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【American Nationals 2014 】奇想天外柔術。亀=テレス×蠕虫=コーネリアスの技術戦

Keenan Cornelius【写真】ワームガードとタートルガードは、前者キーナン・コーネリアスの軍配が挙がった(C)IBJJF

6~7日(土~日・現地時間)、カリフォルニア州カーソン、カリフォルニア州立大学ドミンゲス・ヒルズ校体育館において、2014アメリカン・ナショナル柔術選手権及びノーギ柔術選手権が開催された。

今大会の最注目選手は、なんといっても今年ラペル(裾)ガード、ワーム(蠕虫)ガードの開発者として時代の最先端に躍り出た21才の超新星、キーナン・コーネリアス(アトス)。6 日に行われた道着着用の部の階級別(ミディアムヘビー級)で順当に勝ち進んだこのコーネリアスを決勝で待っていたのは、亀ガードでおなじみの大ベテラン、エドゥアウド・テレス。蠕虫×亀という異次元対決となった。

試合開始後、軽快なステップを踏んだと思ったらただ座り込み、さらに額を地べたに付けて亀ガードを取るテレス。近年、コーネリアスらが駆使する――いわゆるモダン柔術は実戦性に欠けると批判の的となっているが、実戦を度外視した戦い方という点ではこの人に勝る者はいない。コーネリアスはバックに付こうとするが、そのまま得意の前転を繰り出して脱出し亀に戻るテレス。コーネリアスはさらに正攻法でバックやパスを狙ってゆくが、テレスは決してフックは許さない。

必殺の巻き込み系亀スイープを警戒してか深追いをしないコーネリアスに対し、テレスはあたかも背中で防御壁を張るかのようにして動き、コーネリアスの攻撃を防いでは正対してみせる。スタンド状態のコーネリアスは、座っているテレスの道着を掴もうと手を伸ばす。するとテレスはまたすぐに額を地べたに付けるような体勢に。これではコーネリアスも相手のラペル(裾)を引き出すことはままならない。それでもコーネリアスがラペルに手をかけると、テレスはカエルのようにマットに腹這いになってそれ以上の侵攻を許さない。

ほぼ一方的に攻撃しているコーネリアスは、パスとバック狙いによるアドバンテージこそ重ねるものの、テレスを抑え切れずポイントが得られないまま時間が過ぎてゆく。さらにコーネリアスはテレスの背後に付き、脇の下から手を入れてラペルを掴みにゆくが、ここでもテレスは前転を繰り返して距離を取ることに成功。テレスは──腹這いになる、背中を向けて戦う──というまさに彼にしかできない方法で、現在世界を震撼させているラペルガードを防いでしまう。さらに、逆にシッティングガードからコーネリアスのラペルを引き出してのスイープを狙う場面すら見せたテレス。今年38才となる異能柔術家の面目躍如といったところだ。

しかし、その後の残り数分で、 我々は天才コーネリアスの恐るべき創造性を目の当たりにすることとなる。何度もテレスの背後に付くもののなかなか足のフックを入れられなかったコーネリアスは、テレスの裾を掴むと、あえて自ら乗り過ぎて上に落とされるような形で下に。そのまま得意のインヴァーテッド・ガードの要領で回転して正対した時には、見事にテレスのラペルを引き出しがっちり掴んでしまっていた!! 下からラペルを引っ張ると、してやられたテレスはそれを懸命に引き戻しながら「ハハハ」と声を出して笑ってみせる。ここからスイープの仕掛けでテレスを揺さぶったコーネリアスは、さらにベリンボロのように横転して角度を付けながらラペルのグリップを瞬時にスイッチ。

するとテレスの右のラペルがテレスの右膝下を通して、コーネリアスの右手で外から掴まれ、さらにコーネリアスの右足が外側からラペルの下に突っ込まれている変形ワームガードの状態ができていた。この状態からシッティングし、テレスの背中を左手で掴んだ伸ばしたコーネリアスが右足を蹴り上げながら後方回転すると、テレスはなすすべもなく一緒に回転。両者が着地すると、コーネリアスは複雑に絡んだテレスのラペルを掴んだままバックに付く。かくしてコーネリアスはこの日、ワームガードバックとでも呼ぶべきポジションを世界に披露したのだった。

【写真】タートルガードはバックを取られそうな際、前方に落しても得点に結びつかないためディフェンスとし効果は発揮するが、得点をとるには効果的ではない……のだが、いつも見ていて面白いのがタレスの柔術だ(C)IBJJF

【写真】タートルガードはバックを取られそうな際、前方に落しても得点に結びつかないためディフェンスとし効果は発揮するが、得点をとるには効果的ではない……のだが、いつも見ていて面白いのがタレスの柔術だ(C)IBJJF

ラペルをキープしたまま、もう一つの手でボー・アンド・アロー・チョークを仕掛けてフィニッシュを狙っていったコーネリアスだが、テレスもバックからの極めは許さず。脱出して再びテレスが上となったところで時間切れ。結局終始攻め続けたコーネリアスが大量のアドバンテージポイントで勝利を得た。

勝機こそほとんど見えなかったものの、誰にも真似のできない(そもそも試みようとも思わない?)戦い方でコーネリアスのラペル掴みを途中まで封じたテレスと、さらにその上をゆく新技術を見せつけたコーネリアス。いわゆる実戦性や護身とはまったく無関係の次元で、競技柔術の驚きと興奮が詰まった一戦だった。

ミディアムヘビー級を制したコーネリアスは、無差別級でも順当に勝ち上がり、決勝はミドル級を制したアトスの同門、JT・トレスと優勝をシェア。圧倒的な実力を見せつけた。この日は他に、軽量級の帝王カイオ・テハが本来より一階級上のライトフェザー級にて貫禄の優勝。女子黒帯の部においては、マッケンジー・ダーン(グレイシー・ウマイタ)が強さを見せつけ階級別と無差別を制している。

■American Nationals 2014:黒帯アダルト男子結果

【ライトフェザー級】
優勝:カイオ・テハ(カイオ・テハ・アソシエーション)
準優勝:ファビオ・パッソス(アリアンシ)

【フェザー級】
優勝:ヴィトー・パスコール(カイオ・テハ・アソシエーション)
準優勝:カリ・ボスク (ヴィセンチ・ジュニア)

【ライト級】
優勝:オズワウド・ホノリオ(カイオ・テハ・アソシエーション)
準優勝:アンドリス・ブルーノビスキス (アトス)

【ミドル級】
優勝:JTトレス (アトス)
準優勝:フランシスコ・イトゥラーデ(アリアンシ)

【ミディアムヘビー級】
優勝:キーナン・コーネリアス (アトス)
準優勝:エドゥアウド・テレス (カイオ・テハ・アソシエーション)

【ヘビー級】
優勝:ルーカス・フレイタス(グレイシー・バッハ)
準優勝:エリオット・ケリー(イェマソ柔術)

【スーパーヘビー級】
優勝:フィリッピ・ブルーノ(アリアンシ)
準優勝:ディラン・ディアボーン (BJJレヴォリューション)

【ウルトラヘビー級】
優勝:カルロス・ファリアス (ホヴェルト・トラヴェン)
準優勝:チアゴ・ソウザ (グレイシー・バッハ)

【無差別級】
優勝:JTトレス (アトス)
準優勝:キーナン・コーネリアス(アトス)
※決勝は行わず

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