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【EJJC2019】ライトフェザー級で嶋田裕太。不可解な裁定を凌駕する、絶対的な強さが求められる初戦敗退

15日(現地時間・火)から20日(同・日)にかけて、ポルトガルの首都リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会レビュー。第3回目はライトフェザー級においてメダル獲得が期待された嶋田裕太の試合を中心に同階級の模様を振り返りたい。
Text by Isamu Horiuchi


<ライトフェザー級一回戦/10分1R>
ペドロ・クレメンチ(ブラジル)
Def. by 0-0 アドバンテージ1-1 (ペナルティの数差)
嶋田裕太(日本)

初戦において、2016年のヨーロピアン茶帯ライトフェザー級にて敗れたクレメンチとのリベンジ戦の機会を経た嶋田。前傾姿勢からクレメンチのズボンの右ヒザ部分を掴みながらのタックルを試みる。対するクレメンチは腰を引いて防御。そのままシッティングで前に出る嶋田と、さらに腰を引いで両腕を伸ばして距離を保つクレメンチ。クレメンチが横に動いたところで、嶋田はその右足を抱えることに成功するが、クレメンチは嶋田の頭を押し下げて防御し距離を取る。

シッティングで自らの額を相手の額にくっつけながら前に出る嶋田と、下がるクレメンチ。2分過ぎ、防御に徹するだけのクレメンチにルーチが宣告された。それでも下がるクレメンチだが、不意に側転してのパス狙い。それを腕でブロックした嶋田ががぶりに行くと、クレメンチは高速で腰を引いて場外に。スタンドで再開後は、またしてもテイクダウンを狙ってヒザを付く嶋田と下がるクレメンチという構図が繰り返される。あまりにも対照的な姿勢の両者だが、ここでなぜか嶋田にもルーチが与えられた。

残り7分。嶋田は背負いを仕掛けるがクレメンチは堪える。さらにスタンドでプレッシャーをかける嶋田と、相変わらず腰を引いて下がるクレメンチ。ディフェンスに徹するクレメンチ相手にスタンドで展開を作れない嶋田は、再びシッティングに入るとアームドラッグから素早くクレメンチの右足を抱えてのテイクダウンに行くが、これも下がられて場外へ。クレメンチはここまで、柔道ルールならすでに反則負けを宣告されているほど腰を引いて下がり守りに徹しているが、両者にはアドバンテージはおろかルーチ差さえ付いていない。

再開後、得点板の確認のためかクレメンチがよそ見をしたところで嶋田がダブルレッグに。体勢を崩されたクレメンチが持ち直したところで両者場外に。ここで嶋田にようやくアドバンテージが1つ与えられた。

試合は再びスタンドで再開。ここでも前に出る嶋田に対し、クレメンチは軽い背負いのモーションこそ見せたものの、結局腰を引いて下がって場外に。残り5分半、クレメンチがついに引き込みのアクションを起こしてクローズドガードに。嶋田は腰を上げてヒザを入れようとするが、その度にクレメンチは嶋田の右足に内側から腕を絡めてバランスを崩しては、嶋田の体を引きつけてガードを保つ。やがて攻めあぐむ嶋田にルーチがもう1つ加算され、クレメンチにアドバンテージが1つ与えられた。アドバンテージ上は1-1だが、ペナルティの数が多い嶋田の方がリードされたことになる。嶋田が再三にわたってヒザ入れを試みていたことを考えると、このルーチ自体が疑問の残る判定だ。

クレメンチのガードを割りたい嶋田は強引に右ヒザを入れるが、クレメンチはクローズドを保ったまま嶋田を右側に崩して立ち上がると、そのまま場外側で谷落としに繋いで嶋田を倒すも、ブレイク。ここはポイントにならなかった。

残り3分半。嶋田は引きこみクレメンチの右足にハーフガードで絡む。クレメンチは腰を上げると、嶋田の頭に枕をしながらリバースハーフで腰を切って足を抜きにかかる。嶋田はクレメンチの右足をリフトしながらスペースを作ってスクランブルすると、左足を掴んでのタックルを狙うが、クレメンチは腰を引いてさらに下がって場外に。ここもノーポイント。

残り1分半からのスタンド再開。嶋田は前進し足を飛ばすがクレメンチは腰を引く。嶋田はクレメンチの首に飛びついてがぶりを狙うが、これも防がれる。さらに背負いにゆく嶋田だが、またも場外に出てポイントは入らない。

ならばと引き込んだ嶋田は、クレメンチの右腕を抱えて内回りに。しかしクレメンチはここも腰を引いてディフェンス。残り30秒でまたもスタンドに。最後まで腰を引き続けるクレメンチに対し、嶋田は前進を続け、最後は腹ばいになるようにテイクダウンを狙うが、それも通じずにタイムアウトに。終始前に出て仕掛け続けた嶋田が、ほんの数回の攻撃以外は露骨に下がって防御に徹していたクレメンチに敗戦を喫してしまった。

クレメンチに1つのルーチしか入らず、逆に嶋田に2つルーチを与えた主審の判断には首をかしげざるを得ず、嶋田には気の毒な一回戦敗退となった。しかし、本来あってはならないことだが──ブラジリアン柔術の試合でブラジル人に優位な判定が下されがちなのは誰もが知ること。現状のこの競技にて日本人選手が世界制覇を目指すなら、不可解判定に付け入る隙を与えないほど明確なポイントを取ることが求められる。すなわち、逃げに徹する相手をも倒しきるテイクダウン力、それが叶わないなら引き込んでスイープを完遂する技量。厳しい見方をするなら、今大会の嶋田にはそこが足りなかったということになる。

事実、今大会の準決勝でクレメンチと対戦したイアゴ・ジョルジはそのような技量を見せつけている。スタイルの違いはあるとはいえ、開始早々引き込んだジョルジはベリンボロ、ラッソーやクローズドガードからのオモプラッタと矢継ぎ早に攻撃を仕掛けクレメンチを圧倒。最後はラッソーの状態から、低くパスを仕掛けてきたクレメンチの右腕を伸ばして極めて完勝、盟友ジョアオ・ミヤオとの見事なワンツーフィニッシュを決めている。

レフェリーをも味方にし、見栄を捨て手段も選ばず勝利を狙うクレメンチ。そのクレメンチに対し、嶋田ができなかったことを遂行して圧勝したジョルジ。そして嶋田の挑戦を4度連続で退け、圧倒的な試合数をもって現在も進化を続けるジョアオ・ミヤオ。そのミヤオをしても勝てないアリ・ファリアスやマイキー・ムスメシ。さらにはケネディ・マシエルやクレベル・ソウザといった台頭する新世代──目がくらむほどの層の厚さを誇るこの階級に、今後NYを拠点とする嶋田がいかに挑んでゆくのか。柔術に全てを捧げる男の戦いと生き様を、これからも見届けたい。

■EJJC2019ライトフェザー級リザルト

優勝 ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
準優勝 イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
3位 クレベル・ソウザ(ブラジル)、ペドロ・クレメンチ(ブラジル)

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