【Special】WithコロナのJ-MMA─02─ABEMA北野雄司Pに訊く「共有する場所、時間をできるだけ減らす」
【写真】現状の検査では感染を起こりえる。よってゾーニングで予防対策をこうじるABEME中継大会だ(C)MMAPLANET
COVID19のパンデミック、地球はニューノーマルの時代を迎えた。日本でも4月と5月の緊急事態宣言を経て、6月から経済活動が再開も、事態が終息することはない。
MMA界はかつてない状況のなかを生き抜く努力をしている。MMAPLANETでは各MMA大会の新型コロナウィルス感染に関しての現状とこれからを尋ねた。
2人目は緊急事態宣言下、4月17日にRoad to ONE02、5月31日にプロ修斗公式戦が会場非公開のABEMAテレビマッチを中継し、いち早くコロナと共生路線を打ち出していてABEMA格闘ch北野雄司プロデューサーの話を訊いた。
──無観客ライブ中継大会しか行われなかった4月と5月を経て、限定ながら客入れをした格闘技イベントの再開から2カ月。4月17日以来となるRoad to ONEが開催されます。新型コロナウィルスは存在し、そのなかで経済活動が再開された。そこが4月とは違うのですが、本質的にワクチンも薬もないなかでイベントを行うことは変わらないです。
「ハイ。そうですね。これまでお客さんが会場にいるイベントはKrushやRISE、修斗の生中継で関わらせていただきました。今からすると4月にROAD TO ONE02があったことが、もの凄く昔のように感じます。あの時と比較すると、K-1もRIZINもイベントを開いていますし、海外の格闘団体でも続々と活動を再開していることもあり、色々な実例を学べています。
それと我々と同じサイバーエージェントグループのNOAHとDDTというプロレスの大会にも関わらせていただいたことで、より経験を積むことができたと思います。今は何よりプロ野球とJリーグが観客を動員して行っている。そして4000人から5000人というファンが会場に足を運んでいます。同じような規模でイベントを開く人、もっと大規模にそして頻繁にやっている人がいます。そういう人達からも学びがあります
」
──「こんな時に〇〇を」という言葉を口にするアスリートはいますが、プロ野球は毎日のように行われ、世界中からスポーツの結果が届くようになった。4月とはまるで違うんだという感覚があります。
「そうですね。だから今でも選手は試合があると、『こんな時に試合を組んでいただいて』という風に感謝の言葉を口にします。ですが、僕はもうその言葉は言わなくても良いんじゃないかと感じています。久しぶりに自分がリングやケージに立つと、自然にそう感じるのかもしれないですが………」
──もう、これは普通だと。そんななか大きな規模のイベントから学べるという言葉がありましたが、具体的な事例があったのでしょうか。
「もともとJリーグの方たちが、5月に実施した修斗の無観客大会を視察しに来てくださいました。そういう縁もあり、今では私たちより経験を重ねているJリーグの方とは色々と話しをさせていただいていますし、Zoomで報告会のようなこともしています」
──Jリーグの学びなどもいかし、今回の大会の予防対策はどのようなことを行われますか。
「ONEの名前をお借りして行う大会ですし、海外ではUFCもそうしているように、PCR検査を複数回行って、選手や関係者が陰性状態にあることを証明し続けてイベントを開こうと思います。現状の有効な陰性証明の手段というのがPCRしかないので、PCR検査を重ねていきます。この記事が出る頃には2回目が終了したところじゃないかと思います。
ここまで私たちも格闘技やプロレス団体のPCR検査を延べ600件ぐらいやってきましたが、陽性だった人はゼロなんです。そういう意味で格闘技やプロレス業界の人たちの健康管理に対して信頼はあります。ですが、それが安全の裏付けとは言い切れません。
どれだけ検査をしても直後から感染のリスクは生まれます。だからこそ、次のフェーズとしてやるべきことは会場の中でのゾーン分け、ゾーニングです」
──動線を引くということですね。
「ハイ。PCR検査を極力多くの人が受けたうえで、ゾーンを分け、選手やスタッフを守る。会場をいくつかのエリアに分けて、グループ同士が接触する接点を可能な限り少なくしようと思っています。ゾーニングは、Jリーグや海外サッカーリーグがやっていることを参考にさせていただいています」
──選手とセコンド、それぞれのスタッフ、メディア、観客が会場にいます。
「まずグループを4つに分け、その中でゾーニングを行います。例えば選手や中継の出演者など、ケージサイドにいる人たちをAグループとします。Aグループの人たちは、大会前に1回から2回のPCR検査を受け、陰性の可能性が極めて高い人しか入れないゾーンを用意し、そのゾーンの中だけを移動ができるようにします。
続いてBグループですが、このグループは運営の中核メンバーなどがあたります。このメンバーには少なくとも1回はPCR検査を受けてもらいますが、それでもAグループとの接触は限られた数名が行い、感染リスクを高めないようにします。
そして、Cグループは技術スタッフなどです。このグループは『複数回のPCR検査を受けること』を必須としませんが、AグループやBグループと接触できる場所にはそもそも行きません。仕事をする場所や時間帯が異なるので、一切接点を持たないということです。
なお、取材を行う方々でも、PCR検査を受けていただいた方はBグループとなり、ケージサイドでの撮影や試合後の選手インタビュー等を、ソーシャルディスタンスを十分に取ったうえで行っていただきます。
そうでない方々は申し訳ないですが──Cグループとなり、選手とは対面しない形で試合をチェックしていただきます。
滞在する空間・場所、それと時間軸という面でゾーニングをしていきたいんです。他のグループが同じ場所を使うとしても、使う時間が違っていれば、両者が使用していない間にそこを消毒すれば、感染確率を下げられます。
最後に、観客とその対応をするスタッフというDグループがいて、AからDまでゾーニングをして、グループごとの人たちがそれぞれ接触しないようにします」
──それぞれがどれぐらいの人数になりそうですか。
「今回で言うと、AグループとBグループは20人規模ですが、Cグループになると数が増えます。その人数が全員PCR検査を受けると、興行全体の収支を脅かすことになります。だからCグループの全員を検査することは難しく、Cグループのなかにも限られた少数のメンバーだけ、Bグループとやりとりをすれば仕事が遂行できるようにします。
例えば僕自身はBグループに当たりますが、Cグループの人とは同じ会場にいてすれ違うことこそあれ、濃厚接触することはない、というような感じです」
──そうすると仮にCグループに感染者がいても、ゾーニングを徹底することで、その他のグループの皆さんに感染するリスクは相当に抑えることができるということですね。
「ハイ、僕らもお客さんとは一切接点がないようにしていきたいです。地上階に選手や演者さんの控室を設け、ケージサイドにいる人達がいる。2階の踊り場に中継など、技術さんたちがいて、その間の行き来する数を絞ることで感染リスクを下げていきたいです。
あとは申し訳ないですが、搬入作業をしてくださる人は、搬出の時間まで会場でないところで待機していただくなど。共有する場所、時間をできるだけ減らす、そして消毒を行うことでさらに感染リスクを減らせるかと思っています。
ただし以上のようなことを徹底して行っても、会場も大きくないですし感染が起こる可能性は常にあります。なので、これまで通りイベントに参加する方をリスト化して、万が一、が起こった時の追跡調査ができる体制を整えます」
<この項、続く>