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【JBJJF】全日本選手権展望を前に桑原、新明&安井─01─連盟設立20年。日本の柔術を振り返る

Yasui, Kuwabara, Shinmyo【写真】JBJJF設立20周年、昔話とともに全日本選手権の見所を3者に語ってもらった(C)TAKAO MATSUI

6日(日)、東京都大田区の大森スポーツセンターで、第18回全日本ブラジリアン柔術選手権が開催される。

日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)が設立して20周年という節目の年を迎えた同選手権は、特別な意味を持つ。長い歴史を持つ第1回全日本選手権で優勝した同連盟の桑原幸一理事をはじめ、トライフォース柔術アカデミーの新明佑介ゼネラルマネジャー、IF-PROJECTの安井佑太代表の3氏が黎明期を振り返りつつ、今年の全日本選手権の見所を語った。
Text by Takao Matsui


――今年でJBJJFは設立20周年を迎えることになりました。当時を良く知る桑原理事、JBJJFの運営スタッフとして働く新明氏と安井氏の3者にご登場をいただきました。

新明 ああ、そういえば20周年ですね(笑)。自分は途中からお手伝いしていますが、そんなになるんですね。

安井 自分が最初にブラジリアン柔術に興味を持ち始めたのは、小学生の頃でした。その時はリングスファンで、山本宜久選手が好きだったんです。その山本選手がヒクソン・グレイシーに何もできずに負けてしまい、衝撃を受けました。そしてヒクソンと中井(祐樹)会長の試合を見て、ブラジリアン柔術は凄いと思い、興味を持ち始めたんです。

桑原 あの時に小学生? しかも山本ファンって、その方が衝撃だ(笑)。

安井 そこはどうでも良いのですが(苦笑)、自分が言いたいのはヒクソンを見てブラジリアン柔術に魅了されたということと、運営スタッフとして入ったのは10年くらい前なので、歴史について語るのは桑原先生にお任せしたいということです。

桑原 そういうことなのね(笑)。でも、どこまで覚えているかな……。1998年8月16日に開催された第1回大会は、記憶では8つのアカデミーしか参加が認められていませんでした。当時、自分が所属していたエンセン井上先生のPUREBED、パレストラ(現=パラエストラ)、グレイシージャパン(現=アクシス)、正道会館、谷柔術、名古屋BJJ、ホシャ柔術、エドワルド・モリ先生のアカデミーの8つ。帯は、青帯、白帯のみでマスターとアダルトに分かれていましたね。

――桑原さんはアダルト青帯ペナ級で優勝していますね。あとは、青帯プルーマ級で故吉岡大選手、白帯ペナ級で八隅孝平選手も優勝。ああ、青帯メジオ級で浜島邦明事務局長が準優勝しています。さらにはマスター白帯レーヴィ級で若林太郎さんが準優勝。今から振り返ると凄いトーナメントですね。

新明 そうなんです。僕のようなブラジリアン柔術オタクが喜ぶ大会でした。

――当時のレギュレーションは今と相違点はあったのでしょうか。

桑原 得点は今と同じです。スイープやテイクダウン、ニーオンザベリーで2ポイント、パスガードで3ポイント、マウントとバックコントロールで4ポイント。当時からアドバンテージもありましたし、ファルタ、ルーチもとっていましたので、ほとんど今と変わりません。大きく違うのは、現在のような得点板がなかったことですかね(笑)。

新明 どうやって数えていたのですか。

桑原 レフェリーがポイントを宣告するのですが、どちらの競技者に得点が入ったのか分からない場合もあります。その時は、多分、こっちに入ったと予想でカウントしていました。最後まで得点が分からないので、ボトムだろうとトップだろうと、差がない場合はとにかく攻めろという指示が飛んでいましたね(苦笑)。

新明 佑太君が来た頃は、得点板はあった?

安井 ありました。ただ、現在のようなデジタルではなく、アナログの手製のものです。アクリル板に数字を貼って、パンチで穴を空けて、一枚一枚、めくっていました。

新明 佑太君が作ったんだ。器用だな。

安井 地方のアカデミーの人から、作り方を教えてほしいと聞かれたこともありました。

桑原 得点とタイムが分からないので、試合の時はディレクターテーブルの後ろに関係者が移動をして、紙に得点が書かれたらすぐに伝えたり、試合時間を計っているタイムキーパーの時間を盗み見して残りタイムを叫ばせていましたね。

新明 あった、あった。

桑原 そう考えると、今は良いよね。残り時間と得点がすぐに分かるから、それによって戦い方を変えられる。

――当時、勝敗をわける判定の基準はあったのでしょうか。

桑原 ボトムから引き込んでコントロールしている側が優勢に見られる傾向がありました。レフェリー判定になると、下の選手が勝つということも多かった印象があります。

新明 あと道衣が乱れても、そのまま進行することが多かったですよね。

桑原 今は道衣が乱れると20秒以内に直すようにとレフェリーが指示をしますが、当時はそんなルールはなかったので、スタミナを回復するためにゆっくりと直したり、レフェリーに解けた帯を巻かせる選手もいました。

――道衣の規定は?

桑原 最初は、そこまで厳しくなかったと思います。私は、クルーガンズの柔術衣で試合を出られましたし、柔道衣で出場する選手も多かったです。

新明 クルーガンズですか、いいですね。自分も柔道衣でした。

桑原 レフェリーはあまり袖や裾が短い道衣は、替えさせていたと思いますが、極端なことがなければそのまま試合をしていました。

――少しずつ整備されていったのですね。

桑原 そうですね。2006年のアジア選手権の時にJBJJFが組閣していき、いろいろな取り決めができていったと記憶しています。

――中井会長は、全日本選手権に出場していないのですね。

桑原 第3回大会の時でも紫帯が最高位でしたから、黒帯の中井先生は相手がいなかったと思います。とくに中井先生は海外で試合をしていましたので、国内でプロを除く柔術の試合をしたのはカンピオナート(全日本ブラジリアン柔術オープントーナメント/2002年11月、台東リバーサイドスポーツセンター)で早川(光由)先生と戦った時が初めてではないでしょうか。

――長い歴史です。では今回の全日本選手権は、どの階級に注目していますか。見所も含めて、それぞれの視点でお願いします。

桑原 茶帯も見所がたくさんあるんですけど、黒帯に限定した方が良いんですよね……。

新明 興味深い階級が多いので、話し始めたら長くなりそうです。

安井 では、厳選して俺からいきます。自分は、アダルト黒帯フェザー級の世羅智茂選手に注目しています。普段は、ライト級とかミドル級で試合をしている世羅選手ですが、フェザー級は久しぶりだと思いますので、かなり気合いが入っているのではないでしょうか。この階級は同じカルペディエムの選手が出ていないので、まさに必勝の覚悟が伝わってきますね。

あとは世羅選手がどこまで勝ち上がることができるかがポイントですが、杉江(白木)“アマゾン”大輔選手が出場していないので、大塚博明選手が優勝候補かなと見ています。もしくは加古拓渡選手か。あとは八巻祐選手も茶帯から上がってきているので、どこまで戦えるか興味は尽きません。

新明 自分は、アダルト黒帯ライトフェザー級を注目しています。今年の世界選手権ルースター級3位入賞の橋本知之選手が優勝候補ですね。橋本選手を中心に鍵山士門選手、江端講平選手あたりが絡んでいくと面白くなりそうです。層の厚いライトフェザー級は、どの組み合わせでも勝ち上がりを予想するのが難しく、ブルテリアボンサイの鈴木恒太選手も怖い存在かと思っています。

安井 確かに鈴木選手の動向は気になりますね。橋本選手、鍵山選手、江端選手、山田選手が表彰台を埋める絵が浮かびますけど、鈴木選手がキーマンになりそうですね。そういえば、嶋田裕太選手は出ていないんですね。

新明 出場していたら、なお面白くなったんですけどね。

Sawada桑原 私は2階級注目していまして、まずアダルト黒帯ルースター級です。ライトフェザー級に橋本選手が上げてしまった関係で3人しかいませんので、当たり前のように芝本幸司選手が連覇を達成するように思えます。しかし、戸所誠哲選手は今年、全日本マスターのライトフェザー級で優勝していますし、もともと地力のある選手。

芝本選手がいなければ、この階級を優勝しているであろう逸材です。トップもボトムも問題なくこなし、スタミナも豊富。そろそろ優勝してもおかしくないと思います。

さらに、芝本選手と同じアカデミーのトライフォースから澤田伸大選手がエントリーしている点にも注目しました。黒帯に上がって初めての全日本になると思いますが、ひじょうに粘りのある柔術をします。青帯の頃から世界2位に入って、ノーギでも優勝しています。国際大会でたくさん入賞していますし、海外でも認められている選手の一人です。

先月、開催されたアメリカンナショナルでは、彼の必殺技でもある『澤田バー』と呼ばれるサイドポジションから足をまたいでの腕十字固めで一本勝ちを収めました。一本を取れる選手は、得点差があっても逆転が可能なので、目が離せなくなりそうです。強いて言えば、同じアカデミーの芝本選手と試合するかどうかですが、できれば見たいですね。

<この項、続く>

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