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【ONE108】北岡悟と共に振り返る、松嶋✖キム・ジェウン─01─「スーパーストライカーじゃない」(北岡)

Kitoka & Matsushima【写真】 指導者と選手、導く者と実践する者ならでは話が訊かれた(C)MMAPLANET

7日(金・現地時間)にインドネシアはジャカルタのイストラ・セナヤンで行われたONE108「Warrior’s Code」で韓国の猛者キム・ジェウンからTKO勝ちを収めた松嶋こよみ。

昨年7月の世界王者挑戦に失敗してから再起戦で、非常に厳し相手と相対した彼は──その名を世界に轟かせたマラット・ガフロフ戦で得たパンチで倒す感触を忘れ、MMAファイターとしてテイクダウンと蹴りで試合を組み立てていた。

その結果、右を効かせてのTKO勝ち、MMAの妙を感じさせた激勝をセコンドをと詰めた北岡悟と共に振り返ってもらった。


──キム・ジェウンと対戦が決まった時、松嶋選手への期待と同じぐらい不安もあった試合でした。北岡選手は試合が決まった時、どのように思われていましたか。

北岡 対戦相手のONEと契約する前の試合とONEの試合のハイライト映像を見たのですが、強いというのは分かりました。かなり強いだろうなって思いましたね。

──危険な相手だと?

北岡 手の距離……ボクシングをやってはダメだというのはありました。でも、それはイズムにきてからずっと思っていたことなので。前にクォン・ウォイルと戦った時も彼はマラット・ガフロフに勝った時みたいに鮮やかに勝ちたいというのがあったんだろうけど、ああいう試合になったじゃないですか。

だから『君は違うよ』ってことですよね。スーパーストライカーじゃないから、テイクダウンと蹴りだよという話をして。それでマーチン・ウェンに挑んだんですけど……。まぁ、この試合を戦うことになってボクシングを練習したり、ここ(ロータス世田谷)でグラップリングの練習をしているけど、『いざとなったら、レスリングと蹴りだから』ということは改めて伝えました。

松嶋 それはこの1、2年で自分でも痛感している部分で、結局レスリングをしないといけないと思っていました。打撃もパンチが上手いわけではないですし、蹴りで戦っていかないといけないとい気持ちではいました。

──ガフロフにKO勝ちした後というのは、パンチでもいけるぞという気持ちになりましたか?

北岡 それはなるよねぇ(笑)。

松嶋 あの試合のあとも練習で、パンチのタイミングが合ってきたというのがあって……「これ、もしかしたら目覚めたのかな?」っていうは思っていました(笑)。

北岡 アハハハハハ。

松嶋 やっぱり勘違い……勘違いというか、そんな上手くはいかないっていうことをクォン・ウォンイル戦で思い知らされました。それは、そういうものなんだと……。

北岡(食い気味に)ウォンイル戦の直前にも言っていましたからね、僕は。パンチで勝てると思っているんだろうなって(笑)。相手がグチャッと倒れるような勝ち方できるって絶対に(笑)。

松嶋 本当に勝手にそう思っていました(笑)。そうしたいというのはでなく、そうなるんだろうなって気がしていて。

──若い選手って、いくら注意されても勝っている時は聞かないじゃないですか。それがもう態度に表れている選手もいますが、松嶋選手も素直に耳は傾ける風でありながら、やはり聞かないというコトでしょうか(笑)。

北岡 彼は年長者との付き合い方が上手いです。岩﨑(達也※松嶋の空手の師匠)さんと付き合っているわけだから。アハハハハハ。まぁ、僕も色々と言うけど、別に全部言うことを聞かなくて良いからって風ですね。

岩﨑さんとの付き合いもそうで。僕は岩﨑さんには絶対に良い部分があることを知っているし。だから、それと同じで彼が自分で使えないと思ったところは、捨てたら良いので。ハイ、別にそういうことは固執しないです。

松嶋 でも、スーパーストライカーじゃないというのは僕も本当に同じ考えだったんです。それなのに……やりたいっていう気持ちが強かったのがウォンイル戦でした。マーチン・ウェンの時もそうなんですが、言い方は悪いですが発表会のような……なんて言うんですかね、自分が練習してきたことをただ出したいというところがありました。でも、それじゃ勝てないということが理解できました。

そういう気持ちでいて、やりたいことができたかったらどうなるのか。それをウォンイルとの試合で理解しました。

北岡 発表会……その時、その時で取り組んでいるモノを出したいと思っちゃうということですよね。それは僕も多々やってきて失敗しているから分かっていることでした。

──でも練習しないことには身につかないわけですしね。

北岡 理想はそれが勝手に出ることです。意図的に織り交ぜることができれば、より良い……というか都合良くいくかもしれないけど、やっぱり勝手に出る。身についているモノは勝手に出ます。それもキム・ジェウン戦の前に伝えていました。結果、勝手に出れば良いよねということで。やっぱり出そうと思うとダメなのかなって最近は思うようになりましたね。

──難しいですね。

北岡 僕自身がここ数年たくさん負けて……感じていること、というか経験していることなので。自分と同じ間違いをわざわざしないで欲しいということですね。

──そういう心理的な部分があるなかで、対策練習としてはどのようなことをしてきたのですか。

松嶋 貰わないというのを意識していました。それとウェンとの試合でステップを多く踏み過ぎて自分がしんどくなっていくということがあったので、できるだけそういう動きを省こうというイメージでやっていました。

結果的にどんどん多くなって、疲れてしまいましたけど(苦笑)。とにかく相手の距離に入らないで戦うようにはしました。

──それでも無意識ではなく、試合中に意識が働いてしまいそうですね。

松嶋 そうなってしまいますね。なので、もうひたすら練習でやってきたことを出そう。そういうつもりで戦っていました。そして決まった動きをしないように。ウェンとの試合では「こう来たら、こうしよう」とか、そういうテンプレートみたいなモノを自分のなかで創っていたのが、どんどんハマらなくて焦っていったので。

そうならないようにどの角度からでも攻撃して、どの角度からの攻撃も見えるように動こうとか、そういう風に考えていました。

<この項、続く>

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