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【Special】月刊、青木真也のこの一番:番外編─青木真也の忖度・解説「面倒くさがらずやっていきたい」

【写真】青木真也はケージの上でも放送ブースでも、真剣勝負をしている (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

ここでは番外編として、青木に二面性を持つ解説について尋ねた。

格闘技を伝える、その対象を考えた青木話術。忖度無しと言われる青木の解説だが、実際には格闘技の在り方に関して、推し量るばかりのスーパー忖度解説だった。


──先日の青木選手のABEMAの解説を拝聴させてもらって、少し気になったことがあり、その点について話を伺わせてほしいのですが。

「もちろん、どういうところですか」

──格闘技的に好きな試合と、そうでない試合で話している内容が変わっていますよね。

「そうですか(笑)」

──タン・リー✖マーチン・ウェンの時は相当に技術的なことを話していましたが、いえば余りテクニック的に見るべきことがない試合になると一気にプロレスラーモードになっていたような気がしました(笑)。

「そりゃタン・リーとウェンの試合や、クリスチャンの試合は技術で語ることができますけど、あのインド女子の試合とは、そういうことで話はできないですよね。MMAとしては厳しいです」

──マーケティング戦略があるのでしょうが、ONE国際大会復活第1弾のライブマッチ。4つの世界戦の中から一つをオープニングで選ぶのも、ショーとして全くありかと思いました。

「ですよね。ばかりか、世界戦も3試合ぐらいで良いかと」

──そういうなかで解説者の人間性が変わる(笑)。どう伝えるのかっていう部分ですけど、70キロまでじゃないと伝わらないという意見は、フェザー級以下の選手には失礼ではないかと。

「でも、それは明確に思っています。格闘技は大きい人がやるものです。人を魅了するなら。言い方は悪いけど、そうでないと伝わらない。

もちろんMMAが好きな人間は別です。好きな人間だけだとパイは少ない。今の格闘技自体はMMAだけでなく、キックにしても軽量化が進んでいます。どんどん勝つために軽くしている。

そうなると本末転倒だと思います。それだとやっぱり伝わらないから。堀口選手や朝倉海選手、那須川天心ぐらいまでいけば伝わりますよ。でも、そうじゃない選手の試合は伝わらない。

PRIDEやK-1の時代だって大きな選手がやっていると、外国人同士の試合だって皆が見ていた。でもK-1 MAXになると魔裟斗という日本人エースが必要になった。そのMAXですら70キロありました。

僕自身、70キロじゃないですか。やっぱり70キロは最初、伝わりづらかったです。そこがあるから、経験則としてデカい方が伝わると思っています」

──それを口にしてしまう試合と、そうでない試合があった。いずれも重量級ではないのに。

「ABEMAの対象は一般の人達で。その人達が視ているなかで、タン・リー✖マーチン・ウェンは実力があって技術力でも良さが伝わる試合だから。アレはちゃんと話せました」

──それは対象が一般層であっても、と。

「極力、分かりやすく視ている人に立ち方なんかを話して、技術と試合で話すことができました。あの試合だったら立ち位置や距離の話でも、伝わります。

僕はレベルの高い選手の良い試合は、技術を話しても世の中に伝わると思っています。階級が下がるとそれがなくなっているのですが、バンタム級は伝わるかもしれないです。でもボクシングでも50何キロで凄い、凄いっていう人がいるけど、それですら凄いのかって僕は思っているし」

──それぞれの国のアベレージの体格も関係してこないでしょうか。180センチ、85キロの国と170センチ&65キロの国では自国の選手の活躍する階級が違ってきます。格闘技もスポーツも国威発揚、愛国心が顔を覗かせる場ですし。

「それでも大きさは関係ありますよ。佐藤天が何が凄いって、ウェルター級でやっている。それが凄いんです」

──これ自分が言っちゃうと、もうダメだろうってことですけど。UFCであってもバンタム級やフェザー級の方がライトヘビー級やヘビー級より、よほど面白くないですか。

「あぁ、それは……そうですね。そこにいくと微妙になりますね(笑)。UFCのヘビー級だとブロック・レスナー✖アリスター・オーフレイムがピークで」

──それこそジェネラルを考えた時ですよね。

「ハイ、だからデカいって凄いことで。でも、それをいえば日本だとUFCが一般層に向いていないから」

──確かにそうです。露出ということを考えても。

「まぁ会場で観るのと、画面で視るのは違っていて。でも、ここから暫らくMMAはモニターで見るモノになるかもしれないですしね」

──その論理でいけば、相撲が一番ですね(苦笑)。モニターで見てもすぐに決着がつき、分かりやすくて大きい……。

「女子とかその対極にあるけど、それで売れることがある、格闘技の中身では売っていなくて、それと同じかと。この間、RISEを観たんですけど、皆50キロです。倒れないですよ。何ていうんだろうな、迫力ないよなって。

でも、その魅力を伝えていかないといけないのも事実で。将棋でも、こうなるんだから……伝え方はあるはずです。将棋のルールも全く分からないのに、あれだけ人気が出て。Numberが特集を組む。それって売れるってことじゃないですか」

──そうなると将棋ファンが購読している将棋雑誌って今、売れているのか。格闘技もパイを広げるジェネラルと、見続けてくるコア層。伝えるにはどちらにかに振り切らないと、凄く中途半端いなり、両サイドの注意を削ぐことになるのではないかと感じることもあります。

「いずれにしても、伝え方ですよね。良い伝え方をしたいと思っています。そこは本当に思っています。一般と好きな人、一般の人に届かせる一方で、好きな人にも納得してもらえる伝え方──ポップでやる時はポップでやる。伝えるのが面倒くさいモノも、面倒くさがらずやっていきたいです」

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