【PJJC2018】ライト級、テイクダウン&ハーフガードを防がれる──岩崎正寛の戦い、ネクストステージへ
【写真】昨年のアジア、1月のヨーロピアンに続く表彰台とはならなかった岩崎(C)IBJJF
1日(木・現地時間)から11日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。ムンジアルの前哨戦にして、世界で2番目に大きな規模の同大会、プレビュー第5回は、ライト級にシード選手として登場した岩崎正寛の戦いを紹介したい。
<ライト級2回戦/10分1R>
ヴィトー・オリヴェイラ(ブラジル)
Def. by 0-0 アドバンテージ2-0
岩崎正寛(日本)
今年のヨーロピアン準優勝で世界からマークされる存在となった岩崎正寛は、今大会1回戦はシード。初戦となる2回戦にていきなり、2015年世界柔術ミドル級準優勝者のヴィトー・オリヴェイラとの大一番を迎えた。
前かがみで前進するオリヴェイラは、岩崎の襟と袖を掴む。対する岩崎は低し姿勢でテイクダウンを狙うが、オリヴェイラの伸ばした腕に阻まれる。オリヴェイラも足を飛ばすが、重心の低い岩崎は崩れない。
やがて岩崎が引き込んでハーフガードに。オリヴェイラは絡まれた右足を立てると、まずは岩崎の上半身にプレッシャーをかけにかかるが、岩崎は腕でブロックするとオリヴェイラは腰を切って左腕で岩崎の枕を取る。そのままゆっくりと重心を下げて右足を抜きにかかったオリヴェイラが、まずアドバンテージを一つ先行した。
足の絡みが浅くなると見るや、岩崎はディープハーフに移行する。オリヴェイラのラペルを背後から取るが、オリヴェイラは巧みにバランスを取り体重をかけると、やがて左足で岩崎の体をステップオーバーし、ニースライドパスの形を作って右足を抜きにゆく。
そうはさせじと岩崎は再びディープハーフに。しかしオリヴェイラは慌てず左手をマットにポストしてバランスを保つ。岩崎が股間から手を伸ばして帯を掴むと、オリヴェイラは体をひねって、ニアマウントのような姿勢に。そのまま岩崎の左腕ごと右ヒザで押さえつけながら、オリヴェイラは再びヒザ抜きを狙っていった。
そしてついにヒザ膝が抜けたと思われたその瞬間、岩崎は下から体を捻ってスクランブル。オリヴェイラがそれをがぶると両者は場外に。この攻防を経て、残り5分弱のところでオリヴェイラが2つ目のアドバンテージを獲得した。
スタンドで再開後、岩崎は再びハーフに引き込む。オリヴェイラは再び低く重心を乗せてから、腰を切って左腕で枕を取っての足抜きの態勢を作る。それでも抜けないと見るや、再び体重移動をしてニースライド狙いに移行する。アドバンテージを2つリードしているだけに、慌てずに右腕で強烈に岩崎の襟を押さえつけてじっくり攻撃に出ている。
対する岩崎は、ここまでオリヴェイラのプレッシャーと体重移動の前に攻撃の糸口を見出せないでいる。残り2分、なんとか動きを作りたい岩崎はまたしてもディープハーフに。オリヴェイラのラペルを掴んで煽りにかかるが、オリヴェイラは重心を低くして防ぐと、左足で岩崎の頭を超えてステップオーバーしてリバースハーフで座り込む。
残り1分。低く重く体重をかけるオリヴェイラは、再びステップオーバーしてハーフに。ここで勝負に出た岩崎は、下から通したラペルごとオリヴェイラの右ヒザを抱えて立ち上がって上を取りに行く。しかし、オリヴェイラはバランスを保ちながら下がり、両者は場外に。この攻防にはアドバンテージは与えられず、中央からスタンド再開となった。
後のない岩崎はすぐにダブルレッグに行くが、オリヴェイラはがぶって防御しながら無理せず下がり、そのまま場外へ。再開後もテイクダウン狙いのフェイントを見せる岩崎だったが、低く構えたオリヴェイラは動じず。岩崎のシングルレッグを防いだオリヴェイラは、逆に道着で煽っての崩しを仕掛けてゆく。
岩崎はその後も果敢にテイクダウンを仕掛けるも、腰の低いオリヴェイラは余裕を持って受け止め、最後は逆に背負いのフェイントから足を飛ばす攻撃を見せて試合終了。敗戦が決まると、岩崎はその拳を思い切りマットに叩きつけて悔しさを露わにした。
立ち技で上を譲らなかったオリヴェイラが、岩崎得意のハーフからの仕掛けを低い重心とプレッシャー、優れたバランスと体重移動で封じての快勝。岩崎の爆発力を警戒してか強引に足を抜くことはせず、またテイクダウン&スクランブル狙いにも落ち着いて防御、場外も巧みに利用しての勝利だった。
その戦い方は、ヨーロピアン準決勝で岩崎相手に全力で極めを狙い続け、結果的に岩崎の力を極限まで引き出してしまったエドウィン・ナジミのそれとは対照的なものだった。
死闘に死闘を重ねて勝ち上がったヨーロピアンと異なり、今回は体力の半分も使わせてもらえずに終わってしまった感のある岩崎。今後も世界中の強豪たちが、こうして岩崎の長所を封じる戦い方を考え、実践してくることだろう。今回のオリヴェイラの戦法はその一例にすぎない。世界からマークされる立場となった今、その戦いが次なるステージに突入したことが明らかとなったパン柔術選手権、岩崎の世界制覇に向けての本当の勝負が始まった。
その岩崎を倒したオリヴェイラは、次の準々決勝でヴィクトー・シルヴェイロ相手にペナルティの差で勝利したものの、準決勝にてマイケル・リエラ・ジュニアに4-4の接戦の末、レフェリー判定で敗北。
もう一つのブロックは、マイケル・ランギの欠場もありJT・トレスが順当に勝ち上がり、アトス勢がクローズアウトを果たした。リエラ・ジュニアは24歳。準決勝は重い腰を利用したトップゲームを誇るオリヴェイラから、2度スイープを奪っての勝利だった。
6月の世界大会には、今回この場に集まった強豪たちに加えて、絶対王者ルーカス・レプリ、その盟友マイケル・ランギ、そして昨年の世界大会決勝戦における負傷で涙を飲んだホベルト・サトシ、エドウィン・ナジミらが加わるとしたら…ライト級の頂点への道の険しさを改めて痛感させてくれた今大会だった。
■PJJC2018リザルト
【ライト級】
優勝 JTトレス(米国)
準優勝 マイケル・リエラ・ジュニア(米国)
3位 ブエノ・ビテンコート(ブラジル)
3位 ヴィトー・オリヴェイラ(ブラジル)