【Special】月刊、青木真也のこの一番:2020年12月─その壱─マゴメドフ×マトス「レブニー的Bellator」
【写真】超ド級レスラーがベラトール・バンタム級戦線で如何に活躍していくのか(C)MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
今月は変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。
青木が選んだ2020年12月の一番、第一弾は10日に行われたBellator254からマゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトスについて語らおう。
──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、最初の試合をお願いします。
「マゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトス戦です。笑っちゃうのがマゴメドフだけでなく、相手のマトスもACBで戦っていた選手なんですよね。ピョートル・ヤンに負けてACBでは2勝1敗とかで」
──対するマゴメドフはヤンに勝ってACBバンタム級王者になっています。「そこ、やっぱり引用しますよね。でもピョートル・ヤンに負けてベルトを失っていることは強調しない」
──それは試合を盛り上げるために、ピョートル・ヤンと1勝1敗、勝ったのは接戦で負けたのは完敗……とはしないですよね(笑)。
「アハハハ。そしてピョートル・ヤンに勝っているから、バリバリの殴り合いができる選手だと思われていたかもしれないけど、超ド級のレスラーですしね(笑)。ACAとかチェックしていない人は、どんなロシア人が出てきたのかって楽しいだったからもしれないけど、実際は試合が跳ねる系じゃない。試合内容だとオレッグ・ボリソフやルスタン・カリモフの方が面白い」
──その両名とヤン、マゴメドフでACBバンタム級四強でした。
「ハイ。で、試合でいえばピョートル・ヤン、ボリソフ、カリモフの方が面白いんですよ。ただ試合は跳ねないマゴメドフですけど、ボディクラッチからレスリングは抜群に強いです。襷にしなくて、ボディクラッチが。エスケープを絶対にさせないし、スクランブルを起こさせない。そういう堅実なレスリングが強い。ヤンとかなんでも強いじゃないですか。UFCの選手ってレスリングだけっていうのはもう見られない。ただし、ここまでレスリングが強い選手はいるのか。
一点突破で何でも強い選手とやってどうなるのだろうかっていうぐらいレスリングは強いですね。ロシアのレスリングでいえば、ブラジル人のACAフェザー級王者のフィリッピ・フロレスが計量オーバーして。そのフロレスにKO負けしたマラット・バラエフ……あのユサップ・ライソフに負けている選手かんですけど、バラエフも打撃に特化しているのに相手がノヴァ・ウニオンのストライカーになると、一気に組みに行ったんです。
ああいう試合を見ていると、ロシア人ってフリースタイル・レスリングやサンボが強いから打ち合えるというのを表していると思います。
まあバラエフは45歳だけど、これから肝になるのはヤングイーグル(※ACAの人材育成大会)出身の選手かと。バラつきがあっても、あそこから抜けてくる選手は強いですよ」
──フライ級王者になったアズマット・カレフォフとか、ヤングイーグル出身ですね。
「あの春日井に勝ったヤツですね。ロシアは篩落としができる。ヤングイーグルで鍛えられた人間が勝ち残ると、やはり強いですよ。でも、そんなレスラーで試合は地味なマゴメドフがマトスと戦うとかっていうのは、ビヨン・レブニー時代のようですね」
──最近の兆候でいえば意外なマッチアップでした。
「ウェルター級のシャミル・ニカエフとか、なんか投入していますしね」──ニカエフは本来はライト級の選手で、ロシア勢は世界中を侵食しています。そのマゴメドフは、アン・アルタチュラ政権に挑むことになりますが、ベラトールのバンタム級戦線は大晦日に復帰する堀口恭司選手も元チャンピオンで強力なタイトルコンテンダーです(※同取材は12月30日に行われた)。
「堀口選手はケージでも大丈夫ですよね。朝倉海選手は、そこは分からない。堀口選手と朝倉選手が同じ相手10人とやるとアベレージで勝率が高いのは堀口選手だと思います。でも、朝倉選手の方が派手な勝ち方はできる。
だからこそ、この2人の試合は完成度の高さでいえば堀口選手だと思っています。マゴメドフと戦うことを考えても、堀口選手はダリオン・コールドウェルに勝ち、UFC時代にはアリ・バガウティノフに勝っていますからね」
──既に超ド級のレスラーとロシアンに勝っていると。
「堀口選手はラウンドマストでも足が使えて打撃があるから、相性は良いと思います。大晦日にケガ明けでどういう試合ができるのかは見る必要がありますが、堀口選手がマゴメドフやアルタチュラと絡むととても面白いでしょうね。
そこはスコット・コーカーのベラトールですけど、マゴメドフなんてビヨン・レブニー時代のベラトールの面白さでもあるし、興味深いですね(笑)」