【AJJC2018】ミドル級&オープンにWエントリー、伊東元喜「日本×ポーランド? 僕の中ではNGです」
【写真】関西らしいといえば、大雑把すぎるか。楽し気な様子の柔専館だ(C)MOTOKI ITO
8月5日(日)、東京都大田区にある大田区総合体育館で開催される「第19回全日本ブラジリアン柔術選手権」に柔専館所属の伊東元喜がアダルト黒帯ミドル級&オープンクラスにダブルエントリーしている。
月1回のハイペースで試合をしている伊東が、意外にも全日本選手権は初出場とのこと。アダルトでの出場に拘る伊東の目指す理想郷とは!?
Text by Takao Matsui
――今年もハイペースで試合をされているようですね。
「今年は……、何戦したかなぁ。すでに5、6大会には出場しましたね。月1回のペースで試合をしています。もう40歳なので、あまり肉体に支障が出ない程度にやっていますよ」
――練習は、毎日やられているのでしょうか。
「基本は毎日ですが、疲労が溜まったり、ケガをした時は思い切って休むようにしています。試合の1週間前は、スパーリングをしないで疲労を抜くようにしていますし、最近は練習のやり方を変えました」
――練習を休むのは怖いですか。
「昔は、練習をしないと不安だったので、無理をしてでもやっていました。若い時は大会前日までスパーをやっていたこともありました。でも、そこまでやると試合のパフォーマンスが落ちるんですよね。不安な気持ちを払拭したいだけで。休んでいる間は、ライバルが練習しているんだろうなと考えることも、昔はありましたからね。
でも最近は、週1回にパーソナルトレーナーのもとで練習をみてもらっているんですけど、僕に近い年齢のアスリートは休養を大事にしていると聞かされています。ケガをしたまま悪いパフォーマンスで練習をするよりかは、しっかりと治してから取り組んだ方が効率はいいと。休養をとった次の日は、体が軽くていい感じでスパーができるので確かにな、と納得してしまいました(苦笑)」
――全日本選手権は、アダルト黒帯ミドル級&オープンクラスにエントリーしていますね。
「実は全日本選手権へ出場するのは、今回が初めてなんです」
――ええっ!? 意外です。常連のイメージがありました。
「日程が合わないこともありましたが、自信がなかったといいますか、もっと若い選手がバチバチにやり合っているイメージがあります。自分の中で、もう少しできるようになったらと遠慮をしていました」
――そうだったのですね。それが変わってきたと。
「変わったというか、最近、トレーニングして体が動くようになってきましたし、出場のタイミングを見ていたら、この先はどんどん厳しくなると気づいたからです。そういうこともありまして、今しかないと思い、出場を決めました。関根(シュレック秀樹)さんからも、出た方がいいと勧められていたんですけどね」
――その関根選手とは、何回も対戦していますね。
「いつも胸を貸していただいています。過去4回対戦していますが、なかなか勝てません。でも山が高いほど燃えてくる性格なので、いつか越えたいと思っています。僕は真っ向勝負が好きなので、小細工なしに100パーセントぶつかれる相手です。向こうも来てくれるんで、負けても気持ち良いです」
――真っ向勝負が好きなのですね。アドバンテージを先制して、守って勝つというのも戦略のひとつですが、それは美学に反すると。
「自分にはないですね。高校から柔道をやっていた影響かもしれませんが、あくまでも一本を狙いに行くように教わっていました。柔術も極めることを目標にしています。極めに行く中でついたポイントで最終的に勝ち負けがつくならば良いですが、アドバンテージについては勝敗を気にしていません」
――トップレベルになると、そのギリギリの攻防が勝敗を分けている印象があります。
「そうかもしれませんが、例えばフィフティフィフティの攻防が9分間続き、最後1分で勝ちが決まっても嬉しくないです。そこで勝っても、それがその後のスタイルに影響してくるような気がします」
――別競技ですが、サッカーのワールドカップで日本代表がポーランドと対戦して、負けているにもかかわらず、予選を突破するために時間稼ぎをして批判されました。伊東選手の美学では、あれはNGですか。
「ああ、議論になっていましたね。どうだろう。状況次第かもしれませんが、自分の中ではNGですね。それで結果が出ても嬉しくないですから。でも、自分が嫌でも相手に強要することはありません。あくまでも自分の中の価値観の問題なので」
――では相手がアドバンを先取して、ずっと守りに入られても。
「ルールで許されているわけですから、感情的にはなりません。自分はやらないだけです。そういう相手を攻略する面白さもあると思います」
――攻めるよりも守りに入った方が有利のように思います。
「そうでしょうね。でも、それで負けたとしても先に高みがあるような気がしています」
――その高みとは?
「自分の目標は、ワールドマスターで世界一になることです。そのためにアダルトにも出場して経験値を積んでいます。攻めて、挑戦して、自分のスタイルを構築していけば、いつかはその頂に到達するのではないでしょうか。そう信じて自分の理想郷を追い求めます」
――ワールドマスターの世界一ですか。今のスタイルを貫いて、世界一の称号を手に入れられたら素敵ですね。
「ぜひ挑戦してみたいです。あとは自分よりも年上の方が、まだアダルトに出ているので、早く引退してもらって、『あのオッサン、ヤバイよ』と周りに言われたいですね(笑)」