この星の格闘技を追いかける

【ONE97】DJとGP準決勝を戦う、和田竜光─01─「単純にスキルの差があります。一つ一つの精度が違う」

Tatsumitsu Wada【写真】いつもの和田竜光ポーズだが、30分以上 DJ戦について話した直後だけに──若干、戦闘モードか(C)MMAPLANET

8月2日(金・現地時間)、フィリピン・マニラのMOAアリーナで開催されるONE97「Dawn of Heroes」。3月の東京大会に匹敵するビッグショーで、和田竜光が元UFC世界フライ級王者デメトリウス・ジョンソンとワールドGP準決勝を戦う。

その和田とDJをAbema TVのドキュメンタリー・プログラムTHE WONDERが追い、MMAPLANETでは両者に試合に特化したインタビューを行った。和田が考えるDJ論と、その対策を尋ねることで唯一無二──和田竜光のMMAが見えてきた。


──待望のDJ戦まで2週間ほどに迫ってきました(※取材は17日に行われた)。

「楽しみだっていう気持ちには変わりはないです。試合が迫ってきて自分のコンディションや状態を上げている段階ですけど、DJと戦う楽しみな部分は変わっていないです」

──DJとONEで戦う、少し前まで考えられなかったかと思います。

「僕がフライ級になったときにDJはUFCのチャンピオンで、試合も見ていて自分が戦うならどうするのかとか、ふざけながら話していました。僕がONEと契約し、DJもこのタイミングで移籍してきた。そこでトーナメントでお互いに勝って戦うことができる。DJにとってはただの準決勝、ただの相手だと思います。でも僕にとっては長年の想いが詰まった相手で、こうして戦えることは変な言い方ですけど、運命的だと捉えています」

──ヘンリー・セフードに負けてUFCフライ級王座を失ったDJですが、和田選手にとって長年の意中の相手はDJなのですか。

「余裕でDJです。トータルとしてMMAの完成度はDJが今でも一番ですから。前の試合でDJはセフードに負けていますが、一番尊敬し憧れているのはDJです」

──もともとはドミネイト・ファイターで、UFCや北米ではなかなか評価されていなかったです。

「超人ではあるんですけど、凡人界のスーパースターです。全ての局面が超人で……いえば僕が満遍なく3のファイターだとすれば、DJは7──みたいな(笑)」

──以前言っていたオール5から7に上がっているではないっですか(笑)。

「アハハハハ。極端に言うと……。僕は飛びぬけたものがなくて、相手の苦手なところで勝つ。勝ちやすい試合で勝つけど、DJもそういうタイプで、似ているとは思わないのですが見習いたいです」

──DJが評価されていなかった頃、その点についてはどのように思っていましたか。

「分かっていないんだなって(笑)。米国のファンが体が大きくて倒したり、打ち合ったりするのが好きなのは分かりますし、日本のお客さんが一本、KO、殴り合いが好きなことも理解しています。それはそれですが、その一方で技術的にDJは昔から抜けていました。それなのに、なぜ評価が低いのかとは思っていました。僕のなかで一本、KOが全てじゃないんで」

──それでいてバックスープレックスからの腕十字などというミラクルな一本もありました。

「全部のレベルが高いので、結果として一本も生まれます。だけどDJは一本を取るとか、KOするとか思っていないかと。もちろん、どう戦うのかっていうプランはあったとしてもそれを出せるところで出す。日頃からの打ち込みとかで、後ろに投げて十字とかもやっているかとは思います。体に染みついているモノが試合で出る。そして、全ての質が高いから一本もKOも生まれる」

──MMAは色々なスタイルがあり、色々なことをやって良い。そのなかでMMAで勝つ和田選手とDJは似ていると思います。両者のMMAは違うのですが……。

「単純にスキルの差があります。一つ一つの技の精度が違うので、そこを比べるのは凄く難しいです。まぁ、真似したい。ああなりたいです(笑)」

──誉め言葉として受け取ってください。和田選手の方がMMAとして、せこい。

「あぁ、かもしれませんね。それこそDJだったら、抑えてからアタックするところを僕は抑え込み続けたりもするし。俺も極められる自信があれば行くと思います。だけど、そこでスキルの差があるから……DJはいける。下になったとしても立てるし、もう1回テイクダウンすれば良いというのがある。だから打撃でもガンガンいけます。テイクダウンディフェンスも強いので。

僕の場合は絶対に下になりたくないし、不利なポジションになりたくないので、良いポジションにいる時にそこをキープしようとしてしまいます」

──いえ、そういうことではなくて。キープして勝てるって素晴らしいことですし。セコイというのは、今の和田選手の話でいえばDJは倒せる、そして立てる。MMAは色々なことが混在しているなかで、彼はズバッとテイクダウン、ズバッと立てる。首相撲でバシッとボディにヒザを入れてKOしてしまう。対して和田選手は首相撲でローを蹴り、そこからテイクダウンするとか、よりMMAとして混じり気と混ぜる発想を持っている。

「そういうことですか。そこはDJが一発で倒せるところを僕はフェイントをかけて、ごまかしてテイクダウンをしている。そこがシンプルに技量の差です。もちろんDJも色々と考えて伏線を敷き、さらに相手もDJの引き出しの多さを理解しているから、テイクダウンを取れるというのはあります。

でも、そう言われると自分の方が相手の嫌がることをたくさんやっていると思います(笑)。罠をかけて」

──そのように和田流MMAを創ってきた和田選手が、ふざけながら話すしても、どのようにDJと戦うと以前に話していたのでしょうか。

「当時よく話していたのが、真正面にパンチを打っても当たらない。避けられてしまうので。だから違うところを打つ。蹴りもDJを狙って真っすぐ蹴っても、もういないので……パンチを出して、その先を蹴ればこっちに動いてきて当たるんじゃないかとか。そういうことを話していました。今も思っています。だから今回もそういうイメージはなくなっていないです」

──それは確実性のあるモノなのですか。

「もちろん、確実性はないです。ただし、出さなければ当たらないです。やらないと始まらないと思っています。当たる保証はないけど、そういうこともやらないといけない試合です」

──禅問答ではないですが、DJを相手にすると確実な攻撃をする方が当たらないかもしれないですね。ワンツー、ローとやってもDJには通じない。なら不確実性のある攻撃を織り交ぜる方が当たるような気がします。

「この戦いはMMAなので。それこそボクシング・グローブだと良い箇所を当てないと威力はないです。でもMMAグローブは、一番のところが当たらなくてもダメージを与えることができる。MMAはそういう競技です。一番良いところを当てるだけじゃない──ということも考えて戦いたいです」

<この項、続く

PR
PR

関連記事

Movie