【UFC246】ドナルド・セラーニが左に回り始めると、コナー・マクレガーKO勝ちの序曲
【写真】試合開始直後の立ち位置、セラーニの移動方向にまず注目 (C)Zuffa LLC/UFC
18日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC245「McGregor vs Cerrone」。メインは大会名にある通り、コナー・マクレガーが15カ月振りの実戦復帰マッチをドナルド・カウボーイと戦う。
生活保護を受けている状態からUFCデビューを果たし、今やMMAの歴史上一番の稼ぎ頭となったマクレガー。全てを手にして来た漢とはえ、一昨年10月のカビブ・ヌルマゴメドフ戦では己の勝利を欲する気持ちと自己顕示欲を示すだけでは、オクタゴンのトップに君臨することは難しいことを露呈した。
サッカーでも東京五輪に主催国枠で出場できる日本の──過去最強と謳われていたU23チームが、U23アジア選手権で中東3カ国に2敗1分とまるで良いところなく敗れ去った。ここぞという場面で、勝利の行方を決めるのは勝利欲よりも負けられないという危機感だ。U23日本代表は負けても五輪に出られる状況で、そのような精神状況を創ることは難しかった。
これは理解度や精神の作り方ではなく、もはや感性の部分だ。今回、このような危機感を持ってマクレガーがセラーニに向き合えるなら、彼は野生の本能を持ち続けているとしか表現のしようがない。野生動物は満ち足りると死に向かう。常にハングリーでないといけない。かつてのマクレガーがそうだったように、だ。
またフェザー級、そしてライト級時代にマクレガーが勝利を量産できた要因の一つに、フィジカルが挙げられる。彼のリーチ、キャンパスの長さ、制空権は対戦相手を大きく上回っていた。
そしてサウスポーの構えからレーダーのような左の蹴りを使い、理合いを感知すると踏み込む必要なく、左ストレートを打ち抜いて勝利を絶対のモノとしていた。マクレガーの特徴はこの左の蹴りを使うことで、対戦相手に右に回ることを許さず、ケージ際を左に回る=一方通行状態に追い込んでいく戦い方にある。結果、その移動する先が確定できることで、上記にあるように踏み込む必要がない位置からフィニッシュブローとなり得る左を放つことができる。
対戦相手との体格差が、このシチュエーションを創り上げるのに大いに役立っていた。今回、セラーニとウェルター級で戦うことで、大きなフィジカル差はない。ただし、セラーニを名勝負漢にした所以は攻撃を被弾する点にある。そこで数字で測れないタフネスさという不安定要素を武器に、反撃に出ることもできれば、そのまま敗れ去ることもあった。
マクレガーの左を受けると、名勝負とはならない。この時点で試合は終わるだろう。ではセラーニに何が必要なのか。それは左に回らないで戦うこと。そしてローで、マクレガーの右足を削るこだ。ただし、左ローはご法度だ。セラーニが左アウトサイドローを狙うと、マクレガーは蹴りで感知する必要もなく、左のパンチで試合をフィニッシュするだろう。
セラーニがマクレガーの前足を削り、動きに鈍らせるには右インサイドローが必要だ。それもローからパンチというコンビネーションを捨て、左斜め前に走り抜くような形で蹴り抜き──かつ左に傾き過ぎないよう、再び正対して位置関係としては蹴る前と同じ状態を維持すること。
仮にマクレガーがここですり寄るのでなはく、ステップインしてくるようだとセラーニは右に回ることも可能になり、組みつくチャンスにもなるだろう。前足を削るようなことができれば、ローからミドルに蹴りの位置を変えることできる。そうなれば……前足を削られ、腹を抉られると満ち足りた漢マクレガーは勝利を欲する気持ちも削られていくやもしれない。
名勝負漢セラーニが名勝負にならない選択ができるのか。彼が左回りでなく、左斜め前に移動するかどうか。その動きも頭をずらして、体を左に傾けてなお軸が乱れないでいられるのか。ケージを背負ったセラーニが左にサークリングするようだと既にマクレガーのKO勝利への序曲は始まっている。
■UFC246対戦カード
<ウェルター級/5分5R>
コナー・マクレガー(アイルランド)
ドナルド・セラーニ(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ラケル・ペニントン(米国)
<ヘビー級/5分3R>
アレクセイ・オレイニク(ロシア)
モーリス・グリーン(米国)
<女子ストロー級/5分3R>
クラウジア・ガデーリャ(ブラジル)
アレクサ・グラッソ(メキシコ)
<ライト級/5分3R>
アンソニー・ペティス(米国)
ディエゴ・フェレイラ(ブラジル)
<女子フライ級/5分3R>
メイシー・バーバー(米国)
ロクサン・モダフェリ(米国)
<フェザー級/5分3R>
アンドレ・フィーリ(米国)
ソディック・ユースウ(米国)
<ライト級/5分3R>
ナスラ・ハクパレス(ドイツ)
ドリュー・トバー(米国)
<フェザー級/5分3R>
チェス・スケリー(米国)
グラント・ドーソン(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
アレクサ・ケマー(米国)
ジャスティン・レデット(米国)
<フライ級/5分3R>
ティム・エリオット(米国)
アスカル・アスカロフ(ロシア)
<バンタム級/5分3R>
オード・オズボーン(米国)
ブライアン・ケレハー(米国)
<女子フライ級/5分3R>
サビーナ・マゾ(コロンビア)
JJ・オルドリッチ(米国)