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【JBJJF】北陸柔術選手権をサポート&出場。クラブバーバリアンのBOSS=福本代表「格闘技と再婚した」

Fukumoto【写真】BOSSの人生に格闘技とアルコールは欠かせない (C) JBJJF

25日(日)、富山県富山市にある県営富山武道館で日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)主催の第2回北陸柔術選手権が開催される。

北陸柔術選手権は第1回大会が新潟県で行われたが、今回は富山県で初開催となる。同選手権の運営サポートと自ら試合にエントリーしているのは、クラブバーバリアンの“BOSS”こと福本吉記代表だ。

現在54歳、MMA=DEEPと柔術の両大会で活躍する北陸格闘技界のボスは今年は全日本マスターオープンで2階級を制覇するなど、格闘技に向けての情熱は些かも陰ることがない。そんな福本代表に柔術、そして北陸選手権への思いを語ってもらった。

Text by Takao Matsui


――福本代表は、今もなお試合出場を続けておられるようですが、現役への拘りが強いのでしょうか。

「いつも道場で会員の方に『ブラジリアン柔術は何歳になっても試合ができますよ』と話していますので、自分が出ないと嘘になってしまいますよね。それに地方にいる僕たちが遠征して試合をするのは、エントリー料も含めてかなりの費用がかかるわけです。そうした状況がある中で自分だけが出ないのは、ちょっと違うかなと思っています」

――道場生とともに同じ大会で試合をするのは、より絆が強くなりそうですね。

「そういう思いはありますよね。道場名の『バーバリアン』は野蛮人という意味ですけど、その前に『クラブ』をつけたのは、学校の部活動やサロン的な集まりになればいいなと思ったからです。

実際、道場には社長や弁護士、元不良とか様々な社会的地位のある方がいます。でも、そういう社会的立場は関係なく、みんな同じ価値観のもとに集まっていますので、キック、MMA、柔術、みんな楽しくやっていますよ。

それに格闘技だけではなく、登山も有志を集ってよく行きます。車を走らせればすぐに山へ行けますので、毎週のように往復3時間かけて登っています。マラソン大会にも会員が集まって参加しているようですが、僕は絶景が見られる登山の方が好きなので、そちらを選択しています」

――山登りにマラソン大会、たしかにクラブ活動のようですね(笑)。

「そういうことが好きなんですね、僕は。柔術の練習が終わっても、みんな帰らないで道場で話していることもありますし。仕事と家庭だけではなく、違うコミュニティがあるのは楽しいと思うんですよ」

――素敵です。特に柔術は敷居が低いイメージがありますので、会員の方は増えているのではないでしょうか。

「敷居の低さで言えば、キックのダイエットクラスでしょうね。初心者の方からすれば柔術は何をやっているのか伝わりにくいようです。たまに声を出して大袈裟に痛がる人もいますし、いきなり座り込んで組み合っている攻防を見て驚かれるようです。それでも少しずつ興味を持ってくれるようになって、柔術にはまっていく会員の方が多いですね」

――柔術は、はまる要素が多い競技のようですね。

「そうですね。最初は何もできないからやられることは多いんですけど、悔しくてはまっていくパターンがほとんどですね。柔術のクラスがなくても、グループで集まって自主練する会員さんもいますから、よほど面白いんだと思いますよ。僕も、最近は再び柔術熱が出てきましてね、再び道着集めを始めました。選手としてはMMAよりも、柔術にシフトしている感じですかね」

――ではMMAの試合は、もうやらないのですか。

「タイミングが合ってオファーがあれば、もちろんやりますよ。DEEPの佐伯(繁)代表からも、『まだ20代のバリバリの選手とも試合ができますよ』と言われていますけど、受けてくれる人がいないんじゃないですかね。僕は負けず嫌いなので、万が一負けたらと思うと、やってくれる人が少ないように思います(笑)」

――でも年齢を考えると、MMAの試合は怖いのではないですか。

「怖くない、怖くない。怖いのは対戦相手の方だと思います(笑)。でも今は、柔術のワールドマスターを目標にしています。過去に対戦したことがある上谷田(幸一)さんが『絶対に優勝できますよ』と言ってくれているんで、社交辞令でしょうが調子に乗ってやってみようかなと。うちに嶌崎公次選手や山中健也選手がいるんで、一緒に世界を目指しますよ」

――福本代表は、DEEPバンタム級王者の元谷友貴選手、女子でもMIKU選手を育てたことでも有名です。選手を育てる秘訣でもあるのでしょうか。

「僕は何もやっていませんよ。ただキッカケを与えただけです。あとは本人の才能ですね。元谷選手も嶌崎選手もそうなんですけど、最初は全然ダメなんです。マウントやバックを取られて、すぐにやられてしまう。

でも、今から振り返れば客観的に分析していたんだと思います。どういうパターンがやられるのかと。そのうちにやられなくなくなるばかりか、スイープされてもカウンターでバックを取るとか、オモプラッタで極めてしまうとか、相手を動かせるようになるんです。そうした動きは、自分の中にはないセオリーですからね。ふたりには、センスを感じますよ。感覚で動いているので、言語化するのは難しいようですけど」

――でも彼らを鍛えたのが、福本代表ですよね。

「僕は、彼らにやられないようにしているだけだから(笑)。でも柔術をやっていると、新しい気づきがあるから面白いですね。自分なんかは、いかに楽ができるかを考えるんだけど、体重のかけ方、アゴの位置など相手が嫌なポジションを探すこともしています。合気道で体の使い方を習って、柔術にフィードバックしたいとも考えています」

――福本代表でも、気づくことは多いのですか⁉

「もう毎日のように、気づきの連続ですよ。キッズのスパーリングを見て、それいいなと思う動きもありますからね。柔術が、楽しくて仕方がないですよ」

――今年の第3回全日本マスターオープンは、ライト級とオープンの2階級を制覇しました。

「本当はライトフェザー級がベスト体重なんですけど、相手がいなかったのでライト級でいいやと思ってエントリーしました。対戦相手の佐野英司選手は、第1回大会で僕が勝っているんですけど外掛けの反則があったので納得していない感じだったんです。だから、今回はしっかり勝とうと思って臨みました。5-0で勝てたんで、すっきりしました。

オープンは、以前、全日本マスターで新川武志選手に三つ巴戦で負けていたので、リベンジしたかったんですよね。上をとってパスして12点取って差がついたので、下になって凌ごうと思っていたら10点くらい取られてしまい、最後はわざと自分の腕を出して腕十字に誘い、12-10で何とか逃げ切りました」

――簡単に2階級を制覇したのではなかったのですね。今年は、他に柔術の大会は出場されたのでしょうか。

「本当は、今年のアジア選手権にエントリーしようと思っていたんです。でも誰も出ていなかったので諦めていたら、その後に上谷田さんと早川成城さん、さらにメガトンことウェリントン・ディアス選手もエントリーしたようで、結果を見てキャンセルしたことを後悔しました。メガトンが出ていると知っていたら、僕もエントリーしていたんですけどね。大会の前日、IBJJFのレフェリー講習会のために東京へ行っていたので、本当に残念でした」

――今回、北陸選手権はどのような経緯で参加することになったのでしょうか。

「2年前、JBJJFから富山で大会を開催したいと打診がありまして、それからのつながりです。これまで年3回、グラップリング(1回)と柔術(2回)の大会を富山で開催してきましたが、レフェリングの問題でよく揉めていたんです。うちは計量も含めてしっかりとやるんで、何かと揉め事が多くて……。

でもJBJJF主催でやるのならば、もちろんそこはしっかりと行うでしょうし、誰も文句は言わないだろうと思いまして、お手伝いをすることになりました。それに地元で開催すれば、ご家族や友達が応援に来てくれるはずですからね。富山で柔術を広めるためには、地元開催は一番効果があります。もう少しエントリーしてほしかったんですけど、初めてですから仕方がないですね」

――もちろん、ご自身もエントリーされていますね。

「ハイ。僕は格闘技と再婚しましたから」

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