【ONE114】松嶋こよみと対戦、ゲイリー・トノン─01─「試すのは練習で十分、勝つためだけに戦う」
【写真】コロナ禍直撃といっても過言でない時を過ごしながら、グラップリングの試合に出て、MMAファイターとして準備を怠ることはなかったトノン(C)MMAPLANET
12月4日(金・現地時間)、シンガポールのシンガポール・インドアスタジアムでONE114「Bing Bang」が開催され、ゲイリー・トノンが松嶋こよみと対戦する。
タン・リー時代を迎えたONEフェザー級戦線に、大きく影響を与えることは間違いない大一番を控え、自らのジムのオープンと閉鎖、激動の数カ月を送ってきたゲイリー・トノンに話を訊いた。
──シンガポールに発つ前日という慌ただしいなか、取材を快く受けていただきありがとうございます。
「いや、こちらこそありがとう。シンガポールに向かうのは明日の夜で、これから24時間後だね(笑)」
──松嶋戦に向けて、調子はいかがですか。
「ヘンゾ・グレイシー・アカデミーで、ジョン・ダナハーの指導の下フルタイムのキャンプが行え、全てにおいて万全だよ。まぁMMAの練習をしているのだから、少しはケガはある。でも、まるで問題ない。とにかく精神的に充実しているよ。
イベントが2週間延びたのは想定外だったから、それでちょっと疲労が溜まった時もあるけど、今は問題ないよ。それよりもCOVID19のテストがあったり、そっちの方がいつもと違って少し神経を使うよね。テストの結果は72時間待つ必要があって、まだ結果は分からない。それから試合まで5日間は隔離措置下におかれる。
ただ既にシンガポールの状況を経験した友人からは、ONEのスタッフは本当に予防対策をしっかりとし、同時に選手のケアも素晴らしいものがあったと聞いているよ。まぁ部屋に1人で籠りっきりなるなんて、通常では考えられない稀なことだけど、全員が同じ環境だからね。とにかくキャンプを満足して終えることができたのが一番だよ」
──米国だけでなく、世界中で感染者が再び増えています。それでもキャンプに影響はでなかったのですね。
「ようやくMMAや柔術スクールも動き始めたけど、また近々シャットダウンされるだろうね。でも、この試合に関しては問題なかったよ。以前とは違う様子のジムで、トレーニング・パートナーも限られてしまう。でも、試合に向けてはプロとして、トレーニングをしっかりと積むことができた。
もちろん、COVID19の影響はとてつもなく大きいよ。僕もニュージャージー州のイースト・ブランズウィックに開いたばかりのブランズウィックBJJを閉めないといけなくなった。かなり投資をしたのに、それを失うことになった。ズームで指導をしたり、これまでとは本当に違う状況が生まれた。とてもストレスは大きかったよ。
ただし、僕の場合はジムを閉めても収入源を他に確保はしていたから、そこは良かった。何より、こんな最悪な状況でもなんとかOKな僕と違い、もっと深刻な人も多い。経済活動と感染症から身を守ることを同時に行うことは簡単じゃないよ。自分のことよりも、大切な人の多くが深刻な状況にある。そのことが、一番のフラストレーションいなっている」
──う~ん、誰もが──ですが、格闘技界の人々が受ける影響は本当に小さくないです。
「幸い、僕は1カ月ほど前からノース・ブランズウィックにあるUFCジムで、ブランズウィックBJJをオペレートできるようになった。ここではジムを閉めても、賃貸料を支払わなくて良いっていう条件をくれてね。そこは安心できるよ。以前より、ずっと安全にジムをやっていける。
練習環境も変わったね。それでも、練習だけは欠かさなかったし、グラップリングの試合もしてきた。だから、今回の試合に関しては一切問題がない。行けると思ったから、自信をもって受けたんだよ」
──しかし、大変な数カ月だったことには違いないですね……。ところでゲイリーは去年の5月にONEで中原由貴選手に勝利し、9月にADCCに出てからパンデミックまでの5カ月試合に出ていなかったです。これはジムをオープンするための準備などが原因だったのでしょうか。
「ノー、契約について交渉をしていたからだよ。そこが片付いて試合が組まれる予定になっていたけど、パンデミックが起こった。シンガポール政府は米国と違い、国外から外国人が訪れることを禁じONEはずっとイベントを開くことができなくなってしまったんだ」
──ところで昨年5月の中原選手との試合は、それまでの4試合とは違うような感じがしました。
「うん? どういうところで、かな?」
──それまではMMAで試合をしながら色々と試してきたのが、中原選手との試合では本当の意味で勝負にいった。そういう風に見えました。
「全くもって同意するしかないね。あの試合までは、何ができるのかをテストしていた。ナカハラとの試合でも、自分を試したのは確かだけど、それは通常の試合でのトライといえる。それまでの試合では一つ一つ状況を確かめ、どう動くのかなど考え、確認していたことは間違いないよ。
ただ練習中は課題を克服するために動くけど、試合なんだから勝つために考え、動いていたことは確かだよ。でも、もう自分を試すのはトレーニングの時で十分、勝つためだけに戦う。それがナカハラとの試合だったんだ」
<この項、続く>