行機に飛び乗り、戦極でホジャー・グレイシーのセコンドにつくヘンゾをコーナーに従えたミラーが、まずはパンチをヒットさせる。左フック、右アッパーを遠い距離から放つリーチの長い王者マクギヴェン。
得意のアッパーがミラーを襲う。ボディフックで返すミラーは、マクギヴェンのハイの直後に左フックをヒットさせる。ミラーのテイクダウン・アテンプトをギロチンで切り返したマクギヴェンだが、挑戦者は首を引き抜きトップをキープ。バアフラーガードからリバーサルを狙うミラーは、距離を作り立ち上がる。足を捌き、パスを狙うかに見えたミラーだったが、なんとここでヒザ十字に移行。
一度はヒザを抜きロープ際で立ち上がろうとしたマクギヴェンだったが、ミラーが前転しながらもう一度ヒザ十字を仕掛けると、完全に足が伸びてしまいタップアウト。ダン・ミラーが3分36秒、番狂わせを演じIFL新世界ミドル級王座を獲得した。
「キックが痛かったよ。この機会を与えてくれたIFLに感謝している」と新王者は、笑顔で語った。
・第8試合IFL世界ライト級選手権試合4分×5R
ライアン・シュルツ(王者)def.デヴィダス・タルセビュチス(挑戦者)
[5R終了/判定]
IFL世界ライト級王座2度目の防衛戦に挑むシュルツ。「スタンドより倒して、パウンドでKOする」と王者に対し、挑戦者タルセビュチスは「スタンドならスタンド、寝技を望むなら寝技で戦うよ」と自信を伺わせリングへ。セコンドは「この試合を見るために、一旦、日本から戻ってきたんだ。この試合は世界のライト級戦線でも非常に重要なものになる」というヘンゾ・グレイシーが務めた。
遠い距離から右ストレートを放つシュルツに対し、タルセビュチスはハイやローなど蹴りで応戦する。サウスポーのタルセビュチスは、距離が縮まると突き飛ばすように距離を取りスタンド戦を続ける。シュルツのパンチでバランスを崩し、ロープから半身が飛び出してしまった挑戦者だが、王者は深追いすることはない。
タルセビュチスのパンチがヒットすると、初めて王者がテイクダウン狙いで組みつく。距離を取り直した挑戦者は、パンチで詰めながら組みつくと、シュルツのももにヒザを突き上げていくが、一発が急所を直撃。試合はそのまま続行され、両者仕切り直しのように距離を取ったところで、緊張感溢れる1Rが終了した。
2R、タルセビュチスのワンツーがヒットし、テイクダウン狙いのシュルツの首筋に左ハイキックがヒットする。組みついて、テイクダウンを奪ったシュルツ。十字狙いのタルセビュチスは首を両足でフックし、パウンドを防ぐ。首を引き抜いたシュルツは強烈な左のパウンドを挑戦者に落とす。得意のパウンド・ゲームへ移行したい王者だが、タルセビュチスのガードワークが固く思うように攻めることができない。レフェリーがブレイクを命じ、試合がスタンドに戻ったところでゴングが鳴る。
3R、開始早々に豪快なテイクダウンを奪ったシュルツ。タルセビュチスは右腕へ十字を仕掛けるが、王者はこれを引き抜き、担いでパスに成功する。しかし、ここで挑戦者がロールに成功しトップを奪い返し、サイドマウントへ。立ち上がりながら、片足タックルを狙ったシュルツのバックをうかがったタルセビュチスは、そのまま前方へ回転し腕十字を仕掛けたが、トップを奪い返した王者がコーナーにつめてパウンドを落とす。足を抜くことができない王者のパウンドはクリーンヒットすることなく、一進一退の攻防が続いた。
両者とも、やや肩で息をするようになった4R。片足タックルから、タルセビュチスがテイクダウンを奪う。切り返し片足タックルを狙う王者。試合がスタンドの展開に戻ると、今度はシュルツが意地のテイクダウンを奪い返す。中腰でパウンドを狙ったシュルツの右腕に、挑戦者の腕十字がタイトに襲う。しかし、王者はタルセビュチスの体を持ち上げ、強引なスラムでこの危機を脱する。
インサイドガードからパンチを落とすシュルツは、足をさばいてパスガードに成功する。すぐに足を戻した挑戦者だったが、シュルツは両足を畳み、一気にマウントを奪うと同時に強烈なパウンドをタルセビュチスの顔面に落とす。思わず亀の態勢になった挑戦者、バッククラブの態勢から王者はチョークを狙うが、ここで4Rが終了した。
王者のペースで終わった4R、挑戦者は明確なポイントが欲しいところ。バランスを崩したシュルツの頭部にヒザ蹴りを見舞ったタルセビュチスだが、シュルツはここでテイクダウンを奪う。ガードから片足タックルを仕掛けた挑戦者だが、王者はスイッチからバックを奪い返し、タルセビュチスはガードへ移行する。
パスを仕掛け、パウンドを落と隙を窺う王者は、距離と作って立ち上がろうとした挑戦者の試みを遮断する。ラバーガードを外し、パウンドを落としたシュルツ。タルセビュチスの動きがややスローになってくる。得意のハーフガードからパウンドを落とそうとするシュルツに対し、挑戦者はフックガードを駆使するが、細かいパウンドを受け続け試合が終了した。
決定機こそ訪れなかったが、最後はフィジカルとスタミナで挑戦者を突き離した王者シュルツ、3人のジャッジが48‐47という採点をつける厳しい試合を切り抜け、2度目の王座防衛に成功した。「アームバー? 大丈夫、俺は頑丈なんだ。妻と子供たちの下にベルトを持ち帰りたかった。誰とでも戦う、僕がこの階級のベストだと信じている」とシュルツ、ノンストップアクションの精神戦を制し充実の表情を浮かべていた。
・メインイベントIFL世界ヘビー級選手権試合級4分×5R
ロイ・ネルソン(王者)def. ブラッド・アイムス(挑戦者)
[1R2分55秒/TKO]
左ジャブを繰り出す両者、リーチで上回る挑戦者の方が分がいいように映る。が、直後にこの相内格後の打ち合いのなかで、王者ネルソンのクロスオーバーが右フックがヒットし、アイムスの巨体がダメージで揺れる。距離をつめて、パンチを放つ王者は距離をとって飛び込むようなパンチを繰り返す。コーナーにアイムスを詰めた王者がテイクダウンを狙うが、ここでロープを飛び出してしまう。
リング中央で試合再開なると、ネルソンの右フックがアイムスにヒット。ダメージが蓄積する挑戦者は、相内でも部が悪くなる。左ジャブ、から右フックを放った王者。このライトハンドが、アイムスの顔面を豪快に打ち抜くと、挑戦者は腰から崩れおちるようにキャンバスへ。パウンドの追撃を狙った王者だったが、直後にレフェリーが間に割って入り、試合が終了。2分55秒、KO勝ちで王座防衛に成長したネルソン。試合では見せることのないスピニングバックキックのデモンストレーションを見せ、「スタンドで戦おうと思っていた。狙い通りの試合展開だった。アイムスはずっと前に出てきたので、ハードな戦いになった。バハマかプエルトリコで、バケーションを取りたい」という言葉の続き、自らのウェブページでのTシャツやDVDセールスを強調しリングを後にした。
その陽気なキャラクターで今後もIFLも引っ張っていきそうだが、ヘビー級偏重のニュー・プロモーションからのスカウトの手が伸びることも覚悟しないといけないだろう。