【Asia Master 2018】アジアマスター選手権出場、澤田真琴 の柔術Life「新婚旅行はワールドマスターズ」
【写真】目がソックリな息子さんと。故人の教えとともに戦い続ける澤田(C)MAKOTO SAWADA
25日(日)、東京都世田谷区にある駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場で国際ブラジリアン柔術連盟(IBJJF)主催の『アジアマスター選手権2018』が開催される。
ワールドマスターズへ向けてのステップ大会とする選手も多く、マスター3黒帯ライトフェザー級にエントリーしている澤田真琴も、その一人だ。慧舟會から柔術へ転じた最初の世代──他の選手と比較しても大会への出場数が多い澤田にその理由を訊ねると、意外な言葉が返ってきた。
Text by Takao Matsui
――柔術の大会を取材すると、かなりの頻度で澤田選手の試合が見られるのですが、ご自身の中で目標があるのでしょうか。
「確かに出場数は、他の選手よりも多いかもしれません。日頃から僕の道場(DRAGON’S DEN)で生徒に『試合に出た方がいいよ』と言っているので、まずは自分が手本になろうと思っています。あとは、ワールドマスターズを目標にしていますので、アジアマスター選手権で結果を残したいこともあります」
――目標は、ワールドマスターズなのですね。
「はい。昔はムンジアルの表彰台を目指していましたが、ポイント制になってしまったのでワールドマスターズに切り替えました。具体的な目標がないとモチベーションを保つのが難しいですからね」
――大会に出続けるのは、ケガとの戦いにもなりますね。
「それは、もう仕方ないですね。ケガはつねにありますし、万全の状態で試合をすることは難しいです。でも……、それでも試合ができることを幸せに感じています。昔、海外へ遠征している時に吉岡大さんと一緒になることがあって、日本の柔術家としての心構えを教えてもらったことがあったんです」
――亡くなった吉岡さんに、何を教わったのでしょうか。
「具体的な技術的を教わったことはなかったんですが、日本人は農耕民族だから我慢の柔術が合っていると話されていました。
どんなにピンチでも、絶対にチャンスが来る、そこを見逃さないようにと。これは、僕が所属していた慧舟會の故・守山竜介代表も同じようなことをおっしゃっていました」
――守山代表と吉岡さん、お二人の影響が大きいようですね。
「試合をしていて苦しい時は、その言葉を思い出します。ここを我慢すれば、絶対にチャンスが来ると思って戦っています。同年代で戦ってきた中で僕は、佐々(幸範=ムンジアル銅メダリスト)のようにフィジカルに強いわけでも、トップのテクニックを持っているわけでもありません。
だから僕にできることと言ったら、耐えること、チャンスを見極めて勝負に出ることだと思っています。それを今も大事にしています。
そして吉岡さんが亡くなられて思ったことは、いつ柔術ができなくなるかもしれないので、出られるうちは悔いのないように試合をしようと決意しました。やれるだけやれば、あの世へ行った時に守山代表や吉岡さんにいい報告ができるかなって思っています」
――そんな思いがあったのですね。
「この前の全日本マスターも、これが最後になるかもしれないと思い、集中して戦いました。体重が落ちなくて寝られないこともありましたが、結果を出せてよかったです(マスター3黒帯ルースター級優勝)。昨年は、JBJJFのランキングが気になって欲が出てしまい、結果が出せなかったので、もっと集中して追い込んでみたいと思っています」
――先ほど佐々さんの名前が出てきましたが、ともに戦ってきた柔術仲間の存在は大きいですか。
「そうですね。彼とは、親友というか、戦友という感じです。あとはピュアブレッドの関口和正さんも、海外へ遠征する時の飛行機で一緒になったりとか、柔術を通じて知り合った仲間はいいものですね。
趣味で始めた柔術が仕事になると、楽しいとは思えないことや辛いこともありますが、こうして生徒や仲間との絆ができることで一緒に乗り越えられていることを感じます。犠牲も大きいですが、得られることも大きいです」
――やはり柔術中心の生活は、犠牲もありますか。
「遊びに行けなくなりましたね。この10年間、家族で個人旅行ができません。新婚旅行も、ワールドマスターズに出場するために行ったラスベガスでしたし(苦笑)。1歳9カ月の子どもがいますが、遊び場が道場か会場の体育館になっています(爆)」
――お子さんも、柔術をやりそうですね。
「どうですかね。そこは強制しませんけど、自然とそうなるような気がします(笑)」
――ケガとの戦いにもなると思いますが、アジアマスター選手権を楽しみにしています。
「自分がエントリーしている階級は、まだ誰も入っていませんが、試合をすることになれば、次につながる戦いをしたいと思っています。ケガについては、どんな調子だろうと関係はありません。置かれた状況の中で、メンタルを含めていかに自分をコントロールできるかが大切だと思っていますので、結果を出していきたいですね」