【UFC107】テイクダウン一度も許さず、BJが完全防衛
■第11試合 UFC世界ライト級選手権試合/5分5R
[王者]BJ・ペン(米国)
Def.5R2分37秒/TKO
[挑戦者]ディエゴ・サンチェス(米国)
ディエゴの前進を冷静にスウェイでかわすBJ。勢いよくパンチを振るいながら、突進を続けるディエゴに右を打ち込むと、一瞬にして腰が沈んだディエゴの立ち上がり際、ヒザを蹴りあげた。
ダメージが残り、動けないディエゴにパウンドを打ち続けるBJ。いつ試合がストップされてもおかしくなかった状況だったが、必至にガードをとり、ケージに詰められながら立ち上がる。
ダメージが残ったまま左ハイを放つディエゴは、組みつこうと前進するが、またもアッパーを受ける。それでもBJをケージに押し込んだディエゴに対し、BJは冷静に体を突き放して距離を取る。一見して非常に柔らかく見えるBJのヒザと肩の動きに対して、ディエゴのそれはブリキの人形のように硬い。スプリングが効かない状態のディエゴの動きは大きくなり、パンチもテイクダウン狙いもBJに見切られてしまう。
残り30秒、飛びヒザを見せたディエゴ。パンチを打ち込もうとしたところで、BJのカウンターが再びヒットし、1Rが終わった。
2R、積極的に前に出るBJ。組みついたディエゴが、シングルレッグでテイクダウンを狙う。しっかりと両足をキャンバスにつけたまま、クラッチを切ったBJは、飛び込んでくるディエゴにまたもカウンターをヒットさせた。
低い姿勢のテイクダウンを切られたディエゴは、ここまで全く勝機のない戦いだが、それでも前に出続けるしかない。パンチのプレッシャーでディエゴをケージに追い込んだBJは、ディエゴの飛び道具を冷静に見切っていく。ディエゴはパンチを打つ際に体が開いてしまい、簡単にBJのショートレンジのパンチを受けることになる。
BJは右ストレートから左をヒットさせても、深追いすることなくオクタゴン中央に戻ると、カウンター狙いに徹する。残り30秒で、シングルレッグを仕掛けたディエゴに対し、スイッチでバランスを崩したBJは、このラウンドも優勢のまま終えた。
3R、やや息が荒くなったBJに対し、腹式呼吸のディエゴがシングルレッグへ。テイクダウンには至らないが、パンチを被弾せずに試合を進めるようになってきた。再びスイッチを狙うBJに、ディエゴは姿勢を崩しそうになりながら、右足をホールドし続ける。
ダブルに切り替えようとしたディエゴの左手にエルボーを落とすBJ、極めて冷静に戦い、ハイキックも苦もなくディフェンスする。ここでも組みついたディエゴは、左足を抱え上げ、ダブルにスイッチ。頭を押してディフェンスするBJが、その頭を起こしたディエゴに左エルボーを放つ。1Rの絶対的な危機を切り抜けたディエゴの徹底したテイクダウン狙いは、BJのスタミナを削るため。そのスタミナはBJに劣らないことは確かだ。
4R、逆転勝利には攻めるしかないディエゴ。勝負どころを潰すためにBJも無理をしない程度に前に出る。ディエゴの突進に左からアッパーを見せたBJだが、これは空を切り、互いに距離を取る。シングル狙いを切ったBJは、左をヒットさせ、ディエゴを攻めさせない。
テイクダウン狙いの距離感がやや狂い始めたディエゴだったが、アッパーからシングルでBJをケージに押し込んだ。自ら両ヒザをつき、頭をBJの股間に入れるが、ここにきて力技でテイクダウンを奪うことは無理に等しい。案の定、BJに突き放されたが、それでも距離を取られると組みつくディエゴに、テネシーの観客からブーイングが飛ぶ。
両手で自らの顔面をはたき、最後の5分を迎えたBJが大きく踏み込んで右を放つ。左ハイを返すディエゴは、オクタゴン中央でシングルに捉えケージに押し込むが、やはりテイクダウンには至らない。ディエゴは引きこみからの潜り、BJはスプロールから立ち上がり、寝技に付き合うことはない。
パンチを振るいながら、前に出て右ハイを見せたBJ、フィニッシュで試合を終わらせる気持ちの表れだ。と、この蹴りでディエゴの額が大きく割れ、傷を見た瞬間にドクターが試合続行不可能を告げる。
眉毛よりも大きく裂けたディエゴの額、BJは執拗なディエゴのテイクダウン狙いにスタミナを切らすことも、背中をマットにつけることもなく3度目の完全防衛に果たした。