【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その弐─ローリー・マクドナルド×ジョン・フィッチ
【写真】ベラトールから提供されたオフィシャル写真にはテイクダウンも、スクランブルもコントロールも含まれていない。それが北米MMAの見方でもある (C)BELLATOR
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4 月の一番、第2弾は27日に開催されたBellator220から
ローリー・マクドナルド✖ジョン・フィッチの一戦を語らおう。
──3月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「ベラトールのローリー・マクドナルド✖ジョン・フィッチですね」
──おお、青木選手はフィッチ好きですよね。
「でも今回の試合はフィッチもそうですが、ロリマクはどうなったのかという部分なんです」
──それは興味深いです。
「ロリマクって異次元の強さを持っていたのに、フィッチと競るんだというのはショックでした」
──フィッチが頑張ったのではなく、ロリマクがダメだったと。
「そう思っちゃいますね、あの試合は。だってタイロン・ウッドリーが腹への蹴りとジャブで試合をさせてもらえなかった相手ですよ。あのミドル三日月のような蹴りと縦と横を使い分けるジャブ、ロリマクの相手を近づけさせないスタイルを見た時に、これは新スタイルだって思ったんです」
──ロビー・ローラー戦以降、不安定ですね。
「ロビー・ローラーとやってぶち壊れたのかもしれないですね。精神的に不安定な感じもインタビューで見せてしまっていましたしね。ただ僕もそうなんですけど、テクニック信仰がある選手はドーンという喧嘩で、勢い負けした時はそういう風になってしまう。その気持ちは僕も分からないわけではないですけど、あそこまでというのは少し謎です。それとフィッチのローに合わせた低いテイクダウン、アレは変わらないですよね」
──これまでは殴りを見せて入っていたのが、今回は顔面を蹴りぬかれても入っていました。打撃を入れられても、打撃戦でなくあくまでもテイクダウン勝負はフィッチを貫いていたかと。
「AKAが元気だった時のジョシュ・コスチェックとか思い出して、ガッツがあるんですよね。シングルに出て走るという。フィッチはUFCを試合がつまらないという理由でリリースされ、WSOFの初戦で『俺だってできる』って感じでジョシュ・バークマンと打撃戦をやって、ブっ飛ばされた。そういうことを経て、徹底しているんだと思います」
──なるほど。さすがフィッチ・マニアの青木選手、深いです。
「ファイターとしてスイングしようとする試合をしてミスり、そこから何があってもテイクダウンするという今に至った。そしてロリマクをドミネイトした」
──あれってドミネイトされたことになるのでしょうか。ロリマクは倒されても下で作って攻撃を受けなかった。そしてバックを譲り切ることもなかったので、今の北米MMAの裁定でも蹴りを顔面に入れていたロリマクかと思っていました。
「その今の裁定があって、3Rはジャッジ3人ともフィッチが10-8で取っているんですよね。でも、あれが10-8というのは分からないです」
──10-8を積極的につけるという風にはなっていますが、インパクトを重視するのであれば、抑えていただけで10-8とは本当に意外です。
「パスもしていないですしね。逆にジャッジの方が、それを見越して立ちに行かなかったロリマクに対して、そういう試合をするなら10-8にするぞということかもしれないですしね」
──あぁ、それは凄くありそうですね。要は試合を動かすための裁定基準なので。加えて地元のサンノゼでフィッチにブーイングがなかったのも後押しになりました。
「そこを踏まえてもフィッチの愚直なスタイルは強い。あの骨格でウェルターだし、コスチェックやジェイク・シールズは落ちたのに……フィッチは落ちないですね。それとね、0-1でタイトル防衛がそのままトーナメントの勝ち上がりにも生きて……優位だった方が消える。これも凄いです。そしてチャンピオンは勝っている限り、トーナメントのスケジュールで防衛戦を続ける。理屈は正しいのですが、なんかプロレスのアイマンマン・ベルトみたいですね(笑)」
──すみません、そこ分からないです(笑)。
「あのトーナメントはUFCではない──ベラトールらしさが出ているということですね」