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【2017~2018】橋本知之─03─「試合で勝たないと意味はないとか──思うことはない」

Tomoyuki Hashimoto【写真】既に彼自身の柔術道が存在し、そこを究めるために前を見続けているようなブレなさが感じられる橋本。結果を残しているからこそ、結果最重視でない言葉が重いモノとなる (C) MMAPLANET

9人のファイター達が語る2017年と2018年、橋本知之の足跡と一里塚─最終回。

ルールを問わず競技ブラジリアン柔術で最も結果を残している橋本だが、彼には結果以上に重視しているものがある。それが自身の柔術の価値観だ。

印象的な実践的である。そんな高見を目指す、橋本のブラジリアン柔術観とは。多様性のある柔術にこうじる目的に合って、橋本のソレは彼の人間性に共通点を見いだすことができるように感じられた。

<橋本知之インタビューPart.01はコチラから>
<橋本知之インタビューPart.02はコチラから>


──ロシア人、超良い人というのは怖い系の人が礼儀正しかったら凄く良い人に見える格闘技界あるあるに近くないですか。無表情のイメージがあるから親切にされたり、笑われると凄く良い人に感じる。

「マジでロシア人良い人ですよ(笑)。ブラジル人とかみたいにあんまりハイテンションで来られても困りますし……。そういうコミュニケーションが苦手なんで」

──「マイ・フレ~ンド」が柔術文化ではないですか。私も橋本選手に嫌われたくないので、関西人の乗りは控えるようにいします(笑)。

「フフフ。確かに僕は四国で関西に近いんですけど……でも関西のお笑いとか好きですけどね。それに日本人って、あのLAとかの『ハ~イ』っていう文化に憧れる人もいるみたいですよね」

──あぁ、まさに若い頃に車のレースなどでピットストップを済ませたクルーが、ハイタッチするシーンなんて恰好良いって思ってしまっていた口です。

「ハイタッチ……も、やっていますねぇ……柔術でも。『何回やるの。2時間前にやったでしょ』って感じますよね(笑)。僕の場合はもう作業だと思ってやっています。面倒くさいです。ロシアの方が良いです」

──ハハハハ。強引に話題を柔術に戻しますが、柔術ほど練習する目的が様々な格闘技は少ないかと思います。そのなかでもコンペティションがある、メディアとしてはコンペティションの結果を重視します。2018年のプランとしては、どのような活動の青写真を描いていますか。

「取り敢えずはムンジアルが一番の山場、そこまで日本で試合に出てパン柔術に出ようと思っています。その時は折角なのでカイオのところで練習して。パンの調子と結果を踏まえて、ムンジアルで良い結果を残せるようにしたいですね」

──国内でパン柔術前に試合に出るとなると、どの大会を考えているのですか。

「現時点では2月のヒクソン・グレイシー杯かなとは思っています。どんなメンバーになるのか。強い外国人選手も来るかもしれないですしね」

──ムンジアルを最重視しているなかでノーギやヒール有りの試合に出て、IBJJFの道着ルールに生きることはありますか。

「う~ん、それもやっぱりコンセプトで捉えると、生きます。カイオはヒールフックとかもめっちゃ上手いんです。サドルロック系も全部できて」

──やはりできるのですね、その分野も。ダブルガードのトランジッションのように見えるストレートレッグロックなども、相当上手そうですし。

「極めも強いですよ。掛けられると、めちゃくちゃ痛いです(苦笑)。そうやってできているカイオは『足関節とか色々とあるけど、結局は柔術だ』という考えですよね。分かっているから、何でも解ける。だから、そういう風に思っていると何でもIBJJFのルールに生きると思います。

ノーギで上手くなったことが、道着で生きることが僕にもあったので。ただ、ヒールとか外掛け系の技はIBJJFのトーナメントに出るなら僕は必要ないと思っています。ACBの前はヒール有りだから練習もしましたけど……。日本にいる時から松本義彦さんと一緒にやってもらったりとか。そういう風にはしていました。

でもIBJJFの試合に向けての練習では、禁じられている技になるので敢えてやることはないですよね」

──その一方で多くのムンジアル王者クラスの柔術家は普通にヒール有りのルールにも対応し、優勝しています。使ってはいけない技を使えるトップがいる。それも柔術らしさかと。

「確かにルールを選ばずに強いのが、一番良いことですから。そこを僕も目指したいという意味では、ACBは良い経験になったかと思います」

──ルール選ばず強いことが一番という言葉が、橋本選手から聞かれるのが新鮮です。

「それはでも、一番じゃないですか。どんな大会でも使ってもらえるという意味でも。コンセプトが分かっていたら、何でもできるでしょということなので」

──柔術のコンセプト、橋本選手なりのコンセプトも存在しているのですか。

「自分なりというか、全員ができるのが一番。誰に尋ねても、ベストな方法。正解を導き出せることが一番だと思います。正解は一つじゃないという意見もあると思いますけど、一番効率良いものがベストだろうし。ソレをカイオが出してくるので、僕も出せるようになりたいです。

ブレーキを踏んだら車は止まる──というような、シンプルだけど、なぜこれが思い浮かばなかったのかというようなことですね。僕も『これエェな』って気付くこともあるんですけど、もう誰かがやっていることなんですよね」

──あぁ、なるほど。

「そんなもんだと思っています。これだけの人間がやっていて、正解を求めている。そのなかでオリジナルの正解を持てる人なんて本当に一握りでしょうし。カイオの下にいると、既に解答があって、しかも最先端なのに自分のオリジナルの正解を求める必要はないと思っています」

──トーナメントに出ると、2018年もそのカイオと同じ階級になるわけですが。

Hashimoto「まだまだ距離は感じています。ただし、試合の勝ち負けは別で。そういう意味でも、僕はトーナメント結果以上に本当のところで実力を上げたい。そうすれば結果も勝手についてくるもんだし。

だから試合で勝たないと意味はないとか、トーナメントに関して思うことはないです。本当に力があるなら、トーナメント枠に関係なく優勝できるでしょうし。実力が足らなかったら負ける。相手より、実力が上回っていれば勝てる。それだけだと思います」

──1度メダルを取ったので、ずっとムンジアルでメダルを取り続けたいという気持ちは?

「ないです。メダルを取った上で、ないもない。それがIBJJFだと理解もしていますし、そこに何よりも価値があるとは思っていないです。それよりも僕の試合をパッと見しただけで、『この柔術は価値がある』と思われる柔術ができるようになりたいです。

トーナメントに出て何をもらうのかではなくて、何ができるのか。そうすれば結果はついてきます」

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