【EJJC2018】無差別級はキーナンとクローズアウトのバルボーザが優勝。北欧のラネカー、要注目
【写真】事実上ダブルゴールドのキーナン、そしてノルウェーの新鋭ラネカー。パン、ムンジアルでさらなる活躍ができるか(C)IBJJF
1月16日(火・現地時間)から21日(日・同)にかけてポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで行われたIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権。レビュー最終回は無差別級の模様をお届けしたい。
<無差別級1回戦/10分1R>
トミー・ラネカー(ノルウェー)
Def. by 腕ひしぎ腕固め
エルベース・サントス(ブラジル)
昨年のスーパーペビー級世界王者にして、今大会の無差別級でも優勝候補筆頭と思われるエルベース・サントスは、丸坊主かつ伸ばした髭を金髪に染めたインパクトのある風貌で登場。対するはノルウェー出身、ミドル級の体格にして、昨年の本大会で茶帯無差別級王者に輝いた新黒帯トミー・ラネカーだ。
試合後すぐに引き込んだサントスは、即座に相手の両かかとを掴み、両足で相手の両足を挟み込んで後ろに倒す基本スイープで上を取って2点先制。しかし立っているサントスの股下に内側から両足を入れたラネカーは、強靭なサントスのバランスを崩すと同時に迅速のヒザ十字から足首固めに。
足を伸ばされかけてヒヤリとしたサントスだが、なんとか距離を作ってポイントを外すとすぐに上に。この攻撃でラネカーにアドバンテージが与えられた。
その後もシッティングガードで揺さぶるランガカー。サントスも立ち上がって膝を入れてのパスを狙うが、ランガカーのシールドを崩せない。やがてうるさいラネカーの足を警戒したか、サントスも座り込んでダブルガードの体勢になった。
ここでもサントスの道着を強烈に引きつけて仕掛けるのはラネカーの方。対するサントスは距離を取ろうして防戦気味となる。やがてラネカーは、背中を付けて防御するサントスにベリンボロを仕掛け、上を取って同点。同時に両者の足は50/50の状態で絡むこととなった。
しばらく50/50戦が続いた後、サントスが一度上体を起こして上になり、4-2に。しかしラネカーは足を解除すると、再びベリンボロへ。そのままバックを取り掛けるが、サントスは場外に逃げるような形でエスケープ。ここでラネカーまたにアドバンテージが与えられた。
ここまでのところラネカーは、序盤にスイープを取られた以外、あのサントスの暴風雨の如きトップゲームを下からの仕掛けで完封し、防戦一方に追い込んでいる。
スタンド再開後にラネカーは再び引き込むと、やがてクローズドガードを取る。サントスはそれを割って横に飛んでのパスを狙うが、ラネカーはまたしてもベリンボロからバック狙い。サントスはラネカーの胸元、というより顔面すれすれの部分を蹴ってまで距離を取り、なんとか上をキープする。
それでもサントスの左足首を掴んでいるラネカーは、自らの左足を素早く上げてサントスの右腕を超えると、瞬時にサントスの上半身を引きつけて三角をロック。場内から割れんばかりの歓声が上がったと思いきや、次の瞬間にはサントス左腕を伸ばしてあっという間にタップを奪ってみせたのだった。
無差別級でも世界最強にきわめて近いところにいると思われた怪物サントスが、階級下のノルウェー人の新黒帯に下から翻弄された上、衝撃の一本負け。ラネカーの勝利は、いまだブラジル勢が圧倒的な強さを誇る競技柔術の、グローバルな広がりを刻んだ瞬間として意義深いものだ。
さらに特筆すべきは、ラネカーのフィニッシュが下上の攻撃の見事な連携の結果である点だ。つまり、足関節狙いやベリンボロで揺さぶり、サントスの警戒が完全に下半身に集中したところで、一瞬で上半身に攻撃の的を写しての一本勝ち。ジョン・ダナハー軍団が強調する、相手の身体全体への立体的攻撃というグラップリングにおける最新潮流が、ここに見事に体現されていた。
さらにラネカーは次戦、ライト級の強豪ヘナート・カヌートからやはり腕ひしぎ腕固めで一本勝ち。準決勝で最重量級のハルクことルーカス・バルボーザのノース&サウスに屈したものの見事に3位に輝いた。
そしてもう一つの準決勝は、バルボーザと同じアトス所属のキーナン・コーネリアスと最重量級の巨漢、ヴィクトー・ホノリオの間で争われることとなった。
<無差別級準決勝/10分1R>
キーナン・コーネリアス(米国)
Def. by オモプラッタ
ヴィクトー・ホノリオ(ブラジル)
開始早々に引き込んだヘビー級を制しているコーネリアスは、スパイダーガードからやがてガードを閉じる。そこからホノリオの左側のラペルを取ったコーネリアスは、それを背中側に回して、ハイガードのように高く上げた自分の左足首に絡めて固定した上で、相手の左肩越しに右手で掴むという、いわばラペルラバーガードとでも呼びたい組手を作る。
やがてコーネリアスは、ホノリオの右肩にオモプラッタ。背中に回し自らの左足を固定したホノリオのラペルはキープしたままなので、ホノリオは腕を抜くことができない。ホノリオはコーネリアスをリフトして立ち上がるが、コーネリアスはグリップをキープ。そのままホノリオが場外に出ると、逃避とみなされてコーネリアスに先制の2点が与えられた。
スタンドから試合が再開すると、コーネリアスはまたしても引きこんで先ほど同様のラペルラバーガード(?)へ。動きを封じられたホノリオにまたしてもオモプラッタを仕掛けると、解除の方法が見つからず、体勢を崩されて肩を極められたホノリオがタップ。
創造力の天才が、またしてもギを用いた奇手を生み出し、体重差を超えて相手をコントロール。しかも今までのラペルガードやワームガードと違い、グリップをキープしたまま極めにつなげて見せての見事な勝利だった。
結局この無差別級はコーネリアスとバルボーザのアトス・コンビがクローズアウト。形の上では優勝をバルボーザに譲ったコーネリアスだが、内容的には無差別級、ヘビー級ともに全試合一本勝ち。大会完全制覇を達成したのだった。
■EJJC2018リザルト
【無差別級】
優勝 ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
準優勝 キーナン・コーネリアス(米国)
3位 トミー・ラネカー(ノルウェー)
3位 ヴィクトー・ホノリオ(ブラジル)